高知大学 医学部 外科学講座 外科1




平成25年1月





2013年の年頭に当たり、ご挨拶申し上げます。


2012年日本医学界は「山中伸弥教授のノーベル生理学・医学賞受賞」で大いに

湧いた。我が国の医学部出身者で初めてノーベル賞受賞という快挙であった。

「医療崩壊」「医師不足」「基礎医学研究者の激減」など暗い話題ばかりが続いた

我が国の医学界で久々の明るいニュースであった。何よりも山中教授の謙虚で真

摯な態度や言動が世界中から賞賛を浴びたのは同じ日本人として誇りに思い、嬉

しかった。また2012年のもう一つの明るい話題はロンドンオリンピックにおける日

本人選手の活躍(メダルラッシュ)であった。


神様は謙虚な人間にご褒美を与えるという諺がある。今回の山中教授を見ている

と神様でなくても何かご褒美を与えたくなる感想を抱いた方はたくさんいたであろう。

これを契機に日本の医学界が活気づくのは間違いない。何事も最初の道を切り拓

いていく先駆者が一番大変である。日本人でもやればできるという「心の支え」が

それまで誰も乗り越えられなかった困難な壁を乗り越えていく際の大きな原動力

になる。オリンピックの金メダルも同じで、どの種目でも最初に金メダルを獲得す

る人が最も評価されるべきである。


日本の大学でノーベル賞受賞者と金メダリストの両方を輩出している大学がある。

1949年京大の湯川秀樹の日本人初のノーベル賞はあまりにも有名である。しかし、

それ以前の1936年ベルリンオリンピックの三段跳びで、当時の世界新記録の16m

で優勝した田島直人が京大出身というのを御存じの方は意外に少ない。世界新記

録達成で優勝し、ドイツ語も流暢だった田島が黙してニコリともしなかったというエ

ピソードは実に男前だ。京大のようにノーベル賞受賞者と金メダリストの両方を輩

出している大学は世界でも珍しい。


「今後の5年間は世界を目指そう」と教室員たちと目標を掲げて3年目の年明けで

ある。浅学菲才かつ微力であるのは百も承知しているが、山中教授を見習い、少

しでも「世界を目指して」頑張ろうと新年早々張り切っている。


外科教授職は多忙である。そのためか教授に就任した途端に英語論文を書かなく

なる人がいる。しかし、細々でもいいから執筆活動を継続する方が、前頭葉に刺激

を与えて「ボケ防止」に繋がると考えている。「不良長寿」を勧める順天堂大学の奥

村名誉教授によると、長生きのコツは「真面目すぎない」ことだそうだ。また適度な

緊張感やストレスはアドレナリンが上昇してむしろ良薬らしい。私は牡羊座のB型

人間で、一般的には最もストレスに強い組み合わせとされている。ただし、困った

ことにやらないとなると全くやらなくなるタイプでもある。もともと意志が弱く、気も小

さいので、事前にアドバルーンを上げておいてから、それを克服していくやり方が

自分には合っているようだ。


本年も前頭葉を鍛えて、「高知発のエビデンス」を世界に発信していきたい。


平成25年1月吉日
高知大学外科学講座外科1 教授 花ア 和弘