高知大学 農林海洋科学部 大学院 総合人間自然科学研究科農林海洋科学専攻

▶大学院

大学院トップページ
・農林海洋科学専攻
スペシャルコンテンツ
[新・農林海洋科学専攻の魅力編]

スペシャルコンテンツ
[Live with The Earth]

スペシャルコンテンツ
[高知から世界に貢献 環境適応編]

研究紹介
・環境をイネから科学する
・イネタンパク質群の未知に迫る
・温暖化で海はどう変わる?
・カジメ場の消失から再生まで
・日本をリードする先進農業県へ
・IoPが導く次世代型施設園芸農業
スペシャルコンテンツ
[微生物研究最前線]

スペシャルコンテンツ
[陸と海からの新提案!]

スペシャルコンテンツ
[新世代技術・維新!]

スペシャルコンテンツ[暖地農学編]
スペシャルコンテンツ
[山と川のフィールド編]

スペシャルサイト:旧農学部掲載コンテンツ
[大学院を知る旅に出かけよう!]

▶大学院生インタビュー
平成29年度
・クロヒョウタンカスミカメ検証
・海から最強プロモーター獲得
平成28年度
・紙の未来形"機能紙"を開発する
・セメント硬化の阻害要因を探る
平成27年度
・納豆成分の可能性を探る
・お酒の開発で地域産業を活性化
平成26年度
・豪雨・急傾斜地土砂移動を研究
・丸太打設で液状化を防ぐ新工法
平成23年度
・青枯病の起因遺伝子を解明
・海が持つ可能性を追い求めて
・薬用植物の効果を科学的に立証
平成22年度
・野菜や果物の研究
・美容の観点から香りを分析
・サゴヤシ研究を通じ海外と交流
▶就活インタビュー
平成26年度
・機械化促進で農業を楽にしたい
・夢だった日本酒酵母開発に挑戦
・黒潮圏総合科学専攻

高知から世界に貢献!Innovation fron KOCHI ~環境適応編~

施設園芸技術から環境適応にアプローチする

日本をリードする先進農業県へ!

大学発・環境制御システムから始まった、
高知県の農業改革

宮内 樹代史 准教授

[専門領域]農業環境工学、施設生産システム学
[研究テーマ]
 ●施設園芸における省エネルギー技術
 ●施設園芸の生産性向上技術


 日照時間が長い高知県は、古くから施設園芸が盛んな土地です。現在、ICTを活用した高度な環境制御技術による次世代施設園芸がスタートし、さらにNext次世代型施設園芸農業へと発展を遂げようとしています。その礎となっているのが、2012年から産官学が連携して手掛けた「複合エコ環境制御技術の開発」です。
 日本の施設園芸は2000年頃から成長が鈍化し、その要因は生産者の高齢化や、加温のための暖房設備に利用する重油の高騰等にありました。担い手の育成、ランニングコストの削減が求められると同時に、収穫量を上げるための新たな技術の導入が求められました。コンピューター制御やCO2 施用、高軒高設計などを導入し、飛躍的な収量増を遂げたオランダの先進的で高度な施設園芸システムを参考に、産官学が連携し、環境配慮や自然エネルギー利用を付加した「複合エコ環境制御技術」を開発しました。
 その中心となって開発に務めた、宮内樹代史先生にお話を伺いました。


Research1

環境制御システムの開発
環境に配慮して、収量アップを目指せ!

 複合エコ環境制御技術とは、自然冷媒ヒートポンプ給湯器を使ってハウス内の環境制御を行うもので、昼間の余剰熱を使ってお湯を沸かして溜め、夜間に植物の近傍に循環させて加温する冷暖房システムです。昼間のハウス換気時間を遅らせて半閉鎖環境を維持し、強制的に炭酸ガスを付与することで、イチゴとピーマンで3割増収する結果が得られました。空気中へのCO2排出量をカットし、環境への負荷も軽減するシステムです。

学内のビニールハウスで育ったイチゴ

学内のビニールハウスでは、炭酸ガスを付加する・しないの比較実験も行われており、
炭酸ガスを付加する場合は、葉や実のサイズが目に見えて大きく育つ

 炭酸ガスが光合成を促進するという知見は昔からからあったものの、効果が実証され、施用が広まっていったのはこの頃からです。今では高知県内に広く普及し、平均的な収量を上げるためには炭酸ガス施用は不可欠なものとなってきています。
 合わせて、コンピューターによる「環境の見える化」も進んでおり、温度や湿度、CO2濃度のモニタリングなども各生産者が積極的に行っています。


Research2

ソーラーシェアリング
太陽光パネルの下で収穫できる作物は何だ?

ソーラーシェアリング実験の様子

ソーラーシェアリング実験の様子

 地球環境への配慮から、再生可能エネルギーの導入が促進されています。農業でも、太陽の光を発電と農業とで分け合って利用する「ソーラーシェアリング」が進んできました。太陽光パネルで電気を発電しながら、その下で作物を栽培するものです。
 しかし、農地を他の目的に使用する「農地転用」の許可を得るのは非常に困難で、最長3年を期限とする「一時転用」で運用することがほとんどです。その理由は、国として農業を衰退させないことを目的として「農地転用」についての法律を定めているためです。
 「一時転用」が許可されるためには、営農を行い、農作物の収量が地域の慣行栽培の8割以上であることが条件となります。8割を下回れば、更新時に許可が得られないこともあり、太陽光パネルの下で育成する作物として、何を選ぶのかが非常に重要となります。


 私の研究室では、高知県四万十町でソーラーシェアリングを行っている「株式会社サンビレッジ四万十」のパネル下の環境と作物の特性を調べています。私達はソーラーシェアリング導入申請時から協力しており、最初の作物としてリーフレタスの栽培が可能かどうかを検討しました。
 予備実験では、太陽光パネルの下の光環境は、露地の3割程度の日光量であることが判明しました。そこでレタスの光飽和点について検討し、室内で栽培している植物工場の光の条件と比較した場合、その60~100%を満たすことができるだろうと判断し、無事生育をさせることができました。
 当初、リーフレタスからスタートしたこのプロジェクトは、今やハスイモと万次郎カボチャ、シイタケ等の様々な品目へと広がりを見せています。

サンビレッジ四万十でのソーラーシェアリングの様子 サンビレッジ四万十でのソーラーシェアリングの様子

サンビレッジ四万十でのソーラーシェアリングの様子

 現在大学で取り組んでいるのは、透過型の太陽光パネルを使った場合の環境と作物の特性を明らかにすることです。露地とハウスとで、透過型パネルの下でのリーフレタスの栽培実験を行っていて、インキュベータ※では光の条件をさまざまに変えながら栽培し、観察しています。それぞれの異なる環境下で収穫したリーフレタスを詳しく解析し、その特性を明らかにしているところです。
※インキュベータ:温度や光条件を一定に保つ機能を持つ装置

インキュベータ内の様子

インキュベータでは、さまざまな条件下の実験が行われている

 サンビレッジ四万十は集落営農の組織として運営されており、ソーラーシェアリングは耕作放棄地対策や集落営農を支える基盤にもなっています。私の研究が、地域の農業経営の取り組みに貢献できればと思っています。


高知の良いところは
施設園芸の最先端がすぐ身近にあること!

 高知県は早くから施設園芸が発展し、環境制御、次世代施設園芸、ソーラーシェアリングなどの最先端技術を導入している現場が多数あります。本学の卒業生が活躍する現場でもあり、授業の中でも実践について学ぶ講演会や、実際に現場を訪れる見学会を実施しています。すぐ身近にこのような現場があることは高知大学の強みであり、研究素材も豊富で大きな学びが得られるはずです。
 近年、施設園芸は、原油価格の高騰に伴う暖房費や施設・資材費等経営コストの上昇、環境に対する負荷の軽減、生産性の向上など、多くの課題を抱えています。その課題解決に向けて、産官学が連携していこうという動きも顕著で、高知大学の研究にも大きな期待が寄せらせています。


来たれ!我が研究室 農産施設工学研究室

 研究はチャレンジを大切に。失敗してもいいんです!作物としての栽培だと失敗は困りますが、私たちが研究しているのは栽培に有効な装置や効率。育たなかったということも結果の一つです。失敗を生かして、よりよい発想やアイデアにつなげてほしいと思います。

実習の様子

 また、研究室の卒業生の多くが、施設園芸関連の仕事に就いており、炭酸ガス施用の普及にも大きく貢献してくれています。その他にも、大手の施設園芸資材のメーカーに就職し、たまたま高知に配属になった人もいます。大学で学んだことを活かし、さらに成長している姿を身近で見られることは、指導者としてうれしいです!

自分たちで育てたイチゴで作る
クリスマスケーキの味は最高!

 学部の3年生が4人、4年生が3人、院生が1人の研究室です。女性が多いせいかにぎやかで、いつも和気あいあいとアットホームな雰囲気です。クリスマスパーティーでは、試験栽培したイチゴを使ってスポンジケーキをデコレーションするのが恒例。「イチゴ大好き♪」な宮内先生を囲んで盛り上がります。

宮内研究室 試験栽培したイチゴを飾ったクリスマスケーキ 宮内先生を囲んで