高知大学医学部 看護学科 臨床看護学講座 溝渕研究室

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ユズ果汁入りゼリーの腸内環境改善効果が臨床試験で証明された!

 前回のトピックスで、ユズ果汁に含まれる有機酸(クエン酸、リンゴ酸)に腸内善玉菌である乳酸菌を増やす効果があることを報告しました。そこで、腸内環境改善を目的としたユズゼリーを開発し臨床試験を行ったところ、アンケートの結果から便秘が改善することがわかりました。今回は、その効果を客観的に評価するための臨床試験をおこないました。臨床試験は、高知大学医学部倫理委員会の承認を得ています。

臨床試験は、『プラセボ対照二重盲検ランダム化並行群間比較試験』で行いました。

 『プラセボ対照』とは、見た目、香りから、ユズゼリーとは見分けがつかず、機能をもたないプラセボゼリーを準備し、ユズゼリーと比較することを意味しています。ユズゼリーには、スティック1包(18g)あたりに馬路村農業協同組合で生産されたユズ果汁が5g含まれています。また、このゼリーにはユズ果汁の効果を増強する目的で、水溶性食物繊維であり、腸の動きを活発にするβ-グルカンが添加されています。一方、プラセボゼリーには、ユズ果汁、β-グルカンが含まれていません。ユズの香りがする香料を含んでいますので、ゼリーを食べている研究対象者は、自分がどちらのゼリーを食べているかわかりません(図1)。

臨床試験〜プラセボ対照試験〜

(図1)

 『二重盲検』とは、研究対象者側も臨床試験を行う側もどちらのゼリーを食べているかわからない環境下で行う試験です。ユズゼリーとプラセボゼリーはスティックに印字された識別番号で判別できますが、その識別番号は臨床試験に参加していない第三者が研究終了時まで管理しています。『二重盲検』は、対象者の判断、行動、心理などや研究者の観察結果に影響を及ぼさないようにするための方法です。
 『ランダム化』とは、どちらのゼリーを食べるかを研究対象者および私たちが決定するのではなく、乱数表で決められるということです。
 『並行群間比較試験』は、対象者をユズゼリー群とプラセボゼリー群に分け、各群同時に一定期間摂取していただき評価する試験です。
 以上より、今回行った『プラセボ対照二重盲検ランダム化並行群間比較試験』は、臨床試験のなかでも信頼性が高い試験です。

対象と方法

 最初に排便日誌で1週間の排便回数が2~5回の人を便秘傾向ありと判定し対象者としました。研究対象者は決められたゼリーを朝食後1包、夕食後1包を4週間食べていただき、毎日排便日誌を記載していただきました(図2)。排便日誌の内容は、排便回数、排便量、便形状、便の硬さ、便の色、便のにおい、排便後の感覚などです。

排便日誌

(図2)


 排便量は、鶏卵のモデルを研究対象者に配布し、鶏卵の大きさに換算した個数で評価していただきました(図3)。

排便量の計測方法

(図3)


 その結果、ユズゼリーを食べた対象者もプラセボゼリーを食べた対象者も排便回数が顕著に増加しました(図4)。この原因は、ゼリーを固めるために使用した食物繊維であると思われます。この食物繊維はユズゼリーとプラセボゼリーに同量含まれています。

1週間の排便回数

(図4)


 排便量もユズゼリー、プラセボゼリーともに、摂取前に比較して顕著に増加しましたが、ユズゼリーがプラセボゼリー以上に排便量の増加がみられました(図5)。この違いが、ユズ果汁に含まれる有機酸(クエン酸、リンゴ酸)やβ-グルカンの腸内環境の改善効果によるものと考えています。

1週間の排便量

(図5)


 以上、ユズゼリーの便秘改善効果を証明するために『プラセボ対照二重盲検ランダム化並行群間比較試験』を実施しました。その結果、便秘傾向の健常人がユズゼリーを食べることで、排便回数、排便量が顕著に多くなることが明らかとなりました。特に排便量は、プラセボゼリーと比較しても顕著に多くなりました。

 ユズゼリーは、毎日食べていただけるように、飽きのこない美味しいゼリーに仕上がってすでに販売されています。その商品は「ゆずちゃんゼリー」です(図6)。

ゆずちゃんゼリー

(図6)


 この「ゆずちゃんゼリー」を機能性表示食品とするために、3つの臨床試験の結果と、ユズ果汁とβ-グルカンについての基礎実験結果をもとに、馬路村農業協同組合が届出の準備をしています。機能性表示食品は効果・効能を商品に明示することができます。このユズゼリーは「お腹の調子を整える」と表記することが可能となります。

 尚、この臨床試験は、「こうち農商工連携新商品等開発推進事業費助成金」によって行われました。

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