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コラム -医療情報提供-

高齢者における嚥下(飲み込み)の障害

 食べることは、人が生きていくために必要なことであり、また生きていく上での楽しみでもあります。しかし、高齢になると飲み込みにくさの症状が出てくることがあります。これは、飲み込みの機能を担う筋肉が衰えることにより、飲み込む力が弱くなることにより起こります。
 飲み込むことを医学的には「嚥下」といいます。一回の嚥下に要する時間はほんの数秒ですが、その間に口、のど、食道にかけて、色々な場所が一斉に動く必要があります。何故なら、のどは呼吸をする時の空気の通り道でもあるため、嚥下する瞬間には食べ物が入り込まないように気管の入り口を閉じて、その機能を一時的に停止させる必要があるからです。また逆に、普段食道の入り口は閉じている状態で、嚥下の瞬間に開きます。さらにそのタイミングにあわせて、のどの筋肉が収縮して、食べ物を食道の入り口に押し込むような働きをします。このように、安全かつスムーズに嚥下するためには複数の筋肉が一斉に連動して動く必要があるのです。
 のどの筋肉も歳を取ると徐々に機能が衰えてきます。すると、食物を押し込む力が弱くなったり、食道の開き具合が悪くなったりして飲み込みにくさを感じるようになります。また、呼吸を停止させるタイミングが間に合わず、気管に食べ物が誤って入り込んでしまうこともあり、これを「誤嚥」といいます。多くの場合にはむせて誤嚥した食べ物を吐き出すことが多いですが、のどの感覚が鈍くなっている場合には誤嚥をしても気づかず、咳が自然に出ないことがあります。その結果、誤嚥した物が気管支や肺に入り込んだまま炎症を起こし、肺炎にまで悪化してしまうこともあります。
 もし、飲み込みにくさや違和感を覚えた場合、気づかないうちに肺炎を起こす前に、嚥下の障害が進んできていないかをチェックすることが大事です。嚥下障害が疑われるような自覚症状としては、「飲み込みにくい」「むせやすい」などのほか、「食事に時間がかかる」「食べていると疲れてくる」「食後に痰が出る」なども挙げられるほか、体重が減少することもあります。
 のどの症状に気を付ける他、口腔内を清潔に保つ、身体の筋力や呼吸機能を保つために適度な運動をする等の生活習慣も大切です。また、飲み込みにくさが進んできた場合には、食事を摂る際にむせにくいよう姿勢を調整したり、軟らかい食事やトロミなど、噛みやすく飲み込みやすいよう食事を調整すると良いでしょう。


◎ 著者プロフィール
氏名:長尾 明日香 (ナガオ アスカ)
所属:高知大学医学部附属病院 耳鼻咽喉科・頭頚部外科
役職:助教

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