地域とつながる研究
高知大学大学院には、学内にいながらにして、様々な企業や社会人と関わりながら
学びや研究活動に取り組める環境があります。
その特長を最大限に活かして研究に励む修士1年の林未季さんと、
指導教員の受田浩之先生に話を伺いました。
受田 浩之 うけだ ひろゆき 教授
専門領域:食品化学、食品分析学、食品機能化学
研究テーマ
食品の有する機能性(健康増進作用)の簡易
 評価法の開発
農水産物(特に高知県産)の有する機能性解明
林 未季 はやし みき
修士課程農学専攻1年(取材時:平成25年度)
「土佐FBC」で地域の起業家とともに学ぶ


 土佐フードビジネスクリエーター人材創出事業(以下、土佐FBC)は、高知県の産業振興のため、食に関わる中核人材を育成を目指す特別なプログラムです。食品に対する情熱やチャレンジ精神を持った地元企業や起業家の方が受講生として、また講師としてたくさん参加されています。私は修士に入って初めて受講しましたが、最初から本当に目からウロコの連続で・・・(笑)。
受田 
 とんでもなくおもしろい人が、いっぱい集まってきていますからね(笑)。

 特に印象的だったのは、ある地元企業の社長さんの講義です。微生物をロケットに載せて飛ばし、その宇宙を旅した菌を使って世界初の“宇宙ヨーグルト”を商品化したりしされていて、すごく夢のある会社だなと思ったし、企業のトップが楽しそうにそういう話をしている姿にとても感銘を受けました。のトップが楽しそうにそういう話をしている姿にとても感銘を受けました。
受田 
 土佐FBCでは、地域のいわゆるキーマンの方や日本における様々な分野のトップの人たちに来ていただいて、社会の課題解決や商品開発などを一緒に考えていきます。領域横断的なカリキュラムもさることながら、何より最前線に立つ企業人や研究者たちの実体験を聞くことで、学生は大きな刺激をもらえます。

 実は、学部生の頃の私は高知県の将来にマイナスイメージを持っていました。でも、土佐FBCで出会う社会人の方たちは、みなさん諦めない人ばかり(!)。私もこういう方たちと一緒にやりがいを感じながら働きたい、高知を元気にしたいと思うようになりました。
受田 
 ご存知のように、高知県は少子化・高齢化において日本の15年先を行く課題先進県です。でもこれは日本の将来を先取りしているのであって、弱みではなくむしろ強み。社会問題への解決策をいち早く見出し、そのモデルとなれるチャンスがあります。
今の学生はともすれば“就職口を見つけ”、“働く場所を探そう”としますが、地域が輝いていれば、若者は“仕事を創ろう”と戻ってきます。私たちが目指すのは、そういう輝く地域であり、「仕事は自分が創る」「産業は自分が担う」という高いマインドを持った人材の育成なのです。

 土佐FBCでは、社会で多くの実績や経験を積まれた方々が、わざわざ勉強をしに大学に戻ってきています。そこにはやっぱり、産業や地域への強い想いがある。私も負けてはいられないと思いますし、もっともっと勉強しなければ(笑)。勉強は卒業したら終わりではなく、社会に出てもずっと続いていくものだということも、土佐FBCの社会人のみなさんからあらためて教わりました。
土佐FBC「自己紹介」の様子
土佐FBC「商品企画開発実践論」でのディスカッション(左端が林さん)
 
受田 
 これまで土佐FBCに参加した学生は、結果的にそのほとんどが地元企業で働くという選択をしています。これは、土佐FBCから地元企業へのレールが敷かれているわけではなく、このネットワークに参加した学生がここで自ずと自分の価値を見出し、その価値によって自分の手で企業への扉を開いているということなんですね。

 私も将来は高知の食品業界で働きたいという目標を持っています。以前は漠然とした夢というか、あやふやなイメージのまま突き進んでいたのですが、土佐FBCでいろんな社会人の方と関わることで、やりたい分野や仕事がだんだん明確になってきたように思います。
土佐FBCについての詳細はこちら
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卒業論文研究で、大手企業と共同研究する


林さんが研究している
高知県大豊町の「碁石茶」。
日本では珍しい微生物発酵茶で、
幻のお茶ともいわれている
受田 
 林さんは、土佐FBCを受講する一方で、修士論文研究では日本を代表する大手企業との共同研究に取り組んでいます。高知大学の特徴の一つは、社会との接点が非常に幅広いということ。土佐FBCのように地域に根を張る活動の一方で、オール日本、オール世界の研究活動にも携わっていける環境があります。

 研究テーマは「発酵茶」です。研究対象としているのは、高知県の碁石茶をはじめ、愛媛県の石鎚黒茶、富山県のバタバタ茶、中国がルーツのプアール茶、阿波番茶など種類も様々です。共同研究なので今は詳しい内容は言えませんが、昔から受け継がれてきた発酵茶の伝統も踏まえつつ、機能性食品としての将来への可能性みたいなところまで広げていきたいと考えています。
受田 
 彼女は今、この共同研究チームの中心的な存在として企業とのディスカッションの場に出て行ったり、密に連絡を取り合ったりしながら研究を進めてくれています。そういう中で、責任感や、データの管理・締め切りに対する正確さ、レスポンスの速さといった社会人の素養の一部もしっかりと身に備わってきました。林さんは自分では気づいてないかもしれませんが、自立度が格段に違ってきました。

 先生方がいつも見守っていてくださるおかげです(笑)。
受田 
 彼女が取り組んでいる「発酵茶」は、実は、先ほどお話した地域の課題解決にもつながるテーマです。今の時代、商品を大量生産しても必ずフォロワーが出てきて熾烈な価格競争が展開されます。しかし、地方には里山などに代表される“強みとなる資本”があります。それは「時間」という参入障壁を持つものです。「発酵茶」はまさにその一つであり、300年、400年という歴史を持っていて、簡単には追随できません。高知県には、そういう地域に根付いた極めて特徴的な素材がたくさんあるのです。

 こういうお話を先生はいつも熱く語って下さって、とてもいい刺激になっています。土佐FBCも共同研究も、何より得ているのは“刺激”なのかもしれません。いろいろな分野、いろいろな立場の社会人と関わりながら学ぶことができるので、大学にいながら世界とつながっているという感覚もあります。恵まれた環境を活かして、これからももっともっと成長していきたいと思っています。
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