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Phylum Platyhelminthes 扁形動物門(へんけい)(約30,000種以上*)(ギリシャ語でplaty=flat, helminth=worm)
1. Class Turbellaria 渦虫綱 13目116科約 4,500種 
 プラナリア(ウズムシ類),ヒラムシ類,リクウズムシ類 *淡水から海,陸に生息する自由生活者 *100種以上は多の無脊椎動物と共生
2. Class Trematoda 吸虫綱 3亜綱 約 18,000種以上 *成体のすべてが内部寄生者
 
ニホンジュウケツキュウチュウ,ヨコガワキュウチュウなど
3. Class Monogenea 単生綱
 約3,000種,吸虫綱に含められてきたが,最近では独立の綱として扱われる
 フタゴムシ類
4. Class Cestoda 条虫綱 2亜綱 約 5,000種 *すべて内部寄生者
 サナダムシ類(日本海裂頭条虫など),エキノコックス類

最近の分類体系(藤田, 2010)扁形動物は次の3系統群に分かれ,小鎖状目と有棒状体類は姉妹群となる(これら2群を狭義の扁形動物門とする考えに変わりつつある)*かつて扁形動物に分類された珍渦虫類は,分子解析の結果から後口(新口)動物の一群とされる.
1. 無腸型類(無腸目と皮中神経目を合わせた分類群)*最近では珍渦虫類と共に珍無腸動物門とされる
2. 小鎖状目(渦虫綱の一群)
3. 有棒状体類(単生綱,吸虫綱,条虫綱)


the Shape of Life: flatworms / Marine flatworms of the World


おもな特徴
1.三胚葉性,無体腔で柔組織が広がる.左右相称の体をもつ.
2.原始的な“かご状”あるいは“梯子状”神経径をもつ.
3.頭神経節(cerebral ganglion)と色素杯眼点をもつ(これを欠く種もいる). *頭化(cephalization)
4.原腎管をもつ.*炎(えん)細胞の運動で排出と水分調節を行う
5.肛門がない.
6.腸は複雑で発達する.*条虫類では退化・消失する種がみられる.
7.循環器系と呼吸器系を欠く. *体表面から直接ガス交換する(体が扁平なため)
7.雌雄同体
で,寄生性の種では生活史が複雑. *雌雄同体現象(hermaphroditism)
8.再生能力が高い(とくにプラナリア類ではよく知られる).

渦虫類の特徴
1.外皮細胞層にある腺細胞から粘液を分泌し,腹面の繊毛の運動により移動する.
2.口は腹面に位置し,突出可能な咽頭 (pharynx) をもつ.肛門がない.
3.多岐腸類ではミュラー幼生 (Müller's larva,体表の突起が8つ)あるいはゲッテ幼生 (Gotte's larva,体表の突起は4つ) をもつ種が見られる.*多くは直接発生

寄生性のグループの特徴 吸虫類・条虫類
1.体表は外皮(tegment) に被われ,繊毛をもたない.

2.頭部に固着器として吸盤 (sucker)や鉤 (hook) をもち,宿主の消化管内壁に付着する.

吸虫類
1.
固着器として口吸盤と腹吸盤の2つをもつ.
第1中間宿主=>第2中間宿主=>終宿主
幼生 卵=>ミラシジウム=>スポロシスト=>レジア=>セルカリア=>メタセルカリア=>成体

単生類:体の前後端に付着器官をもち,表皮には繊毛がないが、微絨毛を備える.単一宿主からなる生活環をもち、主として魚類への外部寄生性であるが,まれに両生類もしくは爬虫類の内部寄生性のものもある(岩波生物学辞典,第5版より).

条虫類
1.体は紐またはテープ状で著しく長く,頭節(scolex),頚部(頸部,neck)とその後方で形成される片節(proglottid, segment)からなる.頭節 (scolex) の先端に額嘴 (がくし rostellum:鉤を備えるドーム状の部位)と吸盤をもつ.
*片節連体 (strobila) =多数の片節が縦に連結したもの.片節を個虫とするならば,一種の群体とみなせる.
 片節は雌雄同体で,生殖器を1組含む.普通は自家受精する.
 片節は頚部後方に形成されるので,体の後端のものほど成熟する(形成=未成熟片節=>成熟片節=>受胎片節=>分離)
2.消化器をもたず,栄養は体表から吸収する.表皮は多核(シンシチウム)で,無数の微小毛を備える.

体サイズ
渦虫類:1mm 以下〜30 cm
吸虫類:0.2~20 mm
条虫類:サナダ虫では5~10 m,最大で15 mに達する


リンク
目黒寄生虫博物館
あの人に聞きたい私の選んだ道 第23回 カイチュウ博士藤田紘一郎さん(月刊「進路指導」2001年8月号掲載)

小笠原諸島父島へ侵入したニューギニアヤリガタリクウズムシ(東京都小笠原支所)new !

参考文献
Brusca, R.C. and G.J. Brusca. (2003) Invertebrates, 2nd ed. Sinauer Associates, Inc., Publishers, 936 pp.
藤田敏彦(2010)動物の系統分類と進化.新・生命科学シリーズ.裳華房.
奥谷喬司・武田正倫・今福道夫 編(1997)「日本動物大百科第7巻 無脊椎動物」平凡社.
白山義久 編(2000)「バイオディバーシティー・シリーズ5 無脊椎動物の多様性と系統(節足動物を除く)」裳華房.


Hiromitsu Endo