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研究活動
研究活動の概要
■地球環境システムの理解
堆積物は過去〜現在の
地球環境変動の情報を記録している
地球環境変動の周期性や
変動の振幅タイミングなどの実態解明
近未来の地球環境予測
地球環境の変動は、太陽活動、大気ー海洋ー陸域の物質循環、生態系変動などが相互に関連する複雑な現象です。海洋コアを用いた過去の地球環境変動の駆動メカニズムやプロセスの解明は、自然状態における地球環境の姿を理解することにつながり、近未来の気候変動を予測するうえで大変重要な鍵となります。





■堆積物が示す環境情報
海洋は、二酸化炭素などの温室効果ガスの吸収域として重要です。大気から海水中に溶け込んだ二酸化炭素は、光合成によって植物プランクトンに取り込まれます。作り出された有機物や遺骸(殻)は、その後、沈降しながら酸化分解し、二酸化炭素や栄養塩を中・深層水に付加します。また、有機物や遺骸の一部は深海底に埋積し、堆積物中に保存されます。陸起源物質やエアロゾルなども大気や河川を通して海洋に運搬され堆積するため、堆積物の化学組成や微化石群集、同位体比などを詳細に解析することによって、炭素を中心とした物質循環プロセスや海洋環境変動の実態を復元することができます。


地球表面の約70%を占める海洋から採取されたコアは、全地球規模の過去の記録を得るのに適しており、世界のあらゆる海域から多くのコアが採取されています。海底の堆積物を数百〜千メートル以上得るためには、深海掘削船が用いられます。陸上で行われる調査ボーリングと原理は同じですが、不安定な船上から海底下までパイプが必要など掘削の難度は高くなります。

国際深海掘削計画(ODP)では、海底下2000mまでの掘削が限度であり、新しい地球システム変動論が要請する研究課題の解決が困難でした。

2003年10月に開始された統合国際深海掘削計画(IODP)では、日本の地球深部探査船「ちきゅう」、米国が提供するジョイデス・レゾリューション号、欧州が提供する特定任務掘削船(MSP)の複数の掘削船により科学研究航海を実施しています。「ちきゅう」は、大深度掘削を可能にする世界初のライザー式科学掘削船で、海底下から7,000メートルを掘りぬいてマントルへ到達可能な掘削能力を備えています。



■海洋コアとは?
海洋観測船や深海掘削船による研究航海の際に採取あるいは掘削された連続柱状試料(コア)は、全地球規模における過去の地球環境変動(例えば、海水面変動、地磁気の変化、海流系の変動、水温変化など)を記録しているレコーダーです。過去から現在にいたる地球環境変動を詳細に解析するためには、海底に降り積もった堆積物を乱すことなく採取することが重要です。

世界の海域で採取された海洋コア試料
コアが採取された海底の水深や環境によって,海底に降り積もっている堆積物の種類や粒子のサイズが違います.


突然ですがクイズです
上の写真の7本のコアは,それぞれどこで採取された堆積物でしょう?
コア番号   コアの採取場所・深度など

1
2
3
4
5
6
7

? a. スルー海(赤道太平洋)・石灰質軟泥(水深2,993m)
b. アラビア海(アデン湾)・石灰質軟泥(水深1,184m)
c. 南大洋(南極海)・珪質軟泥(水深3,358m)
d. 日本海(富山湾)・ラミナ(水深2,373m)
e. 東シナ海(沖縄トラフ)・半遠洋性堆積物(水深1,709m)
f. アラビア海(アデン湾)・石灰質軟泥(水深1,474m)
g. 日本海(富山湾)・明暗互層(水深2,436m)
コア番号(1〜7)と,a〜gのコア採取地点の情報を結んでみてください.どうでしょう,わかりますか?
正解はこちらクリック



■海洋コアの採取
海洋研究開発機構の学術研究船(『白鳳丸』,『淡青丸』)や研究船(『みらい』,『かいれい』等)による研究航海にコアセンターの専任教員や大学院生が参加し,海底から連続的な海洋コアを採取します.

 世界中の海域で海底コアを採取する研究調査航海に参加しています.
 →→→これまでの乗船研究航海実績一覧はこちら

海洋コア試料は,ピストンコアラーやマルチプルコアラーという装置を使って海底から連続的な海洋コアを採取しますが,その仕組みはどうなっているのでしょう? 
 →→→ピストンコアのアニメーションをどうぞ(by M.T.)



■コア解析の流れ
Step1. 非破壊測定
 コア試料のサンプリングや詳細な分析を行う前に,コア全体の構造や物性特性を調べるための非破壊測定が行われる.堆積物内部の構造や物性特性は連続した画像や各種物性データとして得られ,その後の分析や試料採取に役立てられる.

Step2. 試料の採取
 非破壊測定の後,コアカッターやワイヤーなどによって縦方向に半割され,各研究者の要望に応じた試料が採取される.
半割コアの一方は試料採取用(ワーキングハーフ)に,もう片方は保存用(アーカイブハーフ)として冷蔵保管される.

Step3. 分析・計測
 分取された個別試料は,それぞれの研究に応じた分析や計測に用いられる.例えば,微化石の群集解析や岩石磁気学的な測定,詳細な物性測定,同位体比測定,バイオマーカー分析,微生物分析などが行われる.

Step4. 保存
 分取試料やアーカイブハーフなどは,各研究者の要望に応じて適切な温度管理下で冷蔵および凍結保存する.特に,海底で採取された堆積物中の微生物などは,温度変化や酸素による分解を避けるために極低温で保存する必要がある.



■研究プロジェクト
高知大学研究拠点プロジェクト(平成22〜平成27年度)
「掘削コア科学による地球環境システム変動研究拠点」

北西太平洋における黒潮流域の古海洋変動解析

高知大学研究プロジェクト(〜平成21年度)
「地球掘削コアを用いた地球環境・地球ダイナミクス・地下圏微生物の総合的研究」