高知大学 農林海洋科学部 大学院 総合人間自然科学研究科農学専攻

大学院インタビュー 平成29年度

クロヒョウタンカスミカメの広食性を検証


総合人間自然科学研究科1年(平成29年度)|岡山県出身|平松 剛


新たな外来害虫、モトジロアザミウマに対抗せよ!

 高知大学で生物農薬としての有効性が明らかにされた天敵昆虫クロヒョウタンカスミカメは、コナジラミ類などの難防除害虫を捕食する点が大きく評価されて県内各地のハウス栽培の現場に導入されています。僕は今、このクロヒョウタンカスミカメが、新たな外来種モトジロアザミウマを捕食することについての検証実験に取り組んでいます。


天敵が効かないのには、理由があった

 施設園芸ではアザミウマ類の害虫として、ミカンキイロアザミウマとミナミキイロアザミウマという外来種が以前から問題になっていましたが、これらは市販されている天敵昆虫タイリクヒメハナカメムシによってある程度、被害を抑えることができていました。ところがここ10年ほどで台頭してきたモトジロアザミウマに対しては、タイリクヒメハナカメムシが効きません。実は、これには理由があります。
 害虫ミカンキイロアザミウマやミナミキイロアザミウマは、なすやピーマンの花のところによく集まります。天敵タイリクヒメハナカメムシも花のところによく集まるので、そこで出会って捕食され、害虫防除ができていました。
 一方、モトジロアザミウマはあまり花のところには行かず、葉に集まります。つまり、タイリクヒメハナカメムシとは出会う機会が少ないのです。
 では、クロヒョウタンカスミカメはどうかというと、こちらは花にはあまり執着せず、葉の方にも普通にいます。そこでこの天敵がモトジロアザミウマ対策に使えるのではないかという予測を立て、地道な検証がスタートしました。

様々な捕食パターンを、地道に検証

 現在、行っている実験は、室内実験と屋外実験の2つです。
まず室内実験では、天敵クロヒョウタンカスミカメがどういうふうにモトジロアザミウマを捕食するか、様々なパターンを検証しています。モトジロアザミウマは「幼虫」「さなぎ」「成虫」と変態しますが、どのステージでもクロヒョウタンカスミカメが捕食するのか、特に好んで食べるステージがあるのか、クロヒョウタンカスミカメの成虫と幼虫でモトジロアザミウマの捕食量の違いなどを順番に検証しています。一つの組み合わせで少なくとも10回以上の実験を行いデータをとるのが理想ですが、今はまだその途中段階。成虫のクロヒョウタンカスミカメ成虫・幼虫ともすべてのステージのモトジロアザミウマを捕食することは確認できましたが、細かい検証はこれからです。

 もう一方の屋外実験は、農場のビニールハウスでの放飼試験です。モトジロアザミウマが発生したハウスにクロヒョウタンカスミカメを放して防除効果を調べたのですが、実は今年は失敗してしまいました。冬の寒波が予想以上に厳しく、ハウスの加温が追い付かず、天敵が定着しなかったのが原因です。こちらはあらためて次年度にやり直しの予定です。

飼育ケース

飼育ケースの中に、ピーマンの葉、モトジロアザミウマ、クロヒョウタンカスミカメを入れて防除実験を行う。温度は25度で管理


飼育方法も、世界で初めて開発!

 そもそもクロヒョウタンカスミカメについて研究しているのは、世界で僕たちの研究室だけです。飼育方法もわからず当初は苦労したと、研究室の荒川先生からは聞きました。現在は、先生や先輩たちが試行錯誤の末にたどりついた"究極の""超・簡略な"飼育方法でクロヒョウタンカスミカメを大量に飼育しています。
 用いるのは、熱帯魚などのエサとして知られるブラインシュリンプの卵。その卵を湿らせたろ紙を敷いたシャーレの上にばらまきます。そのシャーレとクロヒョウタンカスミカメが卵を産み付けるための芽だしジャガイモを飼育ケースに入れ、湿度・温度管理を行います。ろ紙の上でブラインシュリンプの幼虫が孵ると、その食べやすい幼虫をクロヒョウタンカスミカメが捕食し、増えていきます。多い時はこのケースで300匹くらいまで増殖できました。
 ブラインシュリンプを餌として天敵を飼育する方法は、最近新たに研究をはじめた天敵メスグロハナレメイエバエにも応用されています。

2-3日に一回の水やりと、時々エサを追加・交換するだけで、長期間飼育できる

検証結果を広く発信し、
クロヒョウタンカスミカメの普及を目指す

 検証実験は今年1年で終わるものではなく、もう少し継続してやっていく必要がありますが、最終的には学会や地元農家さんへの報告会といった機会で発表する予定です。
 クロヒョウタンカスミカメは現在、南国スタイルという企業から販売されていますが、コナジラミ類だけでなくモトジロアザミウマの防除にも利用可能となれば、もっと広く普及できるし、農家の皆さんの役に立つことができます。人と環境にやさしい農業の実現に、少しでも貢献したいと考えています。

研究室の師匠、荒川先生。昆虫博士と呼ばれる先生のもと、オンリーワンの研究に携わっている

研究室・自慢

昆虫研究室

三度の飯より昆虫好き?!
すぐにフィールドに飛び出す研究室

 僕の所属している昆虫研究室の一番の特徴は、とにかくフィールドワークが多いこと。季節や天気がいい時は、すぐにみんな昆虫採集に出かけます。
 また、学部2~3年生を対象にした昆虫採集の実習が行われる時は、僕たち昆虫研究室の学生もお手伝いに駆り出されます。この授業は一泊二日で行われ、春先には県東端の室戸市、夏には四国山地の中の演習林で、いろいろな虫を採集し観察します。特に、室戸の森で夜に見られる「ヒメボタル」という陸生の蛍は、群れになってチカチカと飛んで本当に美しく幻想的です。
 虫好きの人はもちろん、ちょっと苦手だという人も、一歩踏み出せば昆虫の世界のおもしろさ、奥深さに触れることができます。ぜひ一度、昆虫研究室に遊びに来てください!


 演習林での実習風景。夜間に白い幕を張り、
 ライトを点けて昆虫を集め、観察する

 実習終了後の記念写真。みんないい笑顔に
 なっている