前のページに戻る

コラム -医療情報提供-

大腸癌の内視鏡手術

 近年、男女ともに大腸癌死亡率および罹患率が著しく増加しています。
 大腸癌は進行すると便に血が混じる、便が細くなる、下痢と便秘を繰り返すなどの症状が出現します。早期癌であれば内視鏡治療、進行癌は外科手術が必要となります。早期癌の中でも粘膜内にとどまっているもの(ステージ0)、粘膜の下の層である粘膜下層へわずかに広がっているもの(ステージI)が内視鏡治療の適応となり、リンパ節転移の危険性がないことが大原則です。
 内視鏡治療にはポリペクトミーや内視鏡的粘膜切除術(EMR)、また近年に行われるようになった内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)に主にわけられ、病変の大きさや形によって選択します。小さな病変であればスネアと呼ばれる金属製の輪を腫瘍の根元にかけ、この輪を締めて高周波電流を流して焼き切るポリペクトミーという治療を行います。こちらは外来での治療が可能です。EMRは病変の根元に生理食塩水(医療用の食塩水)などを注射して病変を浮きあがらせ、スネアで縛って通電し切除します。この治療法は、入院が必要な場合もあります。ESDは大きな病変などに対して根元に注射して病変を浮きあがらせてから、電気ナイフを用いて病変の周囲の粘膜を切開し、その後に病変の下の粘膜下層にもぐって病変を少しずつはがし取る方法です。切り取った腫瘍は顕微鏡で観察して、癌の深さや取り残しの有無や転移・再発の可能性などを調べます。その結果、追加で外科手術が必要となる場合があります。
 ESDという内視鏡治療は2012年4月に保険認可されましたが、高度の技術が必要なため高知県内では限られた病院で行われています。
 従来のEMRでは治療困難で外科手術を必要とした大きな病変の一括切除が可能となり、取り残しも少なくなりました。外科手術と比べると低侵襲で、術後早期から経口摂取が可能となります。入院期間は約1週間と外科手術に比べて短く、患者さんのQOL向上に寄与します。大腸は胃に比べて、管腔が狭い上に、ひだや屈曲が多く、壁が非常に薄いという特徴があります。このことから胃と比べ大腸ESDは手技的難易度が高く、重篤な偶発症の頻度も高いといわれています。しかし、正確なスコープ操作と良好な視野確保を心掛ければ、比較的安全な治療となってきています。
 大腸癌は、早期発見・早期治療により、助かる可能性のある病気です。大腸がん検診や大腸内視鏡検査を積極的に受けましょう。



◎ 著者プロフィール
氏名:羽柴 基(ハシバ モトイ)
所属:高知大学医学部附属病院 消化器内科
役職:医員

「コラム -医療情報提供-」に戻る


診療科目一覧に戻る ページの最初に戻る