高知大学 農林海洋科学部 大学院 総合人間自然科学研究科農学専攻

時代を先取る大学院での学び 山と川のフィールド編


川のフィールドから2 修士、博士を経て研究員へ 高知で最先端研究の一翼を担う!

二点DO制御OD法の開発に修士論文・博士論文として携わり、在学中には国際水協会の国際会議にて学生優秀発表賞を受賞した陳さん。現在は、水環境工学研究室の研究員として精力的に研究活動や学生指導にあたっています。
 博士号を取得し、その研究業績や能力、人物が認められた人について、一定期間大学に任用されるのが研究員です。
 それぞれの研究室が取り組んでいる研究の現場を担い、在籍している学生の指導にもあたります。

最先端の水処理技術を学ぶため
中国から高知へ──

 私はもともと高知大学の協定校である中国の陝西科技大学で、水処理について学んでいました。その当時から水処理の専門家である藤原先生の研究にとても非常に興味を持っていて、先生のもとで最新の技術を学びたいと思い、大学院から高知大学にやってきました。修士課程、博士課程を経て、現在は研究員として大学に残り、藤原先生と一緒に複数の研究に携わらせていただいています。
 私の母国・中国では今、様々な環境問題が大きな社会問題となっていますが、中でも水処理の問題は最優先課題の一つです。藤原先生の開発された「二点溶存酸素(DO)制御オキシデーションディッチ(OD)法」をはじめ、様々な次世代の水処理技術を高知大学で学び、いずれは中国に持ち帰って母国に貢献するのが私の目標です。

研究の現場で学びのチャンスを得る

 二点DO制御OD法の実験には、私が修士の学生であった平成18年から博士課程を卒業するまでの5年間、関わらせていただきました。時期がちょうど高須浄化センターでのベンチスケール実験と野市浄化センターでの実証実験の両方にかかるタイミングで、その両方に参加できたのはとても幸せなことでした。
 高知大学では、研究において学生や研究員が積極的・主体的に現場に関わることが求められます。現場のメンテナンスやサンプルの採取、大学のラボでの分析など重要な部分も先生が信頼して任せていただき、よい勉強のチャンスになりました。

主体的に学ぶ姿勢、僕は陳さんに教わりました!空き時間もムダにせず語学の勉強をしていて・・・

 実験中、最も苦労したのは、現場でのトラブルへの対応です。二点DO制御OD法は、最初の導入時に様々なトラブルが起こります。現場には様々な種類の機械が入っており、微生物を使って下水処理を行っているため、その機械のトラブルであったり、パイプが詰まったり、計測器に微生物が付着して正しい値を示さないためにおかしな制御になってしまったり、その結果として微生物の体調が悪くなったりと、本当にいろいろなトラブルが起こりました。その度に、可能性を一つひとつ潰していって原因を突き止め、安定した運転ができるようにしなければなりません。そういう時はもちろん学生だけでは対応できないため、藤原先生と相談して、一緒に頭を悩ませながら解決していきました。

野市浄化センター
の工事完了時の記
念写真

 また、実証実験では1年間1日も欠かさず現場でサンプルを採取し、大学に持ち帰って分析をしなければなりませんでしたが、それをみんなで交代してやりきったこともとても心に残っています。雨が降っても台風が来ても、微生物を扱っているので休むわけにはいきません。私が中国に3週間里帰りした時には、藤原先生が代わりに毎日サンプル採取をやってくださって、それはとてもありがたかったですね。

新技術を実用化するために
一番大切なこと

 二点DO制御OD法の実証実験が終了した後、1年ほどして私たちは野市浄化センターに見学に行かせていただいた時のことです。現場の技術者の方から、「大学から引き渡し後のこの1年、ずっと安定的に運転できていますよ」と言っていただき、その言葉に今までで一番の喜びを感じました。自分たちの目指していた技術が、実験レベルではなく、現場でしっかりと実現したことを肌で感じ、高知の役に立てたのではと思えました。
 先生もよくおっしゃっていますが、こういった新技術を実際に現場で使ってもらうためには、現場の人がメンテナンスに手間を割かれない技術であることが重要です。そうでないと、いくらよい技術でも導入はしてもらえません。その点において、現場の方からいただいた言葉は、この二点DO制御OD法が本当に世の中の役に立つ技術であることを何より証明してくれたようで、とてもうれしく心に残っています。

 陳さんの言葉通り、新技術の導入において維持管理のしやすさは大変重要です。
 今回、私たちの研究開発と時を同じくして蛍光式の溶存酸素計が販売され、それを装置の中にうまく取り入れられたことがメンテナンスの手間の軽減につながり、実用化を後押ししてくれました。これは現場の視点の重要性を実感する経験でした。
 また、実証実験1年後の見学で、二点DO制御OD法の運転管理が香南市の管理業者の方に引き継がれ問題なく稼働しているのを見た時は、私もとても感慨深いものがありました。
野市浄化センターでの授業の様子

研高知大学発の新技術で、
中国や東南アジアに貢献したい


国際水協会の国際会議で受賞の喜びを
分かち合う

 近年、アジア諸国が目覚ましい発展を遂げていく中、中国だけでなくお隣の東南アジアの国々でも下水処理が課題になっています。二点DO制御OD法は、温暖な気候の地域ではその処理時間をさらに短縮することができる技術なので、東南アジアの気候条件にはより適しているのではないかと思われます。高知大学から生まれたこの新技術が、日本や中国だけでなく、アジアの人々の生活向上に貢献できると期待しています。
 私自身も藤原先生のもとでさらに視野を広げ、知識を深め、人々の役に立てる技術者になりたいと思っています。

中国の一般的なOD法の処理場を先生と見学。母国への二点DO制御の導入が夢!
中国出身の陳さんの得意料理はもちろん餃子! 皮も具もすべて手作りのその味は、"絶品"と藤原先生のお墨付き。水餃子パーティが、研究室の名物になっています。