高知大学 医学部 外科学講座 外科1





術中照射療法




   癌の治療には手術・抗癌剤治療・放射線療法・免疫療法など色々ありますね。患者さん

   の個々の状態によって、これらの治療を使い分けたり、組み合わせて治療をします。特

   に進行癌では多くはひとつだけの治療には終わりません。


   放射線療法の一つに術中照射療法があります。通常の放射線療法は週に 5 日程度、

   体の外から患部に放射線を少量ずつ当てます。術中照射療法はこのような体外照射と

   は異なり、字のごとく“手術中に放射線を照射する治療”です。つまり、手術中に癌に直

   接、あるいは通常の切除手術を施行した後、癌が残っている可能性があると思われる

   場所に直接、放射線をあてます。放射線は正常組織・臓器には有害な作用をします。手

   術中ですと放射線を当てたくない臓器を照射野からはずすことができるため、癌だけに

   狙いをつけて、体外照射の一回照射量の 10 倍近くの放射線を当てることができます。


   私たちは 20 年以上前から、色々な動物実験の後、進行した食道癌・胃癌・大腸癌・膵

   癌・胆道癌に対して 200 例以上に術中照射を施行してきました。術中照射が影響した重

   大な副作用は認めませんでした。動物実験では 8mm 位の腫瘍でも、一時的な効果はあ

   りましたが、必ず再発します。動物実験と臨床経験を通じて術中照射は、膵癌の患者さ

   んで、手術で肉眼的にすべて切除できた場合に特に効果がありそうだということが分かっ

   てきました。現在、切除後、術中照射を施行し、術後に対外照射と抗癌剤治療を追加し

   効果を上げています。


   私たちは全国の限られた専門施設のみで行われた、癌の放射線に対する感受性を増す

   新薬(増感剤といい、感受性が増加すると放射線の効果が良くなります)の開発治験に参

   加し、切除不能の進行膵癌に増感剤を使用して術中照射を施行しました。まだ最終結果

   は出ていませんが、以前から言われていた癌性疼痛のコントロールのみでなく、生存期

   間の延長に効果が得られているようです。近い将来、こういった新薬が使用可能となりま

   す。そうすれば進行膵癌症例において、さらに術中照射療法の占める役割が重要となっ

   てくると思われます。




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