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コラム -医療情報提供-

直腸がんと肛門温存手術

 大腸がんは男女ともにかかることが多いがんです。ここでは特に肛門近くにある直腸がんと手術、術後の機能障害について説明したいと思います。
直腸の働き
 食べたものは、胃で消化され、数メートルの長さがある小腸で栄養の吸収を行います。続いて結腸といわれる部分で、水分の吸収を行いながら、骨盤にある直腸に便が運ばれます。直腸は、消化管の最後の部分で、肛門につながっています。直腸の主な働きは、一時的に便を蓄えておき、適切なタイミングで便を排出することです。
直腸癌について
 結腸と直腸をあわせて大腸と呼びますが、大腸癌は、男女ともに死亡率、罹患率の上位にあります。がん検診で指摘されることも多いですが、進行すると、血便や便の回数が変化する、下痢や便秘になるなどの症状が出現します。いつもとは違う排便習慣が続く時などは注意が必要です。
治療と手術
 ごく早期の直腸がんに対しては内視鏡的な切除、全身転移がない場合には手術、あるいは放射線療法を組み合わせた手術、転移が多く根治が困難な場合には抗がん剤治療を行います。手術としては、癌と周辺の正常な部分を一緒に切除します。正常な部分を切除するのは、肉眼では見えないような小さながん細胞が周辺に広がっている可能性があるためです。切除した腸はそのままでは困りますので、残った直腸とつなぎ合わせます。
 直腸がんが肛門に非常に近く、肛門を一緒に切除しなければならない場合は、永久の人工肛門を作ることになります。最近は、ストーマと呼ばれることが多いと思いますが、この場合には左の下腹部に作ります。肛門の機能が十分温存ができると考える場合には吻合を行います。様々な手術道具の開発によって、以前よりも肛門の温存が広がってきました。術後の機能障害としては、便の回数が増えたり、一回あたりの便の量が減ったりします。また、排ガス(おなら) と思って出したところ、間違って便が出てしまうといったことや、便が我慢できない、あるいは、気がつかずに出てしまう便失禁という状態になることもあります。症状は、6ヶ月から12か月目にかけて徐々に改善していきますが、完全に元の状態に戻ることは少なく、食事や生活習慣の工夫、便の性状をコントロールする内服薬などで、生活の質を維持してもらうようにしています。どの部位に発生した場合でも、早く見つかったほうが治療には有利ですので、検診(便潜血検査)や内視鏡検査を受けて早期発見をすることが重要だと考えられます。


◎ 著者プロフィール
氏名:前田 広道 (マエダ ヒロミチ)
所属:高知大学医学部附属病院 外科(一)
役職:特任講師

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