高知大学 農林海洋科学部 大学院 総合人間自然科学研究科農学専攻

大学院インタビュー 平成26年度

豪雨・急傾斜地の土砂移動を研究


総合人間自然科学研究科2年(平成26年度)|広島県出身|渡辺靖崇


森林総合研究所の研究プロジェクトに参加

 豪雨・急傾斜地とは、雨が多く傾斜のきつい環境のこと。こういった環境下における森林の機能を持続的に発揮させるため、従来の林業技術を見直し新たな管理手法の開発を目指す研究プロジェクトが、独立行政法人森林総合研究所四国支所を中心に行われています。そのプロジェクトに僕の所属する林業工学研究室が参加。僕は人工林の間伐後の土砂移動についての研究を任していただき、修士論文の研究として取り組みました。


山と大学を往復しながら実験・分析の日々

 間伐後、林地は撹乱して土砂移動が増えますが、僕の研究はその土砂移動量が間伐の方法によってどのくらい違うのかを調べるものです。
 人工林の間伐方法にはいくつかの種類があり、列状間伐は斜面の上下に添って機械で列状に間伐する方法、定性間伐は木の状態を見て成長の悪い木や曲がった木などを選んで間伐する方法ですが、この定性間伐の一つに「将来木施業」というヨーロッパで行われている方法があります。それを日本の豪雨・急傾斜地に導入できるかどうかを判断することが、この研究の目的です。

 具体的な実験方法としては、合板で手作りした「土砂受箱」を山の急傾斜地に80個ほど設置し、1ヶ月から1ヶ月半くらいの間隔でそれを回収して、中に入っている土砂の量や有機物の量を分析します。80個の土砂受箱を一気に回収しないといけないので、調査にあたっては協力してくれる研究室の仲間の人数集めや天候チェックなど準備が大変でした。当日は、朝8:30に大学を出発して山に登り、現場での調査・回収作業が終われば山を降り、大学に戻ってくるのがだいたい午後3時頃。その後、持ち帰った土砂受け箱を一つずつ乾燥機を使って水分を抜き、重さを計り、中に含まれている有機物を分析していきました。

 この実験は3年間の継続調査。このような大規模な共同研究にがっつり関わるチャンスをいただき、様々なことを学ばせてもらえたことにとても感謝しています。
 また、現場と大学を往復する車中、指導してくださった鈴木保志先生や研究室の仲間といろいろな話を語り合えたことも、僕にとって大事な時間だったと思います。

急傾斜地が多いのが高知の山の特徴

急傾斜地が多いのが高知の山の特徴(写真は冬。温暖な高知だが、急峻な山は標高も高く積雪する)

土砂受箱を設置していく

土砂受箱を設置していく。

持ち帰った土砂受箱の中身を乾燥させてから計量

持ち帰った土砂受箱の中身を乾燥させてから計量。

研究成果をまとめたスライド

研究成果をまとめたスライド。(画像をクリックするとPDFにてスライドがご覧頂けます)


卒業後は林業行政に携わり、地域の暮らしを守りたい

 これらの現場経験を通じて、また自然と人に恵まれた高知での学生生活を通じて僕の中ではっきりと見えてきた目標――それは、いずれは林業行政に関わり地域社会に貢献したいという将来像でした。
 幸い、高知大学にはその目標を叶える環境が整っていました。高知大学の農林系には公務員として働く先輩が多く、OBのネットワークも強かったので、学会や行政の研究会などの機会を活用して先輩たちにお会いし、林業行政の現場の課題や状況など話を聞くことができました。また、公務員試験対策についても鈴木先生が専門書を貸してくださったり、直接勉強を見てくださったりと手厚いサポートをいただきました。
 おかげで第一志望であった地元・広島県庁に林業専門職での内定をいただくことができ、夢のスタート地点に立てたと喜んでいた矢先――平成26年8月豪雨による急傾斜地崩壊で、広島市北部が甚大な被害を受けたのです。

 この災害には本当に胸が痛みました。広島県は、実は土砂災害の危険箇所が日本一多い県です。僕はこれまでずっと豪雨・急傾斜地の研究に携わり土砂移動の研究をしてきましたが、その自分にこれから何ができるだろうかと考えました。災害対策は僕の専門とは分野が違いますが、今後はそういった知識も深めていって、広島の人の暮らしや山を守っていけるようになりたいと強く思いました。
 高知で学んだ経験を活かし、さらに今後必要とされる知識や技術の研鑽に努めて、地域のために貢献していきたいと思っています。