教授挨拶

パンくず用のホームアイコン
松下教授プロフィール写真
高知大学医学部 脳神経内科学教室
教授 松下 拓也 
Takuya Matsushita

ご挨拶

 2022年12月1日より高知大学医学部脳神経内科学講座の教授に就任いたしました松下拓也と申します.

 脳神経内科学(神経内科学)は日本では1963年に始まった比較的新しい医学分野であり,高知大学では前任の古谷博和先生を初代教授として2013年に新たに設置された,まだ若い診療科です.

 日本では世界に先駆けて超高齢化時代へと突入していています.これは公的医療システムの構築とさまざまな分野での医学の発展、予防医学が相互に噛み合った結果として成し遂げられました.今後はその先に向けて,精神的・身体的な活動性を長期に保っていくこと,またそれに制限が避けられないときに,いかにして社会的な接続性を保ち生活の質を保持していくかが重要な課題となっています.

 脳神経内科は精神的・身体的障害の診断・治療、そしてケアにとりくむ診療科です.「治らない科」と揶揄されることも多かった脳神経内科ですが,治療に使える武器は大幅に増えました.私が専門としている神経免疫疾患でも多数の分子標的薬が使用可能となり,より少ない副作用で身体的障害を抑えることが可能となりました.核酸医薬の発展は筋ジストロフィーや脊髄性筋萎縮症といった遺伝性疾患の治療を可能にし,これからさらに幅広い領域への応用が期待されます.片頭痛やてんかんといったいわゆるコモンな疾患についても患者さんのQOLを高めることのできる治療選択肢が増えています.

 一方で脳神経内科は多くの難治性疾患を扱う診療科でもあります.2022年現在の指定難病は338疾患あり,そのおよそ4分の1を神経筋疾患が占めています.患者さんの生活をサポートするため,多職種が協働しておこなう包括的ケアにおいても脳神経内科は主要な役割を担っています.

 今の時代には神経筋疾患の診断と治療,そして包括的ケアに総合的に関わることのできる脳神経内科医が強く求められており,とくに高知県においてはその人材の育成が喫緊の課題です.高知県の脳神経内科診療の拡充のため,若い人たちとともに切磋琢磨して,患者さんに高い生活の質を提供できるよう邁進してまいります.

 また,さまざまな治療の進展は長年の神経筋疾患研究の積み重ねの上に築かれたものです.いま脳神経内科では研究と臨床の相互作用が活発化しており,日々新しい発見とその臨床応用が経験できる分野になっています.私たちとともに臨床・研究の両面で脳神経内科の明日を切り開いてくれる若い人たちを常に歓迎しています.
ページ頭へ