教授挨拶

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 高知大学医学部歯科口腔外科は、高知県における歯科治療の基幹病院として"地域医療への貢献"をモットーとしております。医学部における歯科口腔外科は"ミニ歯学部"と言っても過言ではなく、一般歯科的疾患から口腔外科的疾患、さらには口腔内科的疾患といった幅広い疾患を扱っております。そのような診療に加え、医学部生を対象とした卒前教育、歯科医師を対象とした卒後教育、大学院教育、さらには研究にも力を入れております。

 臨床の中でわれわれが積極的に取り組んできたものは、口腔癌と口腔粘膜疾患であります。御存知のように、癌の治療は主に手術、抗癌剤、放射線などによってなされてきております。しかしながら、口腔の各器官は咀嚼、嚥下、発音などの重要な機能を有しており、口腔癌を単に手術のみで治療すると重大な機能障害、ひいてはQOLの低下を招くことになります。そこで、当科では超選択的動注療法を積極的に用いて、抗癌剤と放射線、さらには免疫療法を組み入れた治療により腫瘍の縮小・消失を図り、可及的に手術を回避するようにして、口腔機能の温存に努めております。口腔粘膜疾患に関しては、口腔内には様々な粘膜疾患が生じ、それらの中には病因が明らかでないものもあれば、病因は分かっているもののその制御がなかなか困難なものもあります。前者には口腔扁平苔癬や舌疼痛症など、後者には口腔カンジダ症などがあり、当科が全力をあげて取り組んできたものであります。口腔扁平苔癬や舌疼痛症につきましては、その病因をかなりのところまで明らかにし、治療法についてもある程度満足のいく結果が得られております。したがって、研究対象も口腔癌や口腔粘膜疾患が中心となりますが、常に臨床にフィードバックできる研究、つまり、病態解析のみならず治療を見据えた研究を行うように心掛けています。

 卒前・卒後教育を通じて大切にしている点は、"医師、歯科医師である前に一社会人としての常識を弁えた人間たれ"ということで、これは"医療は、病気を診るのではなく病人を診る"ことに繋がるものと確信しています。しかしながら、それだけで医療ができるものではなく、当然の如く広い知識、優れた技術も必要で、それらの研修ができるシステムを構築しております。

 これからも高知大学医学部歯科口腔外科の責任者として、高知県の歯科医療の向上に少しでも役立つことの出来るように努力するとともに、研究面において世界に向けて発信できるような成果を挙げることのできるよう日々努力して参りますので、これまで以上の厚い御支援と御協力を御願い致します。

高知大学医学部歯科口腔外科学講座
教授 山本 哲也