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コラム -医療情報提供-

人生の最終段階における医療・ケアを考える
アドバンス・ケア・プランニング

 命にかかわるような病気や怪我で、今後、どのような治療、ケアを受けるか、決断を迫られることがあります。
 2018年3月、厚生労働省は「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」を改訂しました。医療や介護に関わる専門職は、このガイドラインに沿って良い医療・ケアを提供するように求められています。具体的には、まず、医師等から適切な情報提供、説明をおこないます。ご本人が意思表示できれば、よく話し合って医療・ケアの方針を決めます。ご本人が意思表示できない場合、ご家族など周囲の方が、ご本人の意思を推定し、それを尊重します。また、推定できない場合は、ご家族や医療・介護従事者がご本人にとって最善と思うことを話し合って決めます。すなわちご本人の意思がとても大切なのです。しかし、命の危険が迫っている段階では70%の方が、自分で意思決定したり、人に伝えたりすることができる状態でないと言われています。
 自分が意思表示できないときに備え、どのような医療・ケアを受けたい・受けたくないかを記載する書類を「事前指示書」といいます。最近は、エンディングノートという終活のためのノートが普及しています。これは、事前指示書の内容に加えて、大切な方へのメッセージや、財産のこと、葬儀のことなどを書いたりするものです。
 しかし、海外の研究では、事前指示書の有無によって、受けた治療内容、入院期間、医療費、家族の満足度などに差がなく、効果が無かったという結果が出ています。事前指示を記載して時間が経ち今も同じ意思か確認できない、複雑な医療的状況をすべて事前に想定できていない、その事前指示がされた意図がわからない、などにより家族が判断できず、指示通りにおこなわなかったというのが有効でなかった理由です。
 こうした点を克服するために、ご家族などや、信頼している医療・介護従事者と繰り返し話し合う、アドバンスケアプランニング(人生会議)が注目されています。事前指示書を書くだけでなく、家族や主治医にも見せ、繰り返し話し合い、自分の人生観、価値観を理解してもらうことが大切なのです。
 自分の最期を考えるというのは、後ろ向きで暗い気持ちになるように思う方もあるかもしれません。しかし、最期を考えるというのは、それまでどう生きるか、自分の人生をどうしたいのか、という前向きなことなのです。


◎ 著者プロフィール
氏名:阿波谷 敏英 (アワタニ トシヒデ)
所属:高知大学医学部 家庭医療学講座
役職:寄附講座教授

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