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コラム -医療情報提供-

気管支温熱療法

 気管支温熱療法(別名、気管支熱形成術、気管支サーモプラスティ)は、2015年に保険適応になった、気管支鏡による新しい治療法です。
 喘息の多くの方は、吸入ステロイド薬と気管支拡張薬によりコントロール良好になりますが、十分量の治療薬を用いてもコントロールが不良な喘息を、重症喘息といいます。治療内容が不十分、吸入薬が上手に吸入できていない、自己判断で吸入を止めている、喫煙、原因となるペット・カビ・痛み止めの使用によりコントロールが不良になる喘息では、原因の除去や適切な治療の継続により症状は改善します。カビやハウスダストなどの吸入アレルゲンが原因の場合や、好酸球という気道の炎症をおこす細胞が多い場合には、抗体製剤注射の追加により、喘息発作を少なくできる可能性があります。
 一方で、薬だけでは治療効果が乏しい重症喘息に対して、気管支温熱療法の適応があります。気管支鏡は、肺癌や間質性肺炎などの診断のために用いる、気道に入れる細いカメラのことです。気管支温熱療法は、特殊な器具で気道を温め、肥大した気道平滑筋を減少させる治療法です。治療の適応は、高用量の吸入ステロイド薬及び長時間作用性気管支拡張薬で治療していても、喘息症状がコントロールできない、18歳以上の重症喘息患者です。治療目標は、喘息症状の緩和や喘息発作の減少であり、残念ながら完治を目指すものではありません。実際には、治療の3日前から治療翌日までステロイドを内服し、治療の前日に入院し、処置当日は、少し眠くなる麻酔薬と咳を沈める薬で鎮静した状態で、気管支鏡を用いて、専用のカテーテルという電極で、65℃で10秒間づつ気管支壁を温めていきます。1回の治療時間は約1時間で、治療は3週間以上の間隔をあけて、3回の入院に分けて行います。合併症として、ほぼ全員で一過性に気道が浮腫むため、喘鳴・咳・呼吸困難がでて、肺に浸潤影がでたりしますが、おおむね1週間以内に改善します。
 他には、カテーテルによる出血や、一過性の気道感染を起こすことがあります。治療効果は、早い人では1回目の治療終了後3週間以内に効果を実感できる方もいますが、全ての患者さんに治療効果が出るわけではないのも事実です。1回の治療費用は、入院期間により差はありますが、入院費も含めると10割負担で約50万円かかります。
 しかし、保険適応であり、更には収入や年齢に応じた高額療養費制度を活用したり、個人でご加入の医療保険がある場合は、自己負担額を軽減出来ます。重症の気管支喘息で、気管支温熱療法や抗体製剤の使用に興味のある方は、主治医の先生を介して大学病院を紹介受診してください。


◎ 著者プロフィール
氏名:大西 広志(オオニシ ヒロシ)
所属:高知大学医学部附属病院 呼吸器・アレルギー内科
役職:講師

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