センター長あいさつ

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■ センターが目指す世界-その鍵となる推論
 本学は、科学万能主義に基づく人や社会、自然に対する哲学的思考からのパラダイムシフト、希望ある未来の創出を目指し、以下のことを目的に希望創発センターを設置致しました(平成30年4月開設)。

 

センターは、多様なステークホルダーと協働し、知る(深く、広く、感じる)、考える(学び考える、協働して実現する「意志」)、創る(意志を具体化し世の中に展開)ことの実践を通して「20年後の我々の希望ある未来を我々自身で具体的に共創する」ことにチャレンジしながら、「俯瞰的な視点から社会の問題を捉え、なすべきことに向き合い、実際にそれを遂行する能力を有し、信念と希望に満ちた次世代の担い手を育成する(教育)」とともに、「『物と力の新結合』から『人と人との新結合』というイノベーションの源泉シフトに対応する(研究)」ことを目的とする。(『設置計画書』より抜粋)

 

 21世紀は、人々の価値観が多様化し、社会の価値規範が絶え間なく変化する現代社会であるため、これまでの価値を大前提にした課題解決の思考では、多数の人々の幸せを実現することは極めて難しいと言われていますが、希望創発センターは、まさにこの困難と言われる課題にトライしようとするものです。

 

 私は、このトライアルを成功に導く重要な要素の1つは、一般にはあまり知られていない「アブダクション(発見の推論)」にあると考えています。

 

 アブダクションは、多分野からの洞察による直観的な推論と言われ、原理的に不可能と思われていたことを可能にする際に必要な推論と言われているものですが、これを私が重要視するのは、アブダクションが「常識を疑う」ことから“問いを立てる”推論という考えからきています。

 

 これに対し、皆さんもよくご存知の、実生活で遭遇する問題を解決する方法としては有効な演繹法(大前提をもとに飛躍のない機械的な推論)や、解決すべき新たな問題を考えだすのに有効な帰納法(個々の事実を根拠にする科学的な推論)はともに、必ずしも「常識を疑う」ことを前提にした推論ではないというのが私の認識です。むろん、これら推論も問題解決に必要なものであることは明白です。ただ、アブダクションなくして、21世紀社会の課題は解決できないのではないか。これが、私の捉え方です。

 

 大学は、これまで演繹法、帰納法を軸にした教育研究にはそれなりに応えてきたと思います。しかし、人々の幸せに対する価値規範が大きく変化し多様になってきている21世紀の課題解決に不可欠のアブダクションからの教育研究の実践については、必ずしも十分ではないというのが実感であり、それが、私個人のセンター設置の動機にもなりました。

 

 

■ 基盤となる信頼関係醸成-「すじなし屋」と「人間関係形成インターンシップ(SBI)」
 今回、私たちは、目的達成のために新たな教育研究システムの開発を目指していますが、その核となるのが希望創発研究会です。この研究会は、先のアブダクションからのアプローチを目指すものですが、その質を左右するのが、そこに参画するメンバー間の信頼関係の質です。

 

 高知大学は、この信頼関係を醸成する手法を開発すべく、2009年度より大手企業の現職の人事責任者も研究員に迎えた研究会において取り組みを行ってきました。結果、確立したのが、「すじなし屋」という手法です。ここでは、詳しくは紹介いたしませんが、「すじなし屋」は、その場に提供される情報を、共感を基盤に相互理解を促進する空間づくりの手法で、極めてシンプルなものです。その特性を活かし、希望創発研究会でも、様々な局面でこの手法を活用しています。

 

 今年度、「持続型・安全・安定食糧生産システム」と「医療・介護」をテーマとする2つの希望創発研究会には、県内外の企業19社から参画の若手社員の皆さん20名と、3年生から大学院生の学生19名が所属しています。センターが、こうした構成において質の高い成果を得るために事前にできること、その1つは、学生に対する信頼醸成能力向上支援です。本学は、これについては幸いにも、具体策をすでに手にしています。それが、人間関係形成の「肝」を実践的に理解してもらうことを企図に非正課として開発した「人間関係形成インターンシップ(SBI;Society Based Internship)」です。

 

 SBIは、9年前から開発・試行してきました。3人一組による3週間の実習(120時間)と学生向けに30時間の事前・事後学習、さらに実習を支援いただくスーパーバイザー(受入先の若手社員)の方々にも事前・事後セミナーを実施するところが、特長です。もちろん、今回構築した教育研究システムにも、参画希望学生の支援策として組み入れました。

 

 

■ ダイバーシティ型運営組織からのチャレンジ

 希望創発センターは、10名の学内教員(兼務教員)、4名の特任教員(主に元大手の企業人)、12名の客員教員(主に現職の企業人)に4名の事務職員が運営スタッフとして参画する、まさにダイバーシティの組織であり、これまでの大学には無い運営組織です。希望創発センターは、こうしたトライアルを、名称に相応しい内容にしていきたいと考えています。今後も、本センターの活動に関心を持っていただければ幸いです。

 

 

平成30年7月 

センター長 池田 啓実

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