高知大学 医学部 外科学講座 外科1




平成26年1月





2014年の年頭に当たり、ご挨拶申し上げます。


2020年のオリンピックとパラリンピックの開催都市が東京に決定した。その決め

手の一つになったのは、滝川クリステルが発信した「おもてなし」に代表される日

本オリンピック招致団の素晴らしいプレゼンテーションだった。


私は日本人がこれまで比較的苦手とされてきたプレゼンテーションの重要性を医

学部5年生のクリニカルクラークシップの段階から常に訴え、実践してきている。

医学教育におけるプレゼンテーションの優れた点は以下の3点である。


@ 患者さんとの関係が良くなる:プレゼンテーションをするためには患者さんか

ら様々な情報を得なければならない。すなわち情報収集能力を磨く必要がある。

そのためには患者さんと親しくなって、いろいろなお話が気軽に出来る環境づくり

が重要となる。具体的なコツは「あいさつ」と「笑顔」と教えている。学生たちは当

科のクリニカルクラークシップの2週間は毎朝「おはようございます」を心がけ、鏡

の前で「ベストスマイル」が作れるように練習している。患者さんに信頼されるドク

ターになるのは一生かかるが、患者さんに好かれるドクターになるのは今日から

でも出来る。


A コミュニケーション能力が身に付く:コミュニケーション能力とは「知識を整理

した上で他者に分かりやすく伝える能力」である。どんなに名医であろうと患者さん

やそのご家族が理解できないような難解な説明をするようでは「コミュニケーショ

ン能力」が高い医師とは言えない。プレゼンテーションのコツは「わかりやすい」と

いうことである。要点は「できるだけ図式化して簡潔にまとめる」ことである。すな

わち「Simple is Best」 「The shorter The better」の精神が大事である。


B 医学的知識が身に付く:試験に強くなりたかったら、その分野の専門用語を

きちんと覚えることである。すなわち医学専門用語として特に外科では解剖学的

用語および生理学的用語を駆使したプレゼンテーションを行い、「ここ、あそこ」み

たいなあいまいな表現はできるだけ控えるように指導している。これは国家試験

対策としても有用である。


このようにプレゼンテーションには優れた医師になるためのすべての要素が含ま

れている。プレゼンテーションを介しての学生とのやり取りは私の楽しみである。

また教室員が国際学会や全国学会で明快にプレゼンテーションしている姿を目

にするのは指導者としてこの上なく嬉しい。教授職をつまらないと思うなかれ。大

なり小なり自分の影響を受けて世のため、人のために貢献できる医師育成の片

棒が担げる幸せな職業なんて他にはなかなかないではないか。本年も若い世代

にプレゼンテーションの大切さを伝授しながら、自分自身も指導者として一歩でも

前に進んでいきたい。


平成26年1月吉日
高知大学外科学講座外科1 教授 花ア 和弘