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コラム -医療情報提供-

急性大動脈解離について

 大動脈とは心臓から血液を体に送り出す動脈の本幹で、体の中で最も太い血管です。この血管の壁は内側から内膜・中膜・外膜という3層構造でできています。大動脈解離とは内膜に亀裂が入り、ここから血液が入り込み、中膜が急激に裂けていく(解離する)病気です。突然発症し、血管の裂け方によっては動脈の破裂や重要な臓器への血流障害を来し、最悪の場合は死に至る恐ろしい病気です。
 発症年齢の平均は男性で69歳、女性76歳、病気の発生する頻度としては人口100万人あたり、年間30~40人程度とされています。
 病気が起こる原因は今のところはっきりしていません。高血圧や喫煙、過度のストレスなどは大動脈解離の発症リスクになりうると考えられています。
 症状としては突然、胸や背中の激痛が起こります。病状の進展につれて痛みの場所が胸から背中、腹部へと変化するのも特徴の一つです。また大動脈解離は大動脈から枝分かれする重要な血管の血流が障害されて多彩な症状を呈することもあります。脳虚血症状(意識消失、麻痺)や腸管虚血症状(腹痛、下血)、四肢虚血症状(手や足の痛み、冷感、しびれ)で発症したり、解離が心臓に向かって進展した場合は急性心筋梗塞や心臓の弁に異常をきたし心不全を起こしたり、心タンポナーデという状態(心臓の周りに出血して心臓が動けなくなる)になりショック症状を呈することもあります。
 確定診断には造影剤を使用したCT検査が必要となります。また、心臓超音波検査で心臓の動きの異常、弁の異常、心臓の周りの血液のたまりなどを調べる必要があります。
 治療に関しては解離の場所によって治療法が異なります。心臓から出てすぐの上行大動脈に解離が及ぶ場合は急死にいたる合併症を生じやすく、治療を急ぐ必要があります。急性大動脈解離の基本的な手術は、解離の原因となった最初の亀裂が入っている場所を人工血管で取り換えることです。上行大動脈に解離が及んでいない場合は内科的治療も可能です。血圧を下げることと安静が治療の主体です。なお、上行大動脈に解離がなくても手足や腹部臓器の血流障害がある場合は手術が必要になります。
 特に上行大動脈に解離が及ぶ急性大動脈解離では、1時間に1%ずつ死亡率が上昇すると言われています。この病気では、早急に適切な病院に到着できるかどうかで患者さんの生存率が大きく変わります。


◎ 著者プロフィール
氏名:弘瀬 伸行(ヒロセ ノブユキ)
所属:高知大学医学部附属病院 心臓血管外科
役職:助教

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