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コラム -医療情報提供-

大腸がんの肝転移

 大腸がんは、大腸にできるがんのことですが、男女ともにとても多いがんの一つです。大腸は水分やナトリウムなどの電解質の吸収を行いながら固形の便を形成していきます。肛門に近い大腸は直腸と呼ばれますが、そこでは一時的に便を蓄え、適切な時期に排便を行います。大腸にがんができると、大腸の正常な働きが邪魔をされてしまい、血便、便の回数が変化する、下痢や便秘になるなどの症状が出現します。そのほかにも、血流に乗って、がんの細胞が移動して、移動した先で大きくなることがあります。これを血行転移と呼びます。大腸がんの転移で多いのは、肺と肝臓です。特に腸からの血流は心臓に戻る前に肝臓を経由しますので肝転移が起こりやすいと考えられています。大腸がんの肝転移は、多くの場合症状が出にくく、CT画像などの検査で見つかることが多いです。

 肝臓では、体のエネルギーである糖をグリコーゲンと呼ばれる形で貯蔵して必要なときに放出する役割や、アンモニアなどの老廃物、毒素を分解したり、胆汁といわれ脂肪分の吸収に関連する物質を産生したり様々な役割を持っています。ただ、肝臓は非常に予備能力が高く、もともと正常な肝機能を持っている場合には、3分の2程度を切除しても大丈夫といわれています。したがって、肝転移によってすぐに肝臓の機能が果たせなくなることができなくなるということはほとんどありません。

 肝転移の治療は大きく分けて二つあります。一つは化学療法です。肝転移が多数ある場合、重要な血管の近くに存在しているために切除ができない場合に化学療法を行います。化学療法の目的は、腫瘍が大きくなり通常の生活が送れなくなることがないように、腫瘍自体の成長を遅らせることです。したがって抗がん剤の副作用によって日常生活が送れなくなることがないように工夫しながら治療を継続します。最近ではほとんどの場合が、外来で治療を継続されています。もう一つは、手術により肝転移を取り除くことです。肝転移の個数が限られていて、切除に耐えられる肝臓の機能がある場合に手術が行われます。化学療法では、転移を治しきることが困難ですので、根治を目指して肝切除を行うことが多くなっています。逆に根治を目指すことができない状況で肝切除を行うことはほとんどありません。また、大腸がんの肝転移に対する手術療法の有効性は多くのデータが示していますが、他のがん種、例えば膵がんや胃がんなどでは異なることもありますので注意が必要です。

 大腸がんの肝転移に対する切除の可能性については、厳密な決まりがありません。肝転移の起こる場所や個数などが多彩で、もともとの癌の性質なども加味して考えていく必要があります。大腸癌そのものは大腸を専門とする外科医が手術を担当することが多く、肝転移に対する手術は肝臓専門外科医が担当することが多くなっています。また、根治する確立を高めるために肝臓の術前術後に化学療法を行うこともあり、患者さんと各治療チームの連携が必要と考えられます。胃や腸では腹腔鏡の手術をすることが多くなっています。肝臓の手術に関しては限られた施設ですが、腹腔鏡で行うことも増えてきています。肝転移の部位によっては腹腔鏡の肝切除術ができないこともありますが、傷が小さく術後の回復も早く有効です。ただし手術において重要なことは、しっかりと根治を目指した手術ができることですので、専門家との十分な相談が必要になると思います。

 どのような場合でも、早く見つかったほうが治療には有利ですので、検診(便潜血)を受けていただくことが重要だと考えられます。また、大腸がんの手術療法後には、定期的に病院を受診し、再発した場合にも根治切除の可能性がありますので、早期の再発の発見がとても重要だと考えられています。


◎ 著者プロフィール
氏名:前田 広道(マエダ ヒロミチ)
所属:高知大学医学部附属病院 外科(一)
役職:特任講師

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