高知大学 医学部 外科学講座 外科1




平成21年1月






2009年の年頭に当たり、ご挨拶申し上げます。


当科の大目標は 「優れた外科医の育成」 です。教授就任以来この大目標に向

かって教室全体が一丸となって突き進んで参りました。その結果、毎年数名の新

人がコンスタントに入局してくれる “将来性のある教室” に成長してきています。

高知大学での外科医不足は高知県の外科医療の衰退・崩壊に直結しますので、

本年も新しい外科医を確保し、優れた外科医へと育成できるように全力を尽くす

覚悟です。


現在の東京女子医科大学消化器病センターを創設し、食道外科医として世界的

にも有名だった中山恒明先生(故人)は50年以上も前に発行された著書の中で以

下のように述べています。


「外科の生命は手術にありと云える。メスを持たざる外科医は外科医として価値な

く、幾百の理論に精通して居ても、手術を遂行する能力のない時は外科医として

使命を果たすことは出来ない」、更に 「私は常に外科における手術法は次のごと

く工夫されねばならぬと考えている」 として、

1.外科手術は誰でも容易に施行出来るような方式であること

2.その手術は安全で患者がその手術により死亡する危険のないこと

3.その手術により患者はその病苦から完全に開放されること

4.その手術によって同じ疾病の再発を見ないこと

5.その手術で患者に何等かの合併症または後遺症を遺さぬこと

これらはすべて現在の私たちが目指すべき理想の外科医療そのものであり、まさ

に示唆に富んだ5か条といえます。


私は教授就任以来 「良好な手術成績の達成:良好な手術成績は良好な人間関

係から」 を教室の目標に掲げ、外科治療成績向上のためには手術手技を磨くこ

とと、教室員一人一人が “しっかり勉強して、しっかり患者さんを診る” ことを訴え

続けてきました。


お蔭様で周囲の皆様から絶大なるご支援を頂戴し、1) 手術件数および患者数

の大幅な増加、2) クリニカル・クラークシップにおける医学生からの評価が全部

門でトップ、3) 全国学会での主題発表数、国際学会発表数、英語論文数の急増、

4) 学位取得者数および学会認定専門医取得者数の増加、5) 2つの産学共同

研究および科研費を含めた複数のグラント獲得による研究資金の確保を達成す

ることができました。これまでの3年間を振り返り、教育・診療・研究の実績におい

て学内および国内での足固めはほぼできたのではないかと思っています。


これからはより優れた人材育成のために海外へ目を向けていきます。その先駆

けとして本年の4月1日より岡林雄大講師が visiting assistant professor の身分で

米国ジョンズ・ホプキンス大学外科学教室に留学します。岡林先生に続いて教室

から若者たちが次々と海外を目指して留学していく未来像を夢見ています。こうし

た未来像が現実となり、教室から国内外で力を付けた外科医が続々と誕生したな

らば、高知県の外科医療の未来はきっと明るいはずです。新春の夢がいつか正

夢となることを願いながら、今年も地道な努力を続けて参る所存です。


本年も皆様からの温かいご指導ご鞭撻を賜りますよう、何卒宜しくお願い申し上

げます。



平成21年1月吉日
高知大学外科学講座外科1 教授 花ア 和弘