研究計画

高知大学 プロジェクト「黒潮圏科学による地域社会の温暖化適応策の構築」ホームページ

全体計画

以下の4つの局面に絞り、各々への温暖化の影響と人為的インパクトを調査・検証し、その適応策を研究する。

 

(1)サンゴ群集生態系の保全と再生:

白化現象によるサンゴ群集生態系劣化のリスクの高まりに対し、人間の生活や経済活動に起因する陸域からの物質流入がサンゴ礁の劣化に拍車をかけているという実態を重視し、これへの対策を検討する。

(2)河川のアユ資源の保全と再生:

高知県では河川のアユ資源の劣化が顕著である。原因のひとつに想定される。温暖化は不明な部分が多いため、河川から沿岸域に至る領域で、アユやプランクトンの生態を精査し、アユ資源を保全・再生する仕組みを検討する。

(3)温暖化による藻場生態系の変動のモニタリングと漁業生産への影響の検証:

藻場とそこに生息する魚類、プランクトン類を定期的に調査することを通して、このような変化の行き着く先を予測し、周辺の漁業資源に及ぼす影響や対応策(新しい漁業資源の開発や藻場造成など)を検討する。

(4)食料生産における温暖化適応策の検討:

高温による収量や品質への影響が特に問題となっている水稲と果樹を取り上げ、温暖化が収量や品質に及ぼす影響を明らかにするとともに、温暖化条件の下で水稲や果樹の多収、高品質、安定生産を目指す上での対策を検討する。

(5)総括:

温暖化に適応した持続的な地域社会構築のための方途について、理論的・実証的に検討する。

 

平成23年度に実施する事業内容

(1)サンゴ群集生態系の保全と再生:

温暖化がサンゴ群集生態系の劣化に及ぼす影響と陸域から人為的インパクトを調査し、保全への対策を検討する。23年度は地域の合意形成を目指して、シンポジウムを地元で開催する。

(2)河川のアユ資源の保全と再生:

高知県の河川におけるアユやプランクトンの生態を精査して温暖化の影響を解明し、アユ資源を持続的に利用できる仕組みを検討する。23年度は、海温の解析も並行して実施する。

(3)温暖化による藻場生態系の変動のモニタリングと漁業生産への影響の検証:

温暖化が藻場に与える影響を黒潮圏のフィールドで捉える。23年度は、衰退傾向にある藻場再生の対策及び藻場周辺域の環境変化が沿岸魚類相や漁業に及ぼす影響について検討する。

(4)食料生産における温暖化適応策の検討:

温暖化が食糧生産に与える影響を解明する。23年度は、水稲栽培の方法の違いが米品質に及ぼす影響、休耕水田への熱帯産作物の導入の可能性や果樹のみつ症の対策を検討する。

(5)総括班:

全体の成果を相互に関連性を持たせつつ、まとめあげる。また、不足する分析については当初の構成員以外のプロジェクトへの参画を依頼し、一貫性をもった研究成果を目指す。このほか、成果を1つのまとまりとして対外的に公表する場づくりを行う。

 

平成22年度に実施する事業内容

(1)サンゴ群集生態系の保全と再生:

与論島において、地下水やサンゴ礁海域に富栄養化などの影響を及ぼしていると考えられる要因の実態の調査やそれらが海域や地下水に及ぼす影響を緩和するための方策・政策の検討を引き続き行う。また、サンゴの保全策を実施するために必要な、地元地域社会の合意形成の促進方法を検討すると共に、サンゴ=褐虫藻共生の存立条件やストレス負荷等の自然科学的解析を試みる。

(2)河川のアユ資源の保全と再生:

温暖化以外の要因についてもヒアリングなどの手法を用いて検討するとともに、アジアの熱帯域にアユの実態を観察し、その生態から温暖化への適応策の糸口を探る。

(3)温暖化による藻場生態系の変動のモニタリング:

高知県沿岸域の藻場が今後どのように変化するかを推定するとともに、四万十川流域ではスジアオノリの温暖化対策の検討に着手する。

(4)食料生産における温暖化適応策の検討:

高温登熟性の品種間差異の要因について検討する。また、果樹作についても果実温度を下げるため方策を検討する。

(5)総括班:

全体の成果をとりまとめるための研究支援及び研究を推進する。また、成果の公表をシンポジウムやセミナー通じて行う。

 

平成21年度に実施する事業内容

(1)サンゴ群集生態系の保全と再生:

水質調査、及び、陸域の経済活動及びサンゴ礁の利用実態調査を行う。

(2)河川のアユ資源の保全と再生:

河川上流域における環境変化の調査、アユの生活史と資源変動に関わる調査などを展開する。

(3)温暖化による藻場生態系の変動のモニタリング:

藻類に関する野外生態調査・培養試験などにより、藻類生態の基本的な情報収集や調査研究を実施する。

(4)食料生産における温暖化適応策の検討:

温暖化傾向が水稲生産、及び、露地作果樹に及ぼす影響を明らかにする。