高知大学 農林海洋科学部 大学院 総合人間自然科学研究科農学専攻

陸と海からの新提案! ~高知大学発の先端研究~


陸と海がひらく未来

どうなる? 次世代の地球

荒川:これからの農業生産は、やはり地域や地球環境との「共生」がキーワード。安全安心な農業をより進めていくことが大事です。経済活性化の観点では地域の産品を都会で売る地産外消も言われますが、共生という観点で見るとやはり地産地消が地球にやさしい。
私は害虫防除が専門ですが、高知県内に産する天敵昆虫・ダニ類を使って農作物の害虫を防除し、それを高知モデルとして全国に発信していけたらと考えています。

足立:「持続可能」であることも、もう一つ大切なキーワードですよね。私は海洋環境を適切な状態に保つことをいつも念頭において研究に取り組んでいます。
私の専門は海洋微生物学ですが、植物プランクトンを有効利用すること――その際に、植物プランクトンの力を使って温暖化の緩和に少しでも貢献し人の役に立つ有用物質を創り出すこと、温暖化の進行と共に有害な植物プランクトンにより引き起こされる環境問題を解決するという二本柱で研究を進めています。

荒川:高知大学には農学の様々な分野の専門家がおり、地の利や環境を活かした研究を行っています。高知が新しい技術、あるいは一次産業から六次産業も含めた新しい産業の発祥の地となって、日本全国から世界へと発信していくという流れも生まれています。


高知の陸と海のフィールド

足立:高知県は海岸線も非常に豊かで、多様な海洋環境があります。黒潮にも近く非常にきれいな外海の環境がある一方で、浦ノ内湾のように閉鎖性の高い内湾の静かなところもある。海がすごく豊かな表情をしているんです。すごく変化に富んでいて、すごく生物多様性も高い。
実は植物プランクトンはいまだ未知の種類も非常に多く、次世代の技術や産業を拓く"宝の山"と言われていますが、まさに高知の海は生物資源の宝庫です。また、有用な植物プランクトンを培養するという点でも、日照量が非常に多いことや、県東部の室戸で汲み上げている深層水など、高知には地の利がありますね。

荒川:高知の陸も、海岸から標高2,000メートル級までありますから、多様な環境であることは確かです。ただ、高知の山はその多くがスギ・ヒノキの植林になっており、そこについては残念ながら生物多様性が低い。けれどその間にモザイク状に常緑広葉樹林帯から落葉広葉樹林帯まで多様な植生があり、そういうところに行けばすごく面白い。

足立:山の豊かな成分が、川を伝って海に流れ出ます。ですから、仁淀川、四万十川などから供給されるいろいろな栄養分が豊かな土佐の海を創っており、やはり陸と海は常に切っても切れない関係ですよね。

荒川:そう。そして一度崩れてしまった生態系は、もとには戻せません。いかに今の環境を維持するかを考えるしかない。全国に先駆けて少子高齢化も進む中、里山の保全に力を入れていくことが必要です。

足立:海にも課題はあります。実は温暖化の影響がかなり進行しており、私が高知大学に来て二十数年の間に岩場のサンゴが大きく広がるなど、海の様子が変わってきているのを実感しています。いろんな研究者が海中の生物相や魚相を調べていますが、やはり確実に変わってきている。温暖化の波は人知れず押し寄せてきているのです。


研究も学びも、国境を越えて

足立:海は世界中とつながっています。特に温暖化に関する研究などは東南アジアから日本まで広いフィールドで行われていますし、ある意味国境がない。
私の研究に関していえば、有害プランクトンの研究は、アメリカ、ニュージーランド、中国など、いろいろな国の研究者と共同してやっています。また、植物プランクトンの生産については、将来的には国土が広く、年間を通して気温が高く安定している熱帯や亜熱帯地域の方が適しています。ですので、開発途上国の研究者は非常に興味を持ってくれていますが、生物多様性条約への対応もあるため、今はまだ国内中心の研究の段階です。

荒川:今、東南アジアの農業でも、害虫防除は大きな問題になっています。しかし化学農薬を使うとなると、東南アジア諸国ではコストが高すぎます。ならば、その地域にいる天敵昆虫を捕まえて利用する方がおそらく安くつくだろうし、亜熱帯や熱帯地域は生物多様性も非常に豊かですから、この先の可能性は大きいのではないかという感触は持っています。実際に声も掛かっていますが、これからですよね。

足立:学内での国際的な広がりでいうと、海洋の分野には、特に魚や食品加工などの研究室に留学生が多くいます。SUIJI(Six University Initiative Japan Indonesia)といって、インドネシア3大学(ガジャマダ大学、ボゴール農業大学、ハサヌディン大学)、四国3大学(愛媛大学、香川大学、高知大学)の6大学で、熱帯地域における農業発展に関する教育研究を協働で進めるプロジェクトもあり、かなり国際色豊かです。

SUIJI のプログラムで留学生と一緒に学ぶ学生たち

荒川:農林資源環境の分野は、留学生は海洋ほど多くないですね。

足立:学内に留学生が多いと教育的効果が非常にあって、院生同士、英語を教えてもらい、日本語を教えてもらい、互いにいい影響が出ていると思いますね。
また、院生には国際学会に参加することを推奨しています。学生にとって英語での専門的な発表はとても大変ですが、海外の第一線級の研究者と話をすることもでき、いい経験になります。

荒川:そうですね。大学院ならそれくらいのレベルで取り組むのが当たり前だと僕らは思って指導しています。


荒川:僕は基本的に、今でも自分が学生のような感覚でいるんですね(笑)。昔は夜中でも学生が討論をふっかけてきてガンガンやっていましたが、今は戸締りなど問題もあって必要以上に遅くまで残らないよう指導していて、そういうのが少し物足りない(笑)。

足立:僕は逆に、学生とは違うと常に意識するようにしています。こちらがサービスを提供しているイメージで(笑)。今は個性が多様でいろんな学生がいますから、少しでも能力を花開かせることができるよう下支えする。博士課程にいた学生が研究員になってがんばり、それを見ていた下の学生が修士、博士に進むというつながりもできたりして、私も楽しみです。

荒川:外部の大学生から、研究室を見学したいというメールもよく来ますよね。もちろん、ウェルカムです(笑)。最近は、気軽にメールが来て、気軽に見学してもらっています。

足立:うちにも結構来ますね。夏休みが多いですが、もっと早い場合もあります。5月くらいとか。

荒川:高校生からのメール相談も来ますからね(笑)。そちらの研究室でこんな研究がしたいんですって。まずは入学してください!としか言えないですけどね(笑)。志望してもらえてうれしい悲鳴ですね。



共同研究の広がり

荒川:私の研究室は、特に高知県農業技術センターや県内各地の農業振興センター、県庁の農業振興部 環境農業推進課などと密接な関係があります。常にコンタクトをとって、いろんな情報を交換しています。卒業生もたくさんいるので、そのネットワークを活用して学生の研究でも、行政や研究機関によくお世話になっています。

足立:うちの研究室でも企業はもちろん、他大学や国の研究機関との共同研究が盛んです。具体的には、東京大学の農学生命科学研究科との共同研究や、国立研究開発法人 水産研究・教育機構などです。
今年の夏休みには、修士2年生の学生が、横浜にある中央水産研究所に一週間ほど泊まり込みで研修をさせてもらいました。相当に鍛えられ、成長して帰ってきましたね。学生にとって大きな成長の機会になっています。


修士過程を目指すみなさんへ

荒川:高知大学は、何といっても現場がすぐそばにあるのが魅力です。そのメリットを活かして、現場を見て体感しながら研究に取り組むことができます。ぜひ、高知を"親しみに"来てください!

足立:海の植物プランクトンに関しては、高知大学のラボは日本でもトップクラスだと自負しています。豊かな自然も間近にあるので、最高に楽しくて素晴らしい経験ができるのではないかと思います。興味や意欲のあるみなさんを待っています!