Phylum Cnidaria 刺胞動物門 (sensu Brusca etal.,
2016; Kayal et al., 2018) 3亜門8~9綱31目 約13,400種,日本では4綱29目194科1,820種
Subphylum Anthozoa 花虫亜門:ウミトサカ類(ソフトコーラル),造礁サンゴ類,ヤギ類,イソギンチャク類など.2亜綱15目132科約6,225種(日本では2亜綱13目107科約1,250種)
Subclass Octocorallia 八放サンゴ亜綱:ウミトサカ類,ヤギ類,ウミエラ類,アオサンゴ類など.
Subclass Hexacorallia 六放サンゴ亜綱:イシサンゴ類,イソギンチャク類など.
*Ceriantipatharia **Brusca and Brusca (2003)では独立の綱とされたが,Bursca et al. (2016)では六放サンゴ亜綱の1目.
Subphylum Medusozoa
Class Hydrozoa ヒドロ虫綱:ヒドラ類,シロガヤ,カツオノエボシ,オトヒメノハナガサ,アナサンゴモドキ類(造礁サンゴ類)など 11目108科3,717種(日本では11目72科530種)*World Hydrozoa Database 現在3,717種
Class Scyphozoa 鉢虫綱(鉢クラゲ綱):ミズクラゲ,アカクラゲ,エチゼンクラゲ,タコクラゲなど.4目21科約200種(日本では4目13科約30種
Class Cubozoa 箱虫綱(立方クラゲ綱):アンドンクラゲ,ハブクラゲなど.1目2科36種(日本では1目2科4種)
Class Staurozoa 十文字クラゲ綱 約50種 アサガオクラゲやシャンデリアクラゲなど底生性のクラゲ類
*これまで鉢虫綱の1目に含められたが,形態や生活史,DNAの解析から2005年に独立の綱とされた.底生性のクラゲ類で遊泳せず,クラゲ期にはポリプとクラゲが合体した形態を示す.十文字クラゲ類 Stauromedusaeと化石種のコニュラリア類 Conulataeを含む(三宅・Lindsay, 2013).
Subphylum Myxozoa
ミクソゾア亜門 すべて寄生性,約2,200種 *Kayal et al. (2018)はMyxozoaの姉妹群を Polypodium hydriforme(チョウザメ類の卵に寄生)とし て Endocnidozoaとした.
Class Myxosporea 約1,200種
Class
Malacosporea 約1,000種
*Class Polypodiozoa *Polypodium hydriformeのみ
☆Kayal, E. et al.. 2013. Cnidarian phylogenetic relationships as revealed by mitogenomics. BMC Evolutionary Biology, 13:5
☆Kayal, E. et al. 2018. Phylogenomics provides a robust topology of the major cnidarian lineages and insights on the origins of key organismal traits. BMC Evolutionary Biology, 18:68
★ the Shape of Life: Cnidarians: Life on the Move 刺胞動物門の動画(英語版)
☆「クリスタルボール タマクラゲの生活史」 東京シネマ新社
造礁サンゴ類と褐虫藻との相利共生関係(本川,2008:サンゴとサンゴ礁のはなし)
単細胞の植物プランクトンである褐虫藻は渦鞭毛藻類に属し,サンゴ類の体内では膜に包まれて胃層の細胞中に存在する.渦鞭毛藻類は,水中では殻と2本の鞭毛をもつが,サンゴ類の体内にいる褐虫藻は殻も鞭毛も失い,直径0.01ミリの球形となる.サンゴ類の体外へ出た時には,ふたたび殻と2本の鞭毛を作り,典型的な渦鞭毛藻類の形態となる.造礁サンゴ類の形状は褐虫藻の光合成のために生息環境により様々で,光の強い浅い水深では植物の樹木ような形状となり(高層建築),光を受ける面積を最大にして,かつ波浪の影響が最小となるような形をとる.同種でも生息環境により形状が異なる.また,造礁サンゴ類同士の居住空間をめぐる競争も激しく行われる.
サンゴ類にとっての利益
1)褐虫藻の光合成産物(炭素化合物)をもらいエネルギー源とする *プランクトンも捕食
2)褐虫藻の光合成産物である酸素をもらう
3)サンゴ類が合成できない必須アミノ酸を,褐虫藻がサンゴ類の排泄物から作る(らしい)
4)サンゴ類が排泄する窒素化合物と呼吸による二酸化炭素を褐虫藻が処理する(利用する)
褐虫藻にとっての利益
1)サンゴ内に住むことで暖かく日当りのよい住居を利用でき,おおよそ捕食者からも保護される
2)熱帯の海では不足がちなリンや窒素などの必須の栄養分をサンゴから直接得られる
*さらに,サンゴ類は海水中の無機の窒素(アンモニアと硝酸塩)も体内に取り込む
3)サンゴ類が排出する二酸化炭素を光合成に直接利用できる
*さらに,サンゴ類は海水中の重炭酸イオンを二酸化炭素に変えて体内に取り込む
4)日光の有害な紫外線や強すぎる可視光を防ぐ
*サンゴ類のマイコスポリン様アミノ酸が紫外線を吸収し,熱として分散させる
*浅い水深にすむサンゴ類では,光合成を阻害する強い可視光を防ぐ物質(蛍光タンパク質)で褐虫藻を覆うように分布する種も存在する
*深い水深にすむサンゴ類では,褐虫藻の下に蛍光タンパク質が分布し,通り抜ける弱い光を反射し,再利用する
★褐虫藻が光合成により作るエネルギーの1割は,褐虫藻自身が呼吸や成長に使い,残りの9割はサンゴ類に渡す.サンゴ類はその半分を呼吸や成長に割り当て,残り半分でおもに粘液(炭水化物やタンパク質からなる高分子で,水分を多量に含むゲル)を作り,体外に排出する.粘液は褐虫藻由来の素材であり,サンゴ類の体表を保護する役割がある.また,定期的に剥がれ,海水に溶けたり海底に落ちて水中や海底のバクテリアの餌となり,サンゴ礁域の食物連鎖を支える.熱帯のサンゴ礁の海水は,透明度が極めて高く,つまりプランクトン類が少ないため貧栄養である.しかし,その生態系の高い種多様性は,造礁サンゴ類と褐虫藻の共生関係の産物,サンゴ類が提供する3次元的な構造や動物が加工しやすい炭酸カルシウムの骨格が生み出す多様な生息環境により形成される.
リンク
NHK for School ミクロワールド:水中の射撃手 ヒドラの秘密 ;不思議な変身 クラゲの一生;針で攻撃 イソギンチャク
カツオノエボシ(新江ノ島水族館);アカクラゲ(新江ノ島水族館).
ユビアシクラゲ Tiburonia granrojo Matsumoto, Raskoff and Lindsay, 2003 *BISMaL: Biological Information System for Marine Life (JAMSTEC)
ウミサボテン 日本水中映像 ウミエラ クサビライシ(単体のサンゴ類)
「クリスタルボール タマクラゲの生活史」 東京シネマ新社 (ヒドロ虫綱,タマクラゲ)
「マリンフラワーズ−腔腸動物の生活圏−」 東京シネマ新社(1990年)
参考文献
Brusca, R.C. and G.J.
Brusca. (2003) Invertebrates, 2nd ed. Sinauer Associates, Inc.,
Publishers, 936 pp.
三宅裕志・Dhugal Lindsay(2013)最新クラゲ図館110種のクラゲの不思議な生態.誠文堂新光社,東京.128pp.
本川達雄(2008)サンゴとサンゴ礁のはなし.南の海のふしぎな生態系.中公新書 1953.273pp.
奥谷喬司・武田正倫・今福道夫
編(1997)「日本動物大百科第7巻 無脊椎動物」平凡社.
白山義久 編(2000)「バイオディバーシティー・シリーズ5 無脊椎動物の多様性と系統(節足動物を除く)」裳華房.
山下桂司(2011)ヒドラ 怪物?植物?動物! 岩波科学ライブラリー181(いきもの)岩波書店,東京.120pp.