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コラム -医療情報提供-

脳梗塞の受診遅れ ひと晩様子見ても大丈夫?

 脳梗塞は生命を脅かすのみならず、寝たきりや半身不随の原因となります。脳梗塞発症後は脳組織の損傷が時間とともに進行するため、発症早期の医療機関受診と治療の開始が極めて重要です。今回は、脳梗塞の受診遅れを防ぐために気をつけたい点を紹介します。

 脳梗塞は脳卒中の約7割を占める頻度の多い疾患で、大小の脳血管が閉塞して脳組織が壊死することによって生じます。脳梗塞は脳出血、くも膜下出血といった他の脳卒中に比べて受診が遅れがちですが、その主な原因として脳梗塞はほとんどの場合頭痛が起こらないことが挙げられます。脳梗塞の特徴は、比較的急激に起こる「顔や腕の片側の運動障害」「言語障害」であり、たとえ頭痛がなくても緊急の脳疾患と考えて一刻も早く救急車を呼んでいただきたいです。

 脳梗塞は1日24時間のうちいつでも発症しうるため、医療機関の診療時間外の夜間に発症することも多く、この際、「あくる朝に医療機関が開くまで様子を見よう」というアプローチは非常に危険です。なぜなら、脳梗塞の症状を急性期に改善させる治療法として、点滴による血栓溶解療法、カテーテルによる血栓回収療法の二つがありますが、血栓溶解療法は発症4.5時間以内、血栓回収療法は概ね8時間以内に行う必要があるため、発症から一晩おいてから受診する患者さんには使うことができません。そのため、一晩待った患者さんはより重い後遺症を残すこととなります。さらに、早期の集中治療が必要な重症脳梗塞では、重篤な神経症状や意識障害のために患者本人に受診能力がありません。この場合は同居者や目撃者の役割が重要で、患者さんが独居であったり、たまたま一人でいる時に発症したり、同居者や目撃者がいても患者さんの症状を緊急事態として扱わなかったりすると、容易に一晩以上の受診遅れをきたします。

 そうは言っても、自分の大切な人が急に重篤になれば心理的にパニックに陥ることもあり適切な受診行動を取れないことも考えられます。最近の研究によれば、発見者のみ、もしくは発見者と患者のみで意思決定した時に比べて、他に居合わせた人や電話連絡を受けた人といった第三者が意思決定に関わると、早期受診につながることが判明しました。同居者、目撃者だけで決断できない場合、ひとまず誰か冷静な第三者に相談することを推奨します。

 高知県の中等度から重症の脳梗塞患者の調査によれば、約40%の患者は発症4時間を超えてからの病院到着となっており、さらにこの4時間を超えた人のうち7割は受診までが一晩以上経過していました。「脳梗塞の主なサインは体の片側の運動障害や言語障害で頭痛を伴わないこと」「救急受診を迷ったら誰かに相談すること」を念頭に、一晩様子を見ないで早く受診して頂きたいと思います。


◎ 著者プロフィール
氏名:福田 仁(フクダ ヒトシ)
所属:高知大学医学部附属病院 脳神経外科
役職:特任講師

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