前のページに戻る

コラム -医療情報提供-

泌尿器科疾患について

 男性でも、女性でも、生まれてから、お亡くなりになるまで、おしっこ・つまり尿をします。その尿のお悩みを解決できる我々泌尿器科は、みなさまにとって、まさに、生涯の良きパートナーでありたいと考えています。

 まず、尿を作る臓器である「腎臓」から、尿が流れる道の始まりで、階段の踊り場のような「腎盂」、そして、「尿管」というパイプを通って、「膀胱」という袋に尿が貯まります。そして、「尿道」を通って尿を排出する、この一連の尿の流れ道である尿路と、男性の生殖器である 「前立腺」、「精嚢」、「精巣」、「陰茎」などに発生する病気を専門的に診断した上で、薬で治すという内科的な特徴と、手術で治すという外科的な特徴を兼ね備えた診療科、それが泌尿器科です。

 泌尿器科は、前立腺癌、膀胱癌、腎臓癌などの泌尿器癌をはじめとして、尿の出方や回数などの異常を診療する「排尿機能」、尿が漏れる尿失禁や 骨盤内の臓器膀胱や子宮が飛び出してくる臓器脱などを診療する「女性泌尿器科」。子供さんの尿路や性器における先天的な病気などを診療する「小児泌尿器科」、膀胱炎・尿道炎や腎盂腎炎などを診療する「尿路・性器感染症」、尿路の内視鏡や腹腔鏡、さらには手術を助けてくれるロボットなどを用いて診療する「泌尿器内視鏡学」、腎臓・尿管・膀胱などにおける結石を診療する「尿路結石」、「腎不全、透析、腎移植」、さらには、勃起障害EDや男性更年期などを診療する「男性学」など、数多くの専門領域を有しています。

 ご存知の通り、日本の高齢化は急速に進んでいます。高知県でも、全国におよそ10年先行して高齢化が進んでいると言われています。そのような高齢社会の健康問題として、泌尿器科の病気は重要な位置を占め、かつ泌尿器科の病気にかかられる患者さんの数は、増加の一途をたどっています。しかし、残念ながら、泌尿器科の病気に立ち向かう高知県の泌尿器科専門医は、およそ70名と少ないのが現状です。今後、専門医の育成が急務といえます。高齢化に伴う泌尿器科の病気、なかでも、近年急激に増加し、毎年、年間およそ10万人がかかっている前立腺癌、喫煙たばこが原因である膀胱癌、自覚症状がなく検診や他の病気の治療中に偶然発見される腎臓癌など、泌尿器癌の診療においては、数多くの診断法や治療法が開発され、臨床使用されています。磁気と電波を使った画像検査であるMRI、なかでも3テスラという高性能なMRIや全身の癌を一度に調べることが出来るPETといった新しい画像検査による癌の早期診断、膀胱癌を光らせることで確実に確認しながら手術を行う光線力学診断、ロボットを使って癌の摘出手術を行うロボット支援手術も行われています。局所麻酔を行い、背中から針を刺して腎臓癌を凍らして癌細胞を破壊する凍結療法。また、小さい数ミリのマイクロカプセルや針金状の線源を、前立腺に直接差し込んで、癌に放射線を当てる組織内照射法など、数多くの精度の高い検査法や体に優しい治療法があります。さらには、分子標的治療薬、免疫チェックポイント阻害薬など、これまでの抗癌剤とは全く異なる新しいお薬を用いた治療も使えるようになりました。

 また、高齢化に伴い、前立腺肥大症、過活動膀胱、尿失禁などの排尿機能に関わる病気も急激に増加しています。排尿機能に関わる病気は、直接 命にはかかわらないものの、生活の質QOLを大きく左右する重要な健康問題であり、専門的立場としての泌尿器科診療が必要です。この排尿機能に関わる病気においても、新しいお薬による治療や体に優しい手術で、治すことができるようになりました。特に、近年では、女性泌尿器科と言われる尿失禁や臓器脱などの女性の骨盤内の病気に対して、積極的に診療を行っています。尿が漏れる「尿失禁」と言っても、みなさんが同じ原因で同じお薬を飲めば治るというものではありません。尿失禁にはいくつかの種類があり、どの種類に当てはまるかを正しく診断し、生活指導や体操、お薬、手術などから適切な治療法を選択することが重要です。さらに、骨盤内の臓器である膀胱や子宮が飛び出してくる臓器脱に対して、これまではペッサリーという専用の器具を用いる保存的な治療が主でしたが、飛び出てくる臓器を人工の膜で支える手術や、腹腔鏡を用いて、お腹の中で、飛び出てくる臓器を引き上げ、背骨に固定する手術が行えるようになり、数多くの患者さんに、大変ご満足いただいています。

 このように、泌尿器科は、尿路や男性生殖器の多種多様な病気に対して、数多くの選択肢をご用意しています。年齢、性別、社会的背景などを考慮した患者さんが希望される最適の診断方法、治療方法をご提案します。まずは、我々泌尿器科専門医にご相談ください。


◎ 著者プロフィール
氏名:井上 啓史(イノウエ ケイジ)
所属:高知大学医学部附属病院 泌尿器科
役職:教授

「コラム -医療情報提供-」に戻る


診療科目一覧に戻る ページの最初に戻る