高知大学 農林海洋科学部 大学院 総合人間自然科学研究科農学専攻

地域の期待に応える大学院の研究 暖地農学編


暖農とお米から1 アジア・アフリカの稲作を先導稲の環境ストレスに立ち向かう!

 稲の栽培技術を向上・普及することによって食料危機をなくしたい――東南アジアやアフリカなど海外の現場を飛び回りながら研究を続ける宮崎先生にお話を聞きました。

[専門領域]

作物栽培生理学、環境学

[研究テーマ]

中国産多収性水稲品種における窒素
 利用効率の向上に関する研究
中節水条件下における水稲品種による
 窒素吸収並びに水生産性に関する研究
日本型およびインド型水稲品種の高温
 登熟性に関する研究

暖地の最前線・高知

 高知大学は、稲をはじめとする植物の研究において大きな有利性を持っています。まず、圃場がキャンパスのすぐ横と近いこと。また、温暖な気候で1年のうちの長い期間で栽培ができること。これらの特性を活かして「熱帯・亜熱帯」や「温暖化」をテーマに高知と海外の現場を行き来しながら研究をしている教員も多く、高知大学は世界の暖地農学をリードする拠点の一つとなっています。

稲の研究現場はアジアから
アフリカまで!

 私たちの研究室が取り組んでいるのは、稲の高温障害や水利用効率など環境ストレスに関する研究です。稲の研究は特にその現場に定着して実践を重ねることが必要なため、我々は基本、高知大学でベースとなる技術開発を行いながら東南アジアやアフリカなどの現地に出かけて行って、共同研究先と連携して研究を進めています。そのいくつかをここでご紹介します。

中国産水稲品種の節水栽培による水利用効率の向上に関する研究

①中国:水稲の節水栽培
 中国の天津市は、年間降雨量が500~800ミリほどと日本の平均降雨量の3分の1から半分以下の少雨地域。雨が少ないことに加え、特に首都・北京に隣接する地域では生活用水や工業用水が優先されて農業用水が足りないという状況も起き、年によっては水稲栽培を諦めてトウモロコシに切り替えるところも出てきています。そこで、当研究室は中国天津農学院と共同で、水稲の節水栽培技術を研究しています。


②アフリカ:陸稲の水利用効率の向上
宮澤君が現地の農家でインタビューをしている様子(ベナン共和国)

 危機的ともいえる食糧事情を改善するため、アフリカでも今、稲が注目されています。その中心は、畑で育てる陸稲。灌漑設備を使って行う水稲でも節水栽培が必要ですが、灌漑がない地域で天水を利用して行われる陸稲は、水が極端に制限された環境に依存せざるを得ないため、さらに栽培が難しく収量も不安定です。現在、修士学生の宮澤譲治くんが、アフリカ・ライス・センターの本部があるベナン共和国にJICAからの派遣として赴き、陸稲栽培のためのガイドライン作りに携わっていますが、陸稲の水利用効率の研究はまだ始まったばかり。アフリカの気候に適応する栽培技術の開発を目指し、挑戦を続けています。

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③インドネシア:高温障害
 高温障害とは、栽培期間中、日最高気温や日平均気温が一定以上になることによって白未熟粒が発生して玄米品質や籾の充実度が低下する現象です。インドネシアの現場では、水利用効率に加え、この高温障害についてもあわせて研究をしており、現在は現地で高温のストレスをかけ、高温登熟性の高い品種選定をしています。


高温耐性品種の選抜に関する研究

現地にて共同研究者たちと(インドネシア)

高知の米の品質向上を目指して

 これらの研究は、海外だけでなく日本の米の品質向上にも大きく貢献できるものです。私たちが高知県農業技術センターと共同で行ってきた高温障害の研究では、白未熟粒が発生する気温条件など基礎的な部分において、一定の成果を得ることができました。今後はこの成果を高知県の稲作の現場に活かしていきたいと考えています。
 一般的には東北など寒い地域の方がおいしいと言われるお米ですが、実は高知県も大きなポテンシャルを秘めています。ここ数年では、高知県本山町の「天空の郷」や四万十川中流域の「仁井田郷米」がおいしいお米日本一に輝くなど、中山間地域のお米を中心に市場価値が急上昇しています。また、平野部では栽培期間が長くとれるため、生産力という面で大きな可能性を持っています。
 本学で長年取り組んできた温暖化に適応した稲の栽培技術の開発を、これからも高いレベルで継続し、地域の農業の発展につなげていきたいと考えています。