博物館トップ魚研トップ
新着情報研究メンバー標本採集卒修論出版物土佐の魚就職先魚類学者プロジェクト掲示板リンク
標本の収集と維持管理

 海洋生物学研究室は約30万点にものぼる魚類標本を収蔵しています.国内ではもちろん,世界的にみても大型の魚類標本コレクションで,国内外の数多くの研究者によって活発に利用がなされています.旧制高知高校の蒲原稔治先生によって創設され,戦火(高知大空襲)による焼失などの悲劇にも見舞われましたが,半世紀以上にわたり順調な成長を遂げてきたと言ってもよいでしょう.コレクションの中心は土佐湾産の魚類ですが,琉球列島,九州-パラオ海嶺,沖縄舟状海盆,東南アジア淡水域およびグリーンランド周辺海域から得られた標本も多数をふくみます.
 標本は泳ぎはしませんが,それでも「いきもの」です.標本に命を与えるのは標本に付随したデータです.具体的には採集地(地名ももちろんですが,採集された水深や他の環境要素も大切),採集年月日,採集方法などです.採集地はある「場所」にその種が生活していた直接の証拠です.以前には沖縄近海でしか報告がなかった種Aが高知県で採集されれば,その標本は種Aが高知県に分布する確かな証拠となります.たとえが悪いかもしれませんが,犯罪捜査での「物証」に相当すると理解してください.採集年月日の語る「時」は時系列における種の存在を証明します.種の分布域は固定的ではなく,常に変化します.最近,種の絶滅がマスコミなどで騒がれていますが,どの時点まである種が生息していたかのもっとも確かな証人は標本です.反対に分布域の拡大も標本は雄弁に語ります.特に人為的な環境の改変に敏感な淡水魚では分布域拡大や縮小のモニターに標本を欠かすことはできません.採集方法からは生活環境がおおむね予測できます.たとえば,底引き網で採集されたならば,海底で生息していたと見当がつきます.標本は自然の姿を正確に映す鏡に他なりません.研究室の標本はすべてBSKU(Marine Biology, Faculty of Science, Kochi University)の頭文字から始まる番号をふされ,様々な関連データとともに登録されています.日本からは3900種程度の魚類が報告されていますが,毎年続々と新しく分布が確認された種や新種が追加されています.海洋生物学研究室の標本はこれらの発見に多大な貢献をしています.

(佐々木邦夫)

戻る

Copyright (C) 2001-2003 Laboratory of Marine Biology, Kochi Univ.