高知大学 医学部 外科学講座 外科1




平成24年1月






2012年の年頭に当たり、ご挨拶申し上げます。


2011年3月11日の東日本大震災はまさに national disaster となってしまいました。

残念ながら、未だに解決の糸口が見えないトンネル状態が続いています。被災者

の皆様に対し、お悔やみ申し上げますとともに、一日も早い復興を心からお祈り

申し上げます。


高知県民としては来たる南海地震に対し、備えを万全にしていく必要があります。

南海地震は1600年以降に限定すると、1605年、1707年、1854年、1946年に発生

しています。それぞれの間隔は102年、147年、92年となっています。仮に1946年

から92年後に南海地震が発生するとしたら、2038年に当たります。21世紀前半の

2050年までに南海地震に遭遇する確率が高いとする専門家の予想には根拠があ

る訳です。


「教室の10か条」 の中にも掲げてありますが、こうした青天の霹靂に対する備えで

一番肝心な点は、平時からの準備を怠らないということです。私は教室員相手に

ときどき 「何かで成功しようと思ったら準備が一番大事」 だと諭しています。人の

生死に直結する手術の成功はまさにこれに当たり、そのための準備のし過ぎはな

いはずです。また研究の立ち上げ、学会発表や論文化もしっかり準備しているか

どうかが成功の鍵を握っています。ではその具体的な準備として何をしたらいいの

でしょうか?私は「短時間でもいいから毎日すること(always doing)」 と 「できるだ

け本番を想定してすること(simulation effect)」 の2点が肝要ではないかと思いま

す。


2011年度から5年間の目標として 「世界を目指す」 を掲げました。本年は2年目の

年に当たります。大きな目標ですが、これも常日頃の地道な努力すなわち準備が

あれば実践できるのではないでしょうか。つまり 「千里の道も一歩から」 の精神と

心がけが何よりも大切といえます。東日本大震災はどれだけ準備を重ねても、準

備のし過ぎは無いという教訓を私たちに残してくれました。教室員の諸君はどうか

現状に甘んじることなく、高い理想を掲げ 「青天の霹靂を想定しての準備」 を怠ら

ないようにして、成長し続けて欲しいと願っています。


脳科学的には能動的作業を行う前頭葉を鍛えることによって仕事の効率は飛躍

的に高まるそうです。英語論文を書くなどの文章作成能力の発達も、インプット

(側頭葉)よりもアウトプット(前頭葉)を鍛える方が効果は高いようです。つまり

「Always Writing」 が大事だということです。お互いに前頭葉を大いに鍛えて、「高

知発のエビデンス」 を世界に発信していきましょう。


本年もご指導・ご鞭撻を賜ります様、何卒宜しくお願い申し上げます。


平成24年1月吉日
高知大学外科学講座外科1 教授 花ア 和弘