高知大学 医学部 外科学講座 外科1
平成22年1月
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教授就任5年目の節目の年に当たります2010年年頭のご挨拶を申し上げます。
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最近の教室の発展ぶりは教室員の活気、手術件数、手術成績、英語論文数、研
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究費の獲得額を見ても明らかです。ただし、更なる向上を目指して、「高知大学外
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科1の心得10か条」を提唱し、教室のホームページでも紹介しました。その中で強
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調したいことに “備えあれば憂いなし” があります。手術を成功に導いたり、学会
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発表を上手に行なったり、論文を国際誌に受理される等の様々な場面でこの言葉
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大阪大学外科教授であり、国立がんセンター総長もされた 久留 勝(くる まさる)
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先生(故人)は半世紀前の著書の中で以下のように述べています。
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「外科的治療は、その効果の適確性においてしばしば他の幾多の治療法の
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追随を許さない。その反面、大なり小なり損傷を前提とし、自然の状態への完
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全な復帰の欠けている点で、その行使には常に充分な慎重さが要求される」
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どんなに完成度の高い外科手術においてさえも多少の臓器や組織の損傷は避け
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られません。そうした損傷を最小限にするためには入念な術前準備が必要である
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だけでなく、手術中は “石橋を叩いても渡らないくらいの慎重さ ” も求められます。
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“油断大敵” です。外科的治療は何が起きるかわかりません。たとえ小さな手技
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でもしっかりした手順を踏んでくれぐれも慎重に行いましょう。
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次に久留先生は、「メスを用うる人々は、メスの行使を必要とする疾患の本態
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に充分過ぎる程充分な認識を持たなければならない」 と続けています。言い方
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を換えると、手術を行う必要のある患者さんの個々の病態について充分過ぎる程
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充分な認識を持たない外科医はメスを用うる資格がないという意味だと思います。
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患者さんの手術を行う際は、個々の病態や解剖学的特徴を充分理解した上で、そ
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の患者さんに最も適した過不足のない手術を行うようにしっかり勉強してから臨み
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更に久留先生は、「外科医はメスを手にしながら、疾患の本態の判定を瞬間
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的に決せねばならぬ事態に遭遇しがちである」 と述べています。優れた外科医
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になるための資質として先天的な要素をもし挙げるとしたら、それは “judgement
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の speed” であるとの格言もあります。同時にその judgement は正しい(and jus-
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tice)ものでなければいけません。外科手術の急場で瞬時に的確な judgement を
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下すためには、常日頃の知識の習得と技術の修練を怠らないことが何よりも大切
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微力ではありますが、本年も新たな企画を導入しながら、当科の大目標である
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Academic Surgeon の育成を目指して精一杯取り組む所存です。今後とも皆様
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からの温かいご支援・ご協力を賜りますよう、何卒、宜しくお願い申し上げます。
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