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コラム -医療情報提供-

手術により聞こえを取り戻す

 聞こえが悪くなる状態(難聴)は大きく分けて2つのタイプがあり、一つは「伝音難聴」と言って、耳の穴や中耳に病気があって、難聴になるタイプです。もう一つは「感音難聴」と言って、内耳の細胞や聞こえの神経細胞に障害があって、聞こえが悪くなるタイプの難聴です。
 伝音難聴にも様々な病気があり、もっとも多いのは中耳炎です。中耳炎は、その中でもいろいろなタイプがあり、治療法が異なります。中耳に水がたまる滲出性中耳炎が薬で治らないときは、鼓膜にチューブを入れて、水がたまらないようにします。鼓膜に穴があいてときどき耳だれが出る慢性中耳炎の場合は、炎症を除去して鼓膜をふさぐ手術をします。中耳に炎症がない場合は、外来で鼓膜をふさぐ手術も可能です。最近、手術で鼓膜を再生させる薬もできました。しかし中耳炎の中には、真珠腫性中耳炎というのがあって、これはやっかいな中耳炎です。ほうっておくと難聴がすすむため、手間をかけた手術が必要です。いずれも手術により聞こえを良くできる可能性がありますし、中耳炎の場合は、耳だれを止めることができます。最近は、軽症の場合は、内視鏡で手術ができるようになり、患者さんの負担が減りました。
 中耳炎以外には、けがで中耳の音を伝える耳小骨が外れたり、生まれつき耳小骨が欠けている耳小骨離断という病気があります。また、耳小骨が硬くくっついてしまうため聞こえが悪くなる耳硬化症という病気もあります。これらも手術で聞こえをよくできる病気です。このような手術で、どうしても聞こえがよくならなかったり、生まれつき耳の穴がふさがっている患者さんは、人工中耳という機械を埋め込む手術もあります。
 一方、感音難聴の治療は、主に、補聴器によるものになります。年をとって聞こえが悪くなる老人性難聴はこの代表的な病気です。しかし、補聴器を使っても十分に聞こえない人は、人工内耳という機械を埋め込み、聞こえを回復させることができます。約3時間の手術と1週間程度の入院が必要です。生まれつき聞こえが悪い赤ちゃんの場合でも、1歳になったら埋め込むことができます。
 難聴は生活の質を下げるだけでなく、社会的孤立を招き、心身にも悪影響をもたらします。手術により聞こえが回復できる病気がいくつもあります。まず、近くの耳鼻咽喉科で手術が可能かどうかみてもらい、聞こえがよくなる可能性と手術の負担をよく聞いて手術を受けるかどうか決めて下さい。


◎ 著者プロフィール
氏名:小林 泰輔(コバヤシ タイスケ)
所属:高知大学医学部附属病院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科
役職:准教授

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