内視鏡診療部

2017年4月1日より『光学医療診療部』から『内視鏡診療部』に名称を変更しました。活動内容は同様ですが、内視鏡を用いた診断・治療を行う各診療科との連携を円滑にし、専門的な診断・治療の需要に柔軟に応えることを目的としています。

▼ 概要

当院は、地域がん診療連携拠点病院であり、消化管・胆膵領域の腫瘍に対する診断治療を中心に行っています。食道・胃・大腸の腫瘍は、必要に応じて色素内視鏡、NBI併用拡大内視鏡、超音波内視鏡などで病変を詳細に観察し、内視鏡的粘膜切除術(EMR)や内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)を行っています。胆膵系の腫瘍では、診断のために積極的に超音波内視鏡下生検(EUS-FNA)を行い、悪性狭窄に対するステント留置などの処置も積極的に行っています。最近ではバルーン内視鏡を用いて術後腸管に対する内視鏡的逆行性膵胆管造影(ERCP)も行っています。また、咽頭領域の腫瘍に対するESDも耳鼻科と協力のもと全身麻酔で施行しています。

また週に一度、内視鏡所見の読影・理解を深めるために内視鏡カンファレンス・読影会を施行し通常観察のみならず画像強調内視鏡や拡大内視鏡などについても指導を行ったり、生検やESD症例では術前内視鏡と病理を対比しながら症例検討を行っています。2週間に1度は、消化器外科の上部下部消化管グループと合同カンファレンスを行い、術前の内視鏡評価と術後の評価、画像診断、病理診断の対比を行うことで、診断能の向上とともに振り返りの重要性の指導も行っています。

内視鏡診療部で実施している主な検査は次のようなものです。

▼ 上部消化管内視鏡検査

食道、胃、十二指腸までの範囲を観察します。

通常観察に加え、より精密に診断を行う為に色素内視鏡観察を適宜行います。病変の存在が疑わしい場合は生検により病理診断を行います。また、早期癌に対して内視鏡的粘膜切除術の適応決定の補助診断として超音波内視鏡検査を行います。その他、再発性の胃・十二指腸潰瘍がある場合は、ヘリコバクター・ピロリ菌の内視鏡検査(培養、鏡検、迅速ウレアーゼ試験)を行います。

▼ 大腸内視鏡検査

直腸、S状結腸、下降結腸、横行結腸、上行結腸、盲腸、回腸末端(小腸)までの範囲を観察します。通常観察に加え、色素内視鏡観察、拡大内視鏡観察を適宜行います。拡大内視鏡観察では腫瘍性病変に対し、高い一致率で病理診断を予想できるので、内視鏡的ポリープ切除術や内視鏡的粘膜切除術の適応決定を詳細に診断することができます。必要に応じて超音波内視鏡検査も行います。その他、炎症性腸疾患の診断にも有用です。

▼ 小腸内視鏡検査(カプセル型小腸内視鏡、ダブルバルーン型小腸内視鏡)

小腸は長らく「暗黒大陸」と呼ばれ、小腸疾患の診断・治療は消化器疾患の中でも後れをとっていましたが、2001年に小腸カプセルの登場によって大きく変わりました。患者さんが約2cmの小腸カプセル内視鏡を飲むことにより、全長6~7mと長い小腸の粘膜を観察でき、その結果、今まで原因不明とされていた消化管出血や腹痛の診断が、患者さんへの負担なく外来で簡便に行えるようになりました。その後、ダブルバルーン型小腸内視鏡も登場し、全小腸の観察と治療も行えるようになりました。当院でも2010年より導入し安全に行われています。

▼ 内視鏡的逆行性胆道膵管造影検査(ERCP)

膵管、胆管、胆嚢の形や状態を調べることで、慢性膵炎、膵臓癌、胆石、胆管癌などの診断を行うための検査です。特殊な内視鏡を口から十二指腸まで挿入し、内視鏡から出た細い管を膵臓や胆管の開口部(十二指腸乳頭)に挿入します。そして、その細い管から造影剤を注入し、X線写真を撮影することにより、膵管、胆管、胆嚢の形、状態を調べます。所要時間は検査のみの場合は約10分から20分ほどです。検査後には病室で点滴をするとともに安静が必要となりますが、経験豊富なスタッフが検査を行いますので、安全に実施できる検査です。

▼ 超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)

内視鏡の先端に付けた超音波で病変を確認しながら針を刺す検査方法(Endoscopic Ultrasound-guided Fine Needle Aspiration:EUS-FNA)が開発され、2010年より保険診療として認可されました。癌か、癌でないか鑑別が困難な消化器の病変を超音波内視鏡で観察しながら生検針で穿刺し、組織や細胞を採取する検査です。これにより手術や抗がん剤治療の前に正確な病理診断を得ることができ、確定診断を行ってから治療方針を決定することができます。その他、急性膵炎にしばしば合併する膵膿瘍では、EUS-FNAの技術を応用することで内視鏡的に膿瘍ドレナージが可能であり、良好な治療効果を得ています。

内視鏡診療部で実施している主な治療は次のようなものです。

▼ 内視鏡的治療

食道、胃の粘膜内癌や高度異型上皮や腺腫などに対して内視鏡的粘膜切除術を行います。基本的に入院治療になります。大腸の場合、内視鏡的ポリープ切除術や内視鏡的粘膜切除術を、通常の検査の際に外来治療で行いますが、出血のリスクが高いと思われる大きな病変では入院治療を行います。

その他、消化管出血に対する内視鏡的止血術(高張Naエピネフリン液注入、エタノール注入、クリップ、アルゴンプラズマ凝固など)や消化管狭窄に対する内視鏡的治療(バルーン拡張術やステント挿入など)を行っています。

▼ 内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)

外来もしくは他院での内視鏡検査にて発見された、食道・胃・大腸の病変を内視鏡的に切除・治療を行います。以前であれば手術が必要であった病変の中にも、現在では内視鏡的に治療が可能な場合があります。光学診療部(内視鏡室)にて点滴をしながら治療を行います。内視鏡の方法は検査の際と大体同じですが、静脈麻酔をさせていただいて行います。所要時間は病変の大きさ、部位などにより異なりますので、治療前に担当医から詳細をご説明させていただきます。また、入院期間も病変の大きさ、部位、種類によって変わりますが、およそ1週間~10日ほどです。この治療は広く行われており、当院でも経験豊富なスタッフの下に行われますので安全に行われております。

▼ 内視鏡的胆道膵管ステント留置術

内視鏡的膵管・胆管造影検査の技術を用い、膵臓疾患、胆道疾患に対する治療を積極的に行っています。悪性腫瘍による胆道狭窄に対して胆管ステント留置術を施行しています。また慢性膵炎や膵仮性嚢胞に対して膵管ステント留置術を多数例施行しております。