Case2.ベナン・インドネシア アフリカで、アジアで、地球の未来を考える
国際貢献できる現場で働きたい、地球規模の課題を解決できるような
研究に携わりたい ―― そんな夢を抱き、
海外のフィールドに出て学ぶ宮澤譲治さん、竹森矢さんと、
彼らの夢をサポートする宮崎彰准教授に、世界への思いを語ってもらいました。

写真左から、宮澤さん、宮崎先生、竹森さん
宮崎 彰 みやざき あきら 准教授
専門領域:作物学、栽培学、植物生理学
研究テーマ
節水条件下における水稲品種による窒素吸収
 並びに水生産性に関する研究
日本型およびインド型水稲品種の高温登熟性
 に関する研究
熱帯デンプン資源作物サゴヤシの根系発達
 並びに栄養生理に関する研究
宮澤 譲治 みやざわ じょうじ
国際支援学コース3年(取材時:平成25年度)
早期卒業で平成26年度に大学院進学が決定
竹森 矢 たけもり なおや
修士2年(取材時:平成25年度)
アフリカの食料危機に、イネの生産力向上で貢献したい!
宮崎
 私たちの研究室では、イネ、ムギ類などの主食または準主食となる作物を対象に、収量生産や品質の向上、高温や水欠乏などの環境ストレスに対する耐性の向上などを目指して、その栽培方法の改良などに取り組んでいます。その関係で、以前からアフリカ・ベナン共和国にあるアフリカ・ライス・センターの研究者とコネクションがあったのですが、今回、本学から提案するかたちでJICA(国際協力機構)の支援する新プロジェクトによってアフリカ・ライス・センターへ学生が長期派遣されることになりました。彼、宮澤くんはその志願者です。
ベナン共和国は西アフリカ、ギニア湾に面する国。
憲法上の首都はポルトノボ。
アフリカ・ライス・センター
アフリカにおける食料安全保障を目的に設立された国際研究機関。
ベナン共和国のコトヌーに本部を置く。
宮澤 
 僕は平成26年10月から2年間、現地に派遣されます。4月に大学院入学後、半年間は高知で授業を履修し、2年間ベナン共和国で青年海外協力隊として活動と研究を行った後、半年間また高知で学び、3年計画で修士を取得する予定です。
 アフリカでは、もともとイネの栽培はそれほど盛んではなく、その収量はとても低いのが現状です。日本ではヘクタールあたり5トンの収量があるのに対し、向こうでは1〜2トンほどです。そこで、イネの収量を高められるよう施肥のタイミングを変えて栽培を行い、そのガイドラインを作るのが派遣後の僕のテーマとなります。

ベナン共和国、イネの収穫作業

アフリカ・ライス・センターの圃場の様子(宮崎先生撮影)


宮崎
 彼はソフト面での技術支援として施肥についてのガイドライン作りに携わります。一方でハード面としては、きちんと水管理ができるよう畦作りを行うことが必要とされています。
 今後、ガイドライン作りに関してはアフリカ・ライス・センターの研究者が現場で宮澤くんを指導してくれますが、私も修士論文の指導のために現地ベナンに出向く予定です。
宮澤 
 僕はもともとJICAの活動に参加したくて高知大学に来ました。だから今回派遣が決まって、本当にわくわくしています。実は僕、親の仕事の関係で海外生活が長かったのですが、ずっと自分のやりたいことが見つからなくて、しばらく好き勝手やっていたんです。でも、インド・ネパールへの旅をきっかけに人の役に立つ仕事がしたいと思うようになり、農学なら人を助けられるのではないかと思ったのが最初の動機なんです。
宮崎
 宮澤くんのように自分の意志がはっきりしていれば、私たち教員はできる限りサポートします。今回も彼がアフリカに行きたいという思いがまずあって、それを大学や私たち教員の持っているネットワークにつなげることができました。今回の派遣では、彼は青年海外協力隊員としてアフリカ・ライス・センターの研究を支援することになりますが、その仕事を通じて現地の人々に技術を教えるボランティアとしても携わります。
宮澤 
 国際研究機関であるアフリカ・ライス・センターには、世界各国から最前線で活躍する研究者が集まってきます。将来は国際貢献できる現場で働くのが夢なので、そういう人たちと一緒に実際に仕事や研究ができるのは本当に楽しみですね。

高知大学では世界の様々なイネについて研究を行っている。
インドネシアで、サゴヤシの持つバイオマスの可能性を探る!

宮崎
 私は山本由徳教授と共に、イネの研究のほかに熱帯から温帯に分布する有用植物の生産性や品質を最大限に引き出すための栽培技術の確立を目指して研究を行っています。特に、デンプンを蓄積するヤシ類(サゴヤシ,サトウヤシなど)や食用カンナなどを対象に、その基礎データとなる作物の形態的、生理的、生態的諸特性の解明に取り組んでいます。
 竹森くんは、サゴヤシの研究のために1年間、インドネシアのボゴール農科大学に留学しました。これは、インドネシアのガジャマダ大学、ボゴール農科大学、ハサヌディン大学と四国の高知大学、愛媛大学、香川大学の6大学が連携して熱帯地域の農業発展及び生物資源の保全を目指すSUIJI(Six University Initiative Japan Indonesia)というプログラムによる派遣で、彼が日本側からの留学生第一号です。
竹森 
 僕がテーマとしているサゴヤシは、インドネシア、マレーシアなどの東南アジア・メラネシアの熱帯低湿地に広範囲に生育している植物です。デンプン生産量が非常に高く、現地の一部地域では伝統的な主食として昔から食べられてきました。近年は都市化とともに食生活が変化し、主食はコメに置き換わってきましたが、サゴヤシは飼料やバイオエタノールの原料としても大きな可能性を秘めています。そこで、その糖・デンプン生産力について評価を試みています。
 具体的には、栽培されているサゴヤシと野生のサゴヤシとを、それぞれ多収性に着目して比較しています。また、サゴヤシの持つ最大能力を知るために、食用に使われる樹幹の部分以外の樹皮や葉に含まれる糖・デンプン量についても調べています。

サゴヤシの樹幹と葉

樹幹にデンプンが溜まるのが、サゴヤシのおもしろいところ。
真っ白に見えるのは、デンプンが溜まっているから。
宮崎
 この調査が、例えばどのくらいのサゴヤシからどのくらいのバイオエタノールがとれるのかといったバイオマス活用に向けた基礎データにつながります。サゴヤシについてはそのような基本的なデータすら整っていない状況なのです。なにせ、木が大きくて調査が大変です。幹だけで15〜20メートルあって、葉も入れると25〜30メートル、ビルなら6階建ての高さにもなる植物ですから。
竹森 
 現地調査は本当に苦労の連続です。まずサゴヤシの生えている現場に行くだけで相当疲れます。現地の人いわく「道はある」らしいのですが、僕らには全く分からない(笑)。現場に着くと、サンプルにする木を選んでチェーンソーで木を切り倒してもらい、計測して、切り分けた100キロくらいの試料を担ぎ上げてもらって重さを計ります。それも大変です(笑)。
 それらの一部を持ち帰り、あとは分析です。留学中、途中2ヶ月間は分析のために日本に帰って来ました。機器などの設備は高知大学の方が性能もよく、より精密な分析ができるからです。外部の企業にエタノール化の試験をお願いしたりもしています。それらの結果から、一本のサゴヤシのデンプン生産量やバイオエタノール生産能力を計算するのですが、サトウキビなど他の植物と比較しても非常に高い能力を持つという計算結果が出た時は、本当にうれしかったですね。
宮崎
 今、国も大学もグルーバル人材の育成に力を入れていますが、やはり大切なのは、彼らのように自分のやりたいこと、目標や意志を持つことです。国内に限らず海外にも大学や研究者のネットワークがあり、そういうつながりを活用できます。
竹森 
 先生や仲間の存在もいい刺激になっています。将来どんな職業に就くかは分かりませんが、異文化交流が好き、現場が好き、研究が好きという思いは、これからも変わらないと思いますね。
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