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アブラムシは小学生でも知っている害虫の代表格で、農作物を吸汁して加害します。中でもいくつもの植物を寄主とできる広食性のワタアブラムシは、秋から春にかけて一次寄主植物で過ごした後、春になると羽を形成して次の二次寄主となる植物へと飛んで行き、さらにたくさんの農作物を加害します。 この時に羽が生える原因となる誘引物質や、寄主できる植物が変わっていく寄主転換の仕組みが解明できれば、アブラムシの被害を防ぐ新たな方法の確立につながるかもしれません。農薬に頼って害虫を絶滅させるのではなく、生物的、科学的、物理的など様々な防除方法を組み合わせて被害を許容範囲以下に抑える「総合防除」の確立を目指して、卒業研究を行いました。
実験ではまず、ワタアブラムシの寄主植物と知られているウリ科やアオイ科などの植物を10種類準備しました。そして、キャンパス内に自生していたムクゲを使ってムクゲを一次寄主とするワタアブラムシを用意し、10種類の植物に移して寄主転換きるか累代飼育していきました。寄主転換は3世代目まで世代交代できたかどうかで判断しますが、アブラムシはだいたい10日ほどで子どもを生んで世代交代するので、一つの植物につき一ヶ月ほどかかったでしょうか。
一番苦労したのはアブラムシを取って次の植物に移す作業です。アブラムシってとても小さいじゃないですか。だから筆を使って取るんですが、その際に葉っぱを吸っている個体を取ろうとして口針などワタアブラムシを傷つけてしまうと、次の植物に移しても育ちません。なので、とても慎重に進めていきましたね。
実験の結果は、ワタアブラムシが寄主できると言われている10種類のうちスイカとオクラの2種類にだけ寄主転換が確認されました。さらにそのスイカとオクラ上で累代飼育を行った個体を使って、各植物への寄主転換試験を行いましたが、結果は同じでスイカとオクラには寄主転換できたものの、他の植物にはできませんでした。このことからワタアブラムシの寄主植物は一次寄主の植物の段階で決まっているのではないかと推論し、影響を与えている成分を探すためにムクゲの成分の構造解析を行いました。
僕の所属する研究室の先生は、いつも「もっと楽しいことしようよ」と口癖のように言っています。その「楽しいこと」とはつまり「実験」のことなんですけど(笑)、そういう研究室の雰囲気があって、僕も実験のおもしろさにどんどん惹きこまれていきました。
実験のおもしろさ――それは、やはり自分で「こうではないか」と仮説を立てて進めていって、きれいに「そうであった」という結果が得られた時の喜び、達成感です。といっても実際には山あり谷ありで、僕も失敗はもちろん、先生から教わったことの解釈が間違っていて全然違う実験をやってしまい、めちゃくちゃ怒られたこともあります(笑)。でも、困った時には先生や先輩気軽に相談できたし、失敗をおそれずどんどんやっていける環境がありました。そこが高知大学のよさだと思いますね。
あと、もう一つ先生からよく言われていたのが「大学は哲学を学びに来るところ」という言葉です。いろんな教授の授業を受けてその教授の考え方を学んだり、いろんなところに出て行って多様な人に出会ったり、そういうことが大事だと教わりました。
僕も大学の中だけでなく、中四国の大学生が集まる交流合宿に参加したり、夏になれば日章寮チームでよさこい踊りを踊ったりと、幅広く大学生活を満喫しました。本当に充実した4年間だったと思います。
今後は大学院に進学し、卒業研究のテーマをさらに深めていく予定です。そして有機化学分野の専門性を身につけて、できれば将来は食品関係の企業に就職したいというのが今の僕の目標。この夢を叶えられるよう、精一杯努力していきたいと考えています。