高知大学 医学部 外科学講座 外科1







塚本さんが 学位 を取得しました


塚本 雄貴さんの学位授与式が6月27日(取得は5月21日)にあり、学位(論博)が授与されました。

工学部卒の彼が、メディカル事業も展開している日機装株式会社の営業マンとして、人工膵臓と関わ

り、博士(医学)が蛍雪之功と成った経過が、感謝の言葉とともに綴られています。


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高知大学医学部外科学講座外科1
教授
花ア 和弘 先生

謹啓 
 このたびは、学位授与の名誉をいただき、ありがとうございます。この名誉は、すべて花ア先生のご

指導の賜物です。言葉では表せない感謝の思いで、あふれております。本当にありがとうございま

す。論文を書かせていただきたいという小生の勝手なお願いを温かく受け入れていただき、深謝申し

上げます。感謝の気持ちとともに、この名誉に至った経緯を振り返らせていただければと思い、筆をと

りました。

 さて、2007年から花ア先生と日機装で共同研究を組ませていただき、多くの実験をさせていただい

ておりました。当初は開発中の新型人工膵臓を使って何か研究できないか、というご提案からスター

トしたものと思います。その後、膵切除の実験や、CVカテーテルの実験などさせていただいておりま

す。STG-55とSTG-22(注釈)を比較する実験は、血糖値が侵襲などで上下動する際のサイトカイン

の動きを追跡する実験と同時に行われ、STG-55の実験データは非常に良い結果を示していました。

弊社木下の提案で、STG-55と22の性能比較を論文にすることについて、花ア先生のご了解をいた

だきました。小生にとりまして、血糖測定の精度評価は、初めて学ぶことばかりで、休日には、多くの

論文を読みました。大学とは異なり、企業には論文や医学雑誌が多くありませんので、読みたい論文

を自費で購入し、さらに土曜日には国会図書館にDiabetes Care等の古い論文のコピーを取りに行く

ことで、今回の論文を書くのに必要な知識を集めることができました。私のように、医療機器の開発

や営業に長年携わってきたものの、機械工学科出身で医学的なバックグラウンドの無い者を指導す

るのは、花ア先生にとりまして相当に骨が折れたことでしょう。IntroductionやDiscussionの書き直しの

ご指示を何度もいただきました。その時々では、自分の中でのベストで臨んでいましたが、ご指摘を

いただくたびに、これほどまでに到達できない部分があるのかと、外科、血糖管理の深淵にふれた思

いでした。ご指摘のたびに一からすべてやり直す状態でした。英文ではうまくできたつもりでも、日本

語にしてみると支離滅裂になっていることに気が付いたりすることが、よくありました。出し直すたびに

再び迅速で、しかも丁寧にすべての文章を読んで見直しをしていただき、熱意をもって、ご指導いた

だいたことに感謝いたします。一度花ア先生に対して、「ご自身で書かれた方が早いのでは?」と質

問させていただいたことがありました。「若い人をいかに多く育てるか、つまり、若い人にいかに多く論

文を書くように指導するかが大事である」ということをお話いただき、医師というよりも教育者としての

花ア先生にご指導いただけたことは、幸運でした。


 それにもまして、私は大変恵まれていました。高知大学での動物実験が若い先生方と楽しい雰囲気

で継続できたこと、そして、社内でも一連の実験が、若手の教育の一環となり、実験を通して多くのこ

とを全員が学んでこれたことは大きな幸せでした。個人的には、一緒に実験に参加することで若手の

先生方との一体感を強く感じることがありました。会社側も、論文を書いて学位取得を目指したいとい

う思いを後押ししてくれました。職場の上司も、論文案を見て、多くの助言をくれました。論文の著者

に名前が載っていない同僚は、かなりの時間を使って、文章の論理性をすべて見直してくれました。

技術研究所に所属する後輩は、Reviewerがこだわる、データのばらつきについて、統計的な数字で

はなく、臨床上問題ないかどうかという観点で見るべきだ、というとても重要な示唆を与えてくれまし

た。これがなかったら、Reviewerの視点に飲まれて、Discussionが大混乱していたことでしょう。人事

部は、学位取得にかかる費用を、人事部が負担するという制度を示してくれました。Artificial Organs

のEditorを務める本村 禎先生には、論文のReviewerを引き受けていただきました。それにより、イン

パクトファクターの一段高い論文誌に挑戦し、もう一人のReviewerとの議論を自分の狙ったところに

抑えることができました。Reviewの途中では、もう一人のReviewerが強く主張する「このデバイスで

は、データがばらつかないことを検証すべき」というコメントに対して、本村先生からは、必要のない議

論はしない方が良い、という力強いお言葉もいただきました。Reviewerの意見に反対することなく、い

かに落ち着いた議論を展開するかという点に、細心の注意を払いました。さらには、これほどまでに

丁寧にReviewされたものはないと思うほどに、本村先生の献身的な文章校正が入り、修正を終える

のに時間がかかりました。これらのお導きのお蔭様で英文としてとても読みやすいものとなり、採択

に至りました。振り返ってみますと、大勢の方のご協力や助言、助力に囲まれて、そして、花ア先生

のご指導に恵まれて、ここまで来ることができました。本当にありがとうございました。


 最後に、今後の決意表明ですが、高知大学での学位取得をバネにして、企業活動を通して医療技

術の発展に少しでも貢献できるように、さらに努力を続けていく所存であります。このたびは、学位授

与に至るまでのご指導をいただき、ありがとうございました。今後も変わらぬご指導をお願い申し上げ

ます。
謹白    
2013年6月27日
塚本 雄貴        



(注釈) STG-55は新型人工膵臓で、STG-22が従来型(旧型)人工膵臓


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