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2019年12月の魚

キンメダイBeryx splendens Lowe, 1834
(キンメダイ目キンメダイ科)

 キンメダイ科Berycidaeはキンメダイ属 Beryx Cuvier, 1829とキンメダマシ属 Centroberyx Gill, 1862の2属10種が知られ,大西洋・インド洋・西−中央太平洋に分布し,ほとんどの種が水深200−600 mに生息しています(Nelson et al., 2016).本科魚類の眼は大きく,網膜下にある“タペータム(tapetumもしくはtapetum lucidum)”と呼ばれる反射板によって光を反射して金色に光ります(岡部, 2018).このタペータムは薄明環境下において,網膜内の視細胞に吸収されないまま透過した入射光を網膜へ向けて反射させ,もう一度吸収される機会を設けることで光感受性を高め,わずかな光でも視力を確保する役割をもちます(山本,2017).タペータムは本科魚類のほかにアオメエソ科(アオメエソ,トモメヒカリ,ツマグロアオメエソ),ハダカイワシ科(ハダカイワシ,サガミハダカなど),ソトオリイワシ科(サンゴイワシ),ギンメダイ科(ギンメダイ,アラメギンメ),キントキダイ科(キントキダイ,クルマダイなど),ヤセムツ科(ヒラヤセムツ),サバ科(メバチ),アカメ科(アカメ)などにも備わっています(Somiya, 1980;Somiya et al., 2000;中山, 2018; Paitio et al., 2019).
 キンメダイ属はナンヨウキンメ Beryx decadactylus Cuvier, 1829,キンメダイ Beryx splendens Lowe, 1834,フウセンキンメ Beryx mollis Abe, 1959の3種が含まれ,キンメダマシ属とは臀鰭基底長は背鰭基底長より長い(vs. 短い),鱗の小棘は鱗面上に散在する(vs. 鱗の後縁部にのみ存在する),頭部前半部に1−4本の大きい棘がある(vs. 明瞭な棘はない),鼻骨の前縁は平滑(vs. 鋸歯状),臀鰭軟条数が25−32(vs. 12−17),側線鱗数が61−82(vs. 36−62)であることなどから識別できます(Busakhin, 1982; Kotlyar, 1996; 林, 2013).
 キンメダイは日本では北海道釧路から土佐湾の太平洋沿岸,新潟県佐渡,富山湾,東シナ海大陸棚縁辺域,九州−パラオ海嶺の,海外では大西洋およびインド洋−汎太平洋(南米北部より北の東太平洋を除く)の水深 25−1,240 mから報告されています(Busakhin, 1982;林, 2013).本種は成長に伴い生息水深が深くなる傾向があり,未成魚では大陸棚の水深100−250mに,成魚では沖合の200−800mの岩礁域に生息します(林, 2013).さらに,本種は摂餌のため,夜間に浅場へ移動し,朝に深場へ潜行する日周鉛直移動を行っていると考えられています(柳本,魚は背鰭第5鰭条(第1軟条)が著しく長く,“糸引きキンメ(写真)”と呼ばれ,伸長した鰭条は成長に伴い消失します(岡部,2018).キンメダイはナンヨウキンメとは標準体長が体高の2.5−2.9倍(vs. 1.9−2.2倍),背鰭軟条数が12−15(vs. 16−20)であることなどから明瞭に識別できます(Busakhin, 1982; Kotlyar, 1996; 林, 2013).一方で,本種とフウセンキンメは非常に類似しており,かつてはフウセンキンメを本種の新参シノニムとして扱う見解がありましたが(例えば,Woods and Sonoda, 1973; Heemstra, 1986),両種は形態的および遺伝的に差異がみられたことから,現在は別種として扱われています:本種はフウセンキンメとは後鼻孔の形がスリット状(vs. 幅広い楕円形),体の背部の鱗の後縁が滑らか(vs. 鋸歯状),背鰭軟条数が通常14(vs. 通常13),幽門垂数が27−36(vs. 15−20)であることなどから識別できます(Yoshino et al., 1999;Akimoto et al., 2006;林, 2013). 写真個体は室戸市の鮮魚店「浦戸屋商店」にて1,134円で購入しました.高知県のキンメダイ漁業は1976年に始まり,室戸岬周辺では立縄(樽流し)や手釣(餌釣りおよび毛ばり釣り)漁業による日帰り操業が現在でも盛んに行われています(亘ほか, 2017).本種の旬は冬で,煮付け,から揚げ,刺身,蒸し物,吸い物,鍋物,焼き物,みそ漬けなど,さまざまな料理で食されます(山田ほか, 2007; 岡部, 2018).私はこれまでキンメダイを食べたことがなかったため,後輩の水町くんにお願いして,写真個体と一緒に購入した819円のキンメダイ(標準体長 約 250 mm)を刺身,吸い物,あら煮にしてもらいました(写真).いずれの料理もキンメダイの濃厚な旨味が凝縮された絶品でした.忙しいにもかかわらず,美味しい料理を作ってくれた水町くんに,この場を借りてお礼申し上げます.

参考文献

Akimoto, S., S. Itoi, K. Sezaki, P. Borsa and S. Watabe. 2006. Identification of alfonsino, Beryx mollis and B. splendens collected in Japan, based on the mitochondrial cytochrome b gene, and their comparison with those collected in New Caledonia. Fish. Sci., 72: 202−207.

Busakhin, S. V. 1982. Systematics and distribution of the family Berycidae (Osteichthyes) in the world ocean. J. Ichthyol., 22: 1−21.

林 公義.2013.キンメダイ科.中坊徹次(編),pp. 557−578, 1897.日本産魚類検索全種の同定.第3版.東海大学出版会,秦野.

Heemstra, P. C. 1984. Berycidae. Pages 409−410 in M. M. Smith and P. C. Heemstra, eds. Smiths' Sea Fishes. Macmillan South Africa, Johannesburg. Kotlyar, A. N. 1996. Beryciform fishes of the world ocean. VNIRO Publishing, Moscow. 368 pp.

中山耕至.2018.アカメ科.中坊徹次(編),pp. 226−227.小学館の図鑑Z 日本魚類館精緻な写真と詳しい解説.小学館,東京.

Nelson, J. S., T. C. Grande and M. V. H. Wilson. 2016. Fishes of the world. 5th edition. John Wiley and Sons, Hoboken. xli + 707 pp. 岡部 久.2018.キンメダイ科.中坊徹次(編),pp. 174−175.小学館の図鑑Z 日本魚類館精緻な写真と詳しい解説.小学館,東京.

Paitio, J., D. Yano, E. Muneyama, S. Takei, H. Asada, M. Iwasaki and Y. Oba. 2019. Reflector of the body photophore in lanternfish is mechanistically tuned to project the biochemical emission in photocytes for counterillumination. Biochem. Biophys. Res. Commun., pp. 6 DOI 10.1016/j.bbrc.2019.10.197 (published online 07 November 2019).

Somiya, H. 1980. Fishes with eye shine: functional morphology of guanine type tapetum lucidum. Mar. Ecol. Prog. Ser., 2: 9−26.

Somiya, H., S. Takei and I. Mitani. 2000. Guanine and its retinal distribution in the tapetum of the bigeye tuna, Thunnus obesus. Ichthyol. Res., 47: 367−372.

亘 真吾・米沢純爾・武内啓明・加藤正人・山川正巳・荻原快次・越智洋介・米崎史郎・藤田 薫・酒井 猛・猪原 亮・宍道弘敏・田中栄次.2017.キンメダイの資源生態と資源管理.水産研究・教育機構研究報告, (44): 1−46.

Woods, L. P. and P. M. Sonoda. 1973. Order Berycomorphi (Beryciformes). Pages 263−395 in D. M. Cohen, J. W. Atz, F. H. Berry, J. Bo¨hlke, R. H. Gibbs, E. A. Lachner, G. W. Mead, and D. Merriman, eds. Fishes of the Western North Atlantic. Part 6. Sears Foundation for Marine Research, number 1. Yale University, New Haven.

山田梅芳・時村宗春・堀川博史・中坊徹次.2007.東シナ海・黄海の魚類誌.東海大学出版会,東京.lxxiii + 1263 pp. 山本直之.2017.感覚.矢部 衛・桑村哲生・都木靖彰(編),pp.132−154. 魚類学.恒星社厚生閣,東京.

柳本 卓.2004.天皇海山における底魚漁業とキンメダイBeryx splendensの生物学的特性.黒潮の資源海洋研究, (5): 99−109.

Yoshino, T., T. Kon and A. Miura. 1999. Morphological differences between Beryx splendens Lowe and B. mollis Abe (Teleostei: Beryciformes: Berycidae). Bull. Coll. Sci. Univ. Ryukyus, (67): 77−86.

写真標本: BSKU 127389, 295 mm SL (320 mm FL),2019年12月10日,高知県室戸市の鮮魚店「浦戸屋商店」にて購入.採集・写真撮影:内藤大河

(内藤大河)


 

2019年11月の魚


ツマグロアナゴ Bathycongrus retrotinctus (Jordan and Snyder, 1901)
(ウナギ目アナゴ科)

 ウナギ目アナゴ科 (Congridae) は世界では30属218種が,日本では14属26種が知られ,三大洋の熱帯から温帯域に分布します(波戸岡,2013;Nelson et al., 2016;Fricke et al., 2019a).本科は側線が完全で,鱗がなく,通常は胸鰭をもち,背鰭と臀鰭が尾鰭と連続することが特徴で,クロアナゴ亜科(Congrinae),チンアナゴ亜科(Heteroconginae),およびホンメダマアナゴ亜科(Bathymyrinae)の3亜科から構成されます(浅野,2006;Nelson et al., 2016).
 ツマグロアナゴ属 Bathycongrus Ogilby, 1898はクロアナゴ亜科に含まれ,上唇の溝がないか痕跡的,主上顎骨歯が大きく鋭い,鋤骨歯が複数列存在する,下顎が上顎より短く前上顎骨が露出するという特徴をもっています(Smith, 1989).本属は世界で37名義種が報告され,そのうち28種が有効種とされています (Fricke et al., 2019b). 日本ではツマグロアナゴ Bathycongrus retrotinctus (Jordan and Snyder, 1901) とニセツマグロアナゴ Bathycongrus wallacei Castle, 1968の2種が知られ,両種は肛門前側線孔数(前種では40−44 vs. 後種では30−38)および吻長(吻が長く,眼径の1.65−2.18倍 vs.吻が短く,1.34−1.51倍)で明瞭に識別できます(波戸岡,2013).
 ツマグロアナゴは,茨城県鹿島灘,和歌山県日ノ岬,高知県黒潮町,朝鮮半島南岸,台湾,フィリピン諸島,オーストラリア北東岸に分布し,そのタイプは東京魚市場で得られたものですが,正確なタイプ産地は分かっていません(波戸岡, 2013;Smith and Ho, 2018).本種は後鼻孔が眼の中央付近かわずか上に位置する,鋤骨には小さな歯に囲まれた通常2本の大きな歯がある,眼の後方に感覚孔がない,総脊椎骨数が181未満,大きな鋤骨歯の左右に小さな歯がある,鋤骨歯帯が三角形となるなどの特徴から,インド-西太平洋産の17種のうち,ハワイおよびフィジーから西インド洋にかけて分布するBathycongrus guttulatus (Gu¨nther, 1887) に最も類似します。しかし,本種は鰓蓋から肛門までの長さが頭長の1.3−1.6倍 (vs. B. guttulatus では1.6−1.9), 総脊椎骨数が143−151 (vs. 155−162) であることなどから識別できます (Smith and Ho, 2018).ちなみに,属名のBathycongrusは,ギリシャ語で「深い」を意味する "bathys" と,ラテン語で「会合する,出会う」を意味する"congro"が合わさったもので,種小名の "retrotinctus" は,ラテン語で「後方へ染められた」という意味をもち,実際に本種は尾鰭に近づくにつれて鰭が黒く染まったように見えます (中坊・平嶋,2015). 写真標本は2019年4月26日に高知県黒潮町の佐賀漁港で採集しました. “ぼうずコンニャクの市場魚介図鑑”(ぼうずコンニャク,2019)によると,ツマグロアナゴは小骨が多いため煮物や天ぷら向きではなく,唐揚げも美味ではないそうです.機会があれば,色々な調理法を試して美味しい食べ方を見つけてみてはいかがでしょうか.

参考文献

浅野博利.2006.アナゴ科.岡村収・尼岡邦夫(編),pp. 84-88.山渓カラー名鑑 日本の海水魚.第三版.山と渓谷社,東京.

ぼうずコンニャク.2019.ツマグロアナゴ.市場魚貝図鑑.https://www.zukan-bouz.com/syu/ツマグロアナゴ.(参照 2019-11-7)

Castle, P. H. J. 1968. The congrid eels of the western Indian Ocean and the Red Sea. Ichthyol. Bull. Dep. Ichthyol. Rhodes Univ., (33): 685-726.

Fricke, R., W. N. Eschmeyer and J. D. Fong. 2019a. Eschmyer's Catalog of Fishes: species by family/subfamily. http://researcharchive.calacademy.org/research/ichthyology/catalog/SpeciesByFamily.asp.(参照 2019-11-7).

Fricke, R., W. N. Eschmeyer and R. Van der Laan. 2019b. Catalog of fishes: genera, species, reference. http://researcharchive.calacademy.org/research/ichthyology/catalog/fishcatmain.asp.(参照 2019-11-7).

Gu¨nther, A. 1887. Report on the deep-sea fishes collected by H.M.S. Challenger during the years 1873−1876. Report on the Scientific Results of the Voyage of H. M. S. Challenger during the years 1873−76. Zool., 22 (pt 57): i-lxv + 1-268, pls. 1-66.

波戸岡清峰.2013.アナゴ科.中坊徹次(編),pp. 279-287, 1802-1806.日本産魚類検索 全種の同定,第三版.東海大学出版会,秦野.

Jordan, D. S. and J. O. Snyder. 1901. A review of the apodal fishes or eels of Japan, with descriptions of nineteen new species. Proc. U. S. Nat. Mus., 23: 837−890.

中坊徹次・平嶋儀宏.2015.日本産魚類全種の学名 語源と解説.東海大学出版部, 秦野.372 pp.

Nelson, J. S., T. C. Grande and M. V. H. Wilson. 2016. Fishes of the world. 5th, ed. John Wiley and Sons, Hoboken. xli + 707 pp.

Ogilby, J. D. 1898. New genera and species of fishes. Proc. Linn. Soc. N. S. W., 23: 280−299.

Smith D.G. 1989. Family Congridae. Pages 460-567 in E. B. Bo¨lke, ed. Fishes of the Western North Atlantic, Part 9. Allen Press, Inc., Kansas.

Smith, D. G. and H. C. Ho. 2018. The congrid eel genus Bathycongrus of Taiwan, with descriptions of three new species (Anguilliformes: Congridae). Zootaxa, 4454: 118-146.

写真標本:BSKU 126184, 226 mm TL, 2019年4月26日,高知県幡多郡黒潮町佐賀漁港(底曳き網),採集者・写真撮影:一岡貴裕.

(一岡貴裕)


 

2019年10月の魚 




マツダイ Lobotes surinamensis (Bloch, 1790)(スズキ目マツダイ科)写真(白バック)

 マツダイ科 Lobotidae は最大で1 m程に達する大型魚類で,背鰭と臀鰭の後縁が丸みを帯びて後方に伸長し,それらが尾鰭に見えることから,英名ではtripletails (3葉の尾)と呼ばれています(佐々木,1997; Nelson et al., 2016).本科にマツダイ属 Lobotesとダトニオイデス属 Datnioidesの2属を含める見解と(Nelson et al., 2016; Eschmeyer et al., 2019),両属を独立の科とする見解があり(e.g., Kottelat., 2013),本稿では前者に従います.
 マツダイ属はCuvier (1829) によって,Holocentrus surinamensis Bloch, 1790 をタイプ種として設立され,同科のダトニオイデス属とは臀鰭第3棘が最長(vs. 第2棘が最長),体色がおもに暗色(vs. 明るい地色に黒色横帯をもつ),前鰓蓋骨縁辺の鋸歯が強い(vs. 弱い),頭長が眼前長とほぼ同長(vs. 2倍程度)であることなどから識別できます(佐々木, 1997; Rainboth, 1996).属名のLobotesはラテン語で垂れ下がっているもの(葉)を意味し(中坊・平嶋,2015),マツダイ属魚類が落ち葉に似ていることに由来すると思われます.本属は三大洋の温帯から熱帯海域(時に汽水域に侵入)に分布し,これまでに9種が記載されています(佐々木,1997; 波戸岡,2013; Nelson et al., 2016).そのうち,Lobotes surinamensis (Bloch, 1790) とLobotes pacificus Gilbert in Jordan and Evermann, 1898の2種が現在有効とされています(Nelson et al., 2016; Eschmeyer et al., 2019).前種はBloch (1790) により大西洋のカリブ海で得られた2標本に基づき記載され,当初はイットウダイ科のHolocentrus に分類されていました.一方,後種はGilbert in Jordan and Evermann (1898)によって東太平洋のパナマで得られた6標本に基づき記載され,前種とは標準体長が体高の2.1−2.2倍(vs. 2.0倍以下),頭長が両眼間隔の3.9−4.0倍(vs. 3.3−3.4
倍),体を覆う櫛鱗が弱い(vs. 強い),固定時の幼魚の眼付近に様々な黒色帯がかすかに見える(vs. 一様に暗色)であることなどから識別できるとされました (Jordan and Evermann, 1898).しかし,L. pacificusの扱いは研究者によって異なり,L. surinamensisの新参異名とするか(e.g., Tortonese 1990; Castro-Aguirre et al., 1999),有効種とするか(e.g., Kells et al., 2016; Eschmeyer et al., 2019)見解が異なります.さらに,両種を詳細に比較検討した研究は行われておらず,マツダイ属は包括的な分類学的再検討が必要とされています (Mundy, 2005; Kottelat, 2013; Kells et al., 2016).もし,これらが別種であった場合,L. surinamensisL. pacificusのタイプ産地がそれぞれ大西洋と太平洋であることを考慮すると,標準和名“マツダイ”はL. pacificusに用いるのが妥当かもしれません(佐々木,1997;波戸岡,2013など).日本産マツダイは知床半島周辺のオホーツク海沿岸,北海道から九州南岸の太平洋沿岸,瀬戸内海,青森県から九州南岸の日本海・東シナ海沿岸,琉球列島沿岸に分布し(波戸岡,2013),枯葉や樹皮に擬態して,幼魚は表層を漂う海藻やゴミなどと一緒に漂い,成魚になっても流木などの近くを漂うといった生態をしています(佐々木,1997).
 写真個体は,高知大学から車で30分程で行ける土佐市宇佐で採集されました.普段は堤防では見られませんが,台風後などに注意深く海面の漂流物を見ていくと,たくさん発見できる時があります.マツダイ探しが習慣付いてしまった私は,広葉樹の枯葉を見つけるとすべてマツダイに見えてしまうようになったので,そうならないためにも,皆さんは程々に探す方が良いと思われます.また,高知市の浦戸大橋付近で全長30 cm 程の個体を見たことがあります.初めは黄色い体色をしていましたが,ルアーを投げると警戒色でしょうか,黒褐色の模様が鮮やかに浮き上がったことを覚えています.もし釣れた場合は,鰭の大きさや形状からイシダイのような力強い引き味が楽しめると推測しています.

参考文献

Bloch, M. E. 1790. Naturgeschichte der ausländischen Fische. Berlin. Volume 4. Schlesinger, Berlin. xii + 128 pp., 217-252 pls.

Castro-Aguirre, J. L., H. Espinosa Préz and J. J. Schmitter-Soto. 1999. Ictiofauna estuarino-lagunar y vicaria de México. Noriega-Limusa, IPN, Mexico City. 711 pp.

Cuvier, G. 1829. Le règne animal, distribué d’après son organisation, pour servir de base à l’histoire naturelle des animaux et d'introduction à l’anatomie comparée. Edition 2. volume 2. Chez Déterville, Paris. xv + 406 pp.

Eschmeyer, W. N., R. Fricke and R. van der Laan. 2019. Catalog of fishes: genera, species, reference: http://researcharchive.calacademy.org/research/ichthyology/catalog/fishcatmain.asp. Electronic version accessed 17 July 2019.

波戸岡清峰.2013.マツダイ科.中坊徹次(編),p. 934.日本産魚類検索 全種の同定.第3版.東海大学出版会,秦野.

Jordan, D. S. and B. W. Evermann. 1898. The fishes of North and Middle America: a descriptive catalogue of the species of fish-like vertebrates found in the waters of North America north of the Isthmus of Panama. Part III. Bull. United States Nat. Mus., (47): xxiv + 2183-3136.

Kells, V., L. A. Rocha and L. G. Allen. 2016. A field guide to coastal fishes from Alaska to California. Johns Hopkins University Press, Baltimore. 368 pp.

Kottelat, M. 2013. The fishes of the inland waters of southeast Asia: a catalogue and core bibliography of the fishes known to occur in freshwaters, mangroves and estuaries. Raffles Bull. Zool. Suppl., (27): 1-663.

Mundy, B. C. 2005.Checklist of the fishes of the Hawaiian Archipelago. Bishop Mus. Bull. Zool., (6): 1-703.

中坊徹次・平嶋儀宏.2015.日本産魚類全種の学名 語源と解説.東海大学出版部, 秦野.372 pp.

Nelson, J. S., T. C. Grande and M. V. H. Wilson. 2016. Fishes of the world. 5th ed. John Wiley and Sons, Hoboken. xli + 707 pp.

Rainboth, W. J. 1996. FAO species identification field guide for fishery purposes. Fishes of the Cambodian Mekong. FAO, Rome. xi + 265 pp., 27 pls.

佐々木邦夫.1997.マツダイ科.岡村収・尼岡邦夫(編),p. 344. 山渓カラー名鑑 日本の海水魚. 山と渓谷社, 東京.

Tortonese, E. 1990. Lobotidae. Page 780 in J. C. Quéro, J. C. Hureau, C. Karrer, A. Post and L. Saldanha eds. Check-list of the fishes of the eastern tropical Atlantic. Clofeta, volume 3. UNESCO, Paris.

写真標本:BSKU 127014,111 mm SL, 2019年8月19日,高知県土佐市宇佐町,手網
採集者・写真撮影:松本元晴 .

(松本元晴)


2019年9月の魚

サンマ Cololabis saira (Brevoort, 1856)(ダツ目サンマ科)

 ダツ目サンマ科(Scomberesocidae)は世界中の熱帯から温帯海域の沖合を中心に分布し,体が細長いこと,背鰭と臀鰭の後方に小離鰭をもつことなどが特徴です(Nelson et al., 2016;
中坊,2018).本科は2属(Collette et al., 1984; Collette, 2003, 2004)あるいは4属に分類され
(Hubbs and Wisner, 1980),Fishes of the worldの 1, 4, 5版では前者に,2, 3版では後者の見解に従っています(Nelson 1976, 1984, 1994, 2006; Nelson et al., 2016).ここでは本科を2属とします.本科は19から21名義種を含み,現在では4種(3種と2亜種)または5種が有効とされています.
サンマ属(Cololabis)は,Gill(1896)によってScombresox brevirostris Peters, 1866(タイプ産地は米国カリフォルニア州トマレス湾)をタイプ種として設立されました.本属はCololabis adoceta Böhlke, 1951,Cololabis brevirostria Peters, 1866およびCololabis saira (Brevoort, 1856) の3名義種を含み,属のタイプ種となったS. brevirostrisは,現在C. sairaの新参異名とされています
(Fricke et al., 2019).属名のCololabisは,ギリシャ語で切り詰められたハサミという意味をもちます(中坊・平嶋,2015).
 サンマは下顎が上顎より突出し,下顎先端部が黄色いこと,側線が体側下部を走ること,背鰭起部が臀鰭起部より後方にあることなどが特徴です.卵は楕円形で卵膜上に約20本もの付属糸があり,流れ藻や浮遊物に付着します.また,外洋表層性で群れを作りながら季節回遊し,カイアシ類やオキアミ類,ヨコエビ類などの動物プランクトンを食べて成長します(藍澤・土居内,2013:中坊,2018).サンマはふ化後6–7カ月で体長20 cmに達することが,耳石の日周輪数から判明しています.その後は成長速度は鈍くなり,日周輪が読みにくくなるため,成長について十分に分かっていません(独立行政法人 水産総合研究センター,2005).
 本種はサンマ属のもう1種であるC. adocetaとは,側線がある,鰓耙が多い(サンマでは32–43 vs. C. adocetaでは15–21),脊椎骨数が多い(サンマでは64–69 vs. C. adocetaでは54–59),体側鱗数が多い(128–148 vs. 70–88)などの特徴から識別できます(Hubbs and Wisner, 1980).サンマは,北海道から九州沿岸の日本海・太平洋沿岸,瀬戸内海,屋久島,朝鮮半島東岸,ピーター大帝湾,北米西岸バハカリフォルニアに至る北太平洋から(藍澤・土居内,2013),C. adocetaは東部太平洋の赤道付近やハワイ諸島から報告されています(Hubbs and Wisner, 1980).
 写真標本は2018年12月12日に高知県室戸市の高岡漁港(定置網)で採集されました.2006年には室戸岬に黒潮が著しく接近したことから,時季外れである11月末に高知県東洋町の定置網でサンマが約6–7トン漁獲された報告もあります(守岡・上田,2007).サンマは漢字で「秋刀魚」と書かれる通り秋が旬であり,脂がのっています.サンマは塩焼きや刺身,なめろうやフライなど様々な料理法があります.秋にはぜひサンマを食べてみてください(ぼうずコンニャク,2019).

参考文献

藍澤正宏・土居内龍.2013.サンマ科.中坊徹次(編),pp. 667, 1933–1938. 日本産魚類検索 全種の同定.第三版.東海大学出版会,秦野.
ぼうずコンニャク.2019. サンマ.市場魚介図鑑:https://www.zukan-bouz.com/syu/サンマ(参照 2019-08-07).
Collette, B. B. 2003. Order Beloniformes Scomberesocidae. Pages 1114–1115 in K. E. Carpenter, ed. The living marine resoueces of the western Central Atlantic. FAO species identification guide for fishery purposes. Vol. 2. FAO, Rome.
Collette, B. B. 2004. Family Scomberesocidae Müller 1843—sauries. California Academy of Sciences Annotated Checklists of Fishes, 21: 1–6.
Collette, B. B., G. E. McGowen, N. V. Parin and S. Mito. 1984. Beloniformes: development and relationship. Pages 335–345 in H. G. Moser et al., eds. Ontogeny and systematics of fishes. American Society of Ichthyologists and Herpetologists, Special Publication, (1).
独立行政法人 水産総合研究センター.2005.FRANEWS VOL.4:http://www.fra.affrc.go.jp/bulletin/news/fnews04.pdf(参照 2019-08-20).
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Hubbs, C. L. and R. L. Wisner. 1980. Revision of the sauries (Pisces, Scomberesocidae) with descriptions of two new genera and one new species. United States National Marine Fisheries Service Fishery Bulletin, 77(3): 521–566.
守岡佐保・上田幸男.2007.徳島県立農林水産総合技術支援センター 徳島水研だより 第 60 号:http://www.pref.tokushima.jp/_files/00166324/s_dayori60-6.pdf(参照 2019-08-07).
中坊徹次. 2018.サンマ科. 中坊徹次(編),pp. 194–195.小学館の図鑑Z 日本魚類館精緻な写真と詳しい解説.小学館,東京.
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Nelson, J. S. 1976. Fishes of the world. Wiley and Sons, New York. 416 pp.
Nelson, J. S. 1984. Fishes of the world. 2nd ed. Wiley and Sons, New York. 523 pp.
Nelson, J. S. 1994. Fishes of the world. third ed. Wiley and Sons, New York. 600 pp.
Nelson, J. S. 2006. Fishes of the world, 4th ed. Wiley and Sons, Hoboken. 601 pp.
Nelson, J. S., T. C. Grande and M. V. H. Wilson. 2016. Fishes of the world. 5th ed. John Wiley and Sons, Hoboken. xli + 707 pp.

写真標本:BSKU 125421,255.8 mm SL,2018年12月12日,高知県室戸市高岡漁港,定置網,採集:水町海斗・泉幸乃・甲斐嘉晃(FAKU),写真撮影:水町海斗.

写真:2018年12月12日,室戸市高岡漁港で水揚げされたサンマ


サンマ(蒲原稔治博士の原画)

(後口佳孝)


2019年8月の魚


シロザメ Mustelus griseus Pietschmann, 1908
(メジロザメ目ドチザメ科)

 ドチザメ科 (Triakididae)は9属46種を含み,基本的には海産でまれに汽水域や淡水域に侵入する種もいます.本科魚類は,熱帯から温帯にかけて大陸や島の斜面などに生息し,底生性で,三大洋に広く分布しています.本科の最も古い化石は白亜紀前期から発見されています (Nelson et al., 2016; Fricke et al., 2019).本科に含まれるホシザメ属 Mustelsは,体がスレンダーで吻が角ばり,眼が背側に位置し,眼窩の隆起が強く,口が角ばり,扁平で敷石状の両顎歯の尖頭が発達し,第2背鰭が第1背鰭とほぼ同大であることなどから他属と識別されます (Compagno, 1984).本属には55名義種29有効種が存在し,日本周辺にはシロザメMustelus griseus Pietschmann, 1908とホシザメMustelus manazo Bleeker, 1854の2種が分布します (青沼ほか, 2013; Nelson et al., 2016).
 シロザメは背側に小白色点がない,頭部と吻が短い,鼻孔間が広い ,眼がかなり小さい,両眼間隔が狭い,両顎の唇褶がほぼ同長,尾鰭前までの椎体数が73–80,尾鰭下葉がやや鎌状などの特徴で他種と識別できます (Compagno, 1984; 青沼ほか,2013).また,サメ類の繁殖様式は多様ですが,本種は母親から栄養をもらい成長する母体依存型で,その中でも胎盤を介して成長する胎盤タイプに分類されます.この胎盤タイプは,母体の中で自分のもつ卵黄を使い切ったのちに卵黄嚢と呼ばれる卵黄を包む袋から胎盤を作り,母体から栄養をもらいながら成長します.胎盤ができるまでは,子宮壁から分泌される子宮ミルクと呼ばれる特殊な栄養分を摂取しながら成長します.ドチザメ科の中ではほとんどが卵黄依存型や食卵タイプの胎生種であるなか,シロザメは少ない胎盤タイプであるため,これも本種の大きな特徴のひとつです(仲谷,2011).本種のタイプ産地は日本で,水深 70–80 m の砂泥底に生息し,房総半島から九州南岸の太平洋沿岸,若狭湾から九州西岸の日本海・東シナ海沿岸,瀬戸内海,朝鮮半島南岸,台湾,中国東シナ海・南シナ海沿岸などに分布します (中坊,2018).
 日本に生息する本属魚類として,これまでにはソウボウシロザメ Mustelus kanekonis (Tanaka, 1916) も報告されていました.本種は体が細長く眼が楕円形で,瞬膜は眼と平行に覆い被さり露出していること,口が三角形で歯が小さく密集すること,第1背鰭が明らかに胸鰭寄りで,第2背鰭が小さいこと,臀鰭始部は第2背鰭基底の1/3より後方に位置すること,体色が背部では灰色がかった茶色で腹部では白色であることなどが特徴とされます (Chen et al. 1997).Heemstra (1973) はソウボウシロザメをシロザメの新参シノニムとしました.ところが,Chen et al. (1997) はこの種を有効種としており,その後両種の詳細な検討は行われておらず,分類学的に混乱しているようです.また,ソウボウシロザメのタイプ標本は東京大学総合研究博物館(ZUMT)に所蔵されていますが,原記載にはタイプ標本の標本番号を明記していないため,この点においても両種の比較を難しくしていると考えられます.
 シロザメの両顎歯は一般的なサメ類の鋭い歯とは異なり,敷石状(写真:矢印は歯を指す)になっています.この歯を利用して甲殻類や小型の魚類を食べています.ぼうずコンニャクの“市場魚介図鑑” (ぼうずコンニャク,2019) によると,本種はおもに西日本で食用とされ,フカヒレとしての利用のほか,湯引きにして酢味噌をつけて食べられるようです.私たちが採集で訪れる高知市御畳瀬漁港でも,ホシザメとともに水揚げされているのをよくみかけます.

参考文献

青沼佳方・山口敦子・柳下直己・吉野哲夫.2013. ドチザメ科.中坊徹次 (編),pp. 169, 1761. 日本産魚類検索 全種の同定.第3版.東海大学出版,秦野.

ぼうずコンニャク.2019. シロザメ.市場魚介図鑑:https://www.zukan-bouz.com/syu/ シロザメ(参照 2019–07–02).

Chen, Q., Y. Cai and Y. Ma. 1997. Triakidae. Pages 3–4. Fishes from Nansha Islands to South China Coastal Waters 1. Science Press. Guangzhou, China.

Compagno, L. J. V. 1984. Triakidae. Pages 381– 434 in FAO species catalogue. Vol.4. Sharks of the world. An annotated and Illustrated Catalogue of Shark species known to date. Part 2. Carcharhiniformes. FAO Fisheries Synopsis. No. 125, Vol. 4, Part 2. FAO, Rome.

Fricke, R., Eschmeyer, W. N. and Van der Laan, R. 2019. Catalog of fishes: genera, species, reference: http://researcharchive.calacademy.org/research/ichthyology/catalog/fishcatmain.asp. Electronic version accessed 27 June. 2019.

Heemstra, P. C. 1973. A revision of the shark genus Mustelus (Squaliformes Charcharhinidae). University of Miami. 187 pp.

中坊徹次.2018. ドチザメ科.中坊徹次(編),p. 28–29. 小学館の図鑑Z 日本魚類館 精緻な写真と詳しい解説.小学館,東京.

仲谷一宏.2011. サメの生殖.p. 120–147. サメ 海の王者たち. ブックマン社,東京.

Nelson, J. S., T. C. Grande and M. V. H. Wilson. 2016. Fishes of the world. fifth edition. John Wiley and Sons, Hoboken, New Jersey. xli+707 pp.

Pietschmann, V. 1908. Zwei neue japanische Haifische. Anzeiger der Kaiserlichen Akademie der Wissenschaften, Wien, Mathematisch-Naturwissenschaftliche Classe. 45 (10): 132–135.

田中茂穂. 1916. 日本産魚類の四新種.動物学雑誌.28 (327): 26–28.

写真標本:BSKU 93531, 413 mm SL, 雌 ,土佐湾,高知県高知市御畳瀬漁港,大手繰り網,幸成丸,2008年1月18日.

(泉 幸乃)


2019年7月の魚

メガネウオ Uranoscopus bicinctus Temminck and Schlegel, 1843(スズキ目ミシマオコゼ科)

 スズキ目ミシマオコゼ科(Uranoscopidae)は, 三大洋の暖海域に生息し, 世界では7属58種が, 日本では3属8種が知られています(片山, 2018; Fricke et al., 2019). 本科魚類は, 頭部が大きく縦扁し,体が後方に向かって側扁することや口がほぼ垂直方向に開くこと, 眼が背面に位置することなどが特徴とされています (岸本, 1997; Nelson et al., 2016). また,本科魚類は砂底に潜む待ち伏せ型の捕食者で,メガネウオのように下顎内側の中央部に細長い皮弁をもつ種は,これを口から外に出して細かく動かし,擬似餌として使います(岸本, 1997; 片山, 2018). 本科魚類には, 眼のあたりに発電器官をもつAstroscopus属や, ニュージーランドの淡水域で発見された種が知られており, 非常に多様性に富んだグループです(Gomon and Roberts, 2011; Vilasri, 2013).
 ミシマオコゼ属 (Uranoscopus Linnaeus, 1758) は, 背鰭が2基あることや擬鎖骨棘が強大であること, 棘状の背鰭があり, 鱗がよく発達していることなどから同科他属と識別できます(Pietsch, 1989; 山田・柳下, 2013). 現在, 本属魚類は世界で38名義種が存在し, そのうち29種が有効とされています. 日本からは, 次の6種が報告されています: ミシマオコゼU. japonicus Houttuyn, 1782, メガネウオU. bicinctus Temminck and Schlegel, 1843, キビレミシマU. chinensis Guichenot, 1882, ヤギミシマU. tosae (Jordan and Hubbs, 1925), カスリミシマU. turbisquamatus (Okamura and Kishimoto, 1993), およびトウカイミシマU. sp.(山田・柳下, 2013; Fricke et al., 2019).
 メガネウオU. bicinctus は日本の鎖国時代にシーボルトやビュルゲルが日本で採集してオランダへ持ち帰った標本をもとに,1843年に出版された「Fauna Japonica(日本動物誌)」の中で記載されました. しかし, その時にホロタイプは指定されておらず, 1947年にBoeseman博士によって6標本のシンタイプの中からレクトタイプ(RMNH D716)が指定されました. これらのタイプ標本は, 現在オランダのライデン国立自然史博物館に所蔵されています (Boeseman, 1947). 本種は第1と第2背鰭直下に暗色鞍状斑と前鰓蓋骨下縁に5棘をもつことなどの特徴から, 同属他種と識別できます(山田・柳下, 2013; 片山, 2018). 本種を含む本科魚類は練り製品として利用されます(池田・中坊, 2015). 本種は富山湾や千葉県外房から九州南岸の太平洋沿岸, 琉球列島, 朝鮮半島南岸, 台湾などに分布し, おもに水深100m以浅の砂礫底に生息します(山田・柳下, 2013; 片山, 2018).
 写真個体は, 2013年6月26日に高知県宿毛市沖ノ島の定置網で採集されました. ミシマオコゼの仲間はなかなか怖い顔をしていますが, 本科の英名のstargazer は,“星を見つめる者(あるいは天文学者)”というロマンチックな名前です.本科の眼が頭の背側に位置することに因むものです. もしも, 目にする機会があればじっくり観察してみてください. 顔をじっくり眺めていると案外かわいく見えてくるかもしれませんよ.

参考文献

Boeseman, M. 1947. Revision of the fishes collected by Burger and Von Siebold in Japan. Zoologische Mededelingen (Leiden), 28: vii + 242pp., pls. 1–5.

Fricke, R., W. N. Eschmeyer and R. Van der Laan. 2019. Catalog of fishes: genera, species, references: http://researcharchive.calacademy.org/research/ichthyology/catalog/fishcatmain.asp.
Electronic version accessed 8 June. 2019.

Gomon, M. F. and C. D. Roberts. 2011. A second New Zealand species of the stargazer genus Kathetostoma (Trachinoidei: Uranoscopidae). Zootaxa, 2776: 1–12.

池田博美・中坊徹次. 2015. 南日本太平洋沿岸の魚類. 東海大学出版部, 秦野. xxii + 597 pp., pls. 1–256.

片山英里. 2018. ミシマオコゼ科. 中坊徹次 (編), pp. 372–373. 小学館の図鑑Z 日本魚類館 精緻な写真と詳しい解説. 小学館, 東京.

岸本浩和. 1997. ミシマオコゼ科. 岡村収・尼岡邦夫(編)pp. 557–558, 山渓カラー名鑑日本の海水魚. 山と渓谷社, 東京.

Nelson, J. S., T. C. Grande and M. V. H. Wilson. 2016. Fishes of the world. 5th ed. John Wiley and Sons, Hoboken. xli + 707 pp.

Pietsch, W. 1989. Phylogenetic relationships of trachinoid fishes of the family Uranoscopidae. Copeia, 1989: 253–303.

Vilasri, V. 2013. Comparative anatomy and phylogenetic systematics of the family Uranoscopidae (Actinopterygii: Perciformes). Memoirs of the Faculty of Fisheries Sciences, Hokkaido University, 55: 1–106.

山田梅芳・柳下直己. 2013. ミシマオコゼ科. 中坊徹次 (編), pp. 1277–1279, 2096–2097. 日本産魚類検索全種の同定. 第3版. 東海大学出版会, 秦野.

写真標本: BSKU 110580, 185.2 mm SL, 高知県宿毛市沖ノ島, 2013年6月26日.

(溝脇一輝)


2019年6月の魚

アカゴチ Bembras japonicus Cuvier in Cuvier and Valenciennes, 1829 (スズキ目アカゴチ科)

 スズキ目アカゴチ科 (Bembridae)は,インド-太平洋の暖海域に分布するアカゴチ属 (Bembras Cuvier, 1829) の1属7名義種からなり,いずれも有効種とされています(Imamura, 1996; Imamura and Knapp, 1997, 1998; Imamura et al., 2018).そのうち,日本にはアカゴチのみが分布します (中坊・甲斐, 2013;甲斐,2018). アカゴチ科には, アカゴチ属の他にウバゴチ属 (Parabembras) あるいはバラハイゴチ属 (Bembradium) を含める見解があり(Nelson et al., 2016; Fricke et al., 2019), 2017年に発表された大規模な硬骨魚類の分子系統仮説では,アカゴチ属とウバゴチ属が姉妹群を形成しています (Betancur-R et al., 2017). ここでは本科にアカゴチ属のみを認めるImamura (1996, 2004)に従います.
 アカゴチ属 (Bembras) はアカゴチBembras japonicus Cuvier, 1829をタイプ種として設立されました. 本属は体長30cm程度の小型の底生性魚類で, ほとんどの種が水深150–650 mに生息し,体が赤色で細長く,やや縦扁し, 第1背鰭棘数が6–12, 第2背鰭軟条数が8–12, 胸鰭軟条数が21–27, 側線鱗数が52–56,頭は扁平で大きく標準体長の34–38%, 下顎が上顎とほぼ同長,尾鰭に数本の垂直帯もしくは1個の大黒色斑があることなどが特徴です (Poss, 1999; 池田・中坊, 2015; Nelson et al., 2016).
 アカゴチは日本で採集されたホロタイプのみに基づいて記載され, そのタイプはドイツのベルリン自然史博物館 (ZMB) に所蔵されています. 本種は臀鰭鰭条数が通常14, 鰓弓上肢の鰓耙数が1か2, 胸鰭鰭条数が通常17で尾鰭よりも短いことなどから同属他種から識別されます (Imamura et al., 2018). 本種の体色は体の背面が橙赤色で, 多数の暗色点が背面や背鰭, 胸鰭に散在しており, 尾鰭に眼径ほどの黒色斑があることが特徴です (矢頭, 1985; 池田・中坊, 2015; 甲斐, 2018). また,本種は水深80–230 mの大陸棚縁辺域の砂泥底に生息し, 山口県から九州南岸の日本海・東シナ海沿岸, 駿河湾から九州南岸の太平洋沿岸, 瀬戸内海, 東シナ海, 済州島, 台湾, 広東省などに分布しています (中坊・甲斐, 2013; 池田・中坊, 2015).
 写真標本は2019年3月18日に高知県黒潮町の佐賀漁港で採集されました.“ぼうずコンニャクの市場魚介図鑑”(ぼうずコンニャク,2019)によると, アカゴチは淡泊で皮目に甘味というか独特の風味のある魚で,味の評価は美味となっています. 機会があれば是非一度食べてみたいと思います.

参考文献

Betancur-R, R., E. O. Wiley, G. Arratia, A. Acero, N. Bailly, M. Miya, G. Lecointre and G. Orti. 2017. Phylogenetic classification of bony fishes. BMC Evolution Biology, 17 (162): 1–42.

ぼうずコンニャク. 2019. アカゴチ. 市場魚介図鑑:https://www.zukan-bouz.com/syu/アカゴチ (参照2019-05-15).

Fricke, R., W. N. Eschmeyer and R. Van der Laan. 2019. Catalog of fishes: genera, species, references: http://researcharchive.calacademy.org/research/ichthyology/catalog/fishcatmain.
asp. Electronic version accessed 30 March. 2019.

池田博美・中坊徹次. 2015. 南日本太平洋沿岸の魚類. 東海大学出版部, 秦野. xxii + 597 pp., pls. 1–256.

Imamura, H. 1996. Phylogeny of the family Platycephalidae and related taxa (Pisces: Scorpaeniformes). Species Diversity, 1: 123–233.

Imamura, H. 2004. Phylogenetic relationships and new classification of the superfamily Scorpaenoidea (Actinopterygii: Perciformes). Species Diversity, 9: 1–36.

Imamura, H. and L. W. Knapp. 1997. New species of a deepwater flathead, Bembras adenensis from the western Indian Ocean (Scorpaeniformes: Bembridae). Ichthyological Research, 44: 9–13.

Imamura, H. and L. W. Knapp. 1998. Review of the genus Bembras Cuvier, 1829 (Scorpaeniformes: Bembridae) with description of three new species collected from Australia and Indonesia. Ichthyological Research, 45: 165–178.

Imamura, H., P. N. Psomadakis and H. Thein. 2018. Two new species of deepwater flathead Bembras Cuvier, 1829 from the Andaman Sea, eastern Indian Ocean. Ichthyological Research, 65: 488–495.

甲斐嘉晃. 2018. アカゴチ科. 中坊徹次 (編), p. 224. 小学館の図鑑Z 日本魚類館 精緻な写真と詳しい解説. 小学館, 東京.

中坊徹次・甲斐嘉晃. 2013. アカゴチ科. 中坊徹次 (編), pp. 719, 1950–1951. 日本産魚類検索全種の同定. 第3版. 東海大学出版, 秦野.

Nelson, J. S., T. C. Grande and M. V. H. Wilson. 2016. Fishes of the world. 5th ed. John Wiley and Sons, Hoboken. xli + 707 pp.

Poss, S. G. 1999. Bembridae. pp. 2383–2384 in K. E. Carpenter and V. H. Niem, eds. FAO species identification guide for fishery purposes. The living marine resources of the western central Pacific Volume 4: Bony fishes. part 2 (Mugilidae to Carangidae). FAO, Rome.

矢頭卓児. 1985. コチ科. 岡村収 (編), pp. 596–599. 沖縄舟状海盆及び周辺海域
の魚類II. 日本水産資源保護協会, 東京.

写真標本: BSKU 125882, 129.6 mm SL, 土佐湾, 高知県幡多郡黒潮町佐賀漁港, 2019年3月18日,採集者・写真撮影:溝脇一輝.

(溝脇一輝)


2019年5月の魚


ギンカガミ Mene maculata (Bloch and Schneider, 1801)(スズキ目ギンカガミ科 )

 ギンカガミ科(Menidae)は1属1種の Mene maculata (Bloch and Schneider, 1801) ギンカガミ のみを含み,インド・西太平洋の暖海域に広く分布します( 瀬能, 2013).本属魚類は腹鰭と臀鰭起部がよく接近し,体が側扁した円盤状になり,腹鰭が非常に細長いという特徴をもちます(Friedman and Johnson, 2005 ; 瀬能, 2013).ギンカガミ属Mene Lacepède , 1803 はMene annacarolina Lacepède, 1803をタイプ種として設立されましたが,現在M. annacarolinaMene maculataの新参異名と なっています(Eschmeyer et al., 2019).
 Mene maculata は インド産の1標本に基づき記載され,そのホロタイプはインドのコルカタにあるZoological Survey of India (ZSI)に所蔵されていました . しかし,現在は 行方不明になっています(Paepke 1999).属名のMeneはギリシャ語で月を,種小名のmaculataはラテン語で斑紋 があるという意味 です(中坊・平嶋 , 2015).学名が表すように,本種の体型は半月 様で著しく側扁し,体側には2–3列の暗色斑があります.また,体は無鱗で, 腹鰭の 外側 2軟条は癒合して伸張するという特徴をもちます(瀬能 , 2013).形態的にはアジ科に近縁であると考えられていますが,研究者により分類学的位置は異なっているようです (Friedman and Johnson, 2005).Chen et al. (2002) は 12S rRNA,16S rRNA,28S rRNA,およびロドプシン遺伝子の4領域の塩基配列を解析し,用いた領域によってギンカガミの系統的位置が異なることを示しました .例えば,28S rRNAの解析では,アジ科のTrachinotus ovatusと姉妹群を形成し,一方12S rRNAと16S rRNAの解ではカマス科のSphyraena sphyraena,ダルマガレイ科のArnoglossus imperialis,およびツバメコノシロ科のPentanemus quinquariusからなる単系統群と姉妹群を形成しました.
 現生のギンカガミ属は,ギンカガミM. maculataの1種のみですが,化石種としてMene rhombea Volta,1796,Mene bologna Agassiz,1883,およびMene purdyi Friedman and Johnson, 2005の3種が知られています.M. purdyiは同属他種の最大体長が約200 mmであるのに対し,体長がかなり大きく,その神経頭蓋は90 mmと他種の3倍ほどのサイズで ,上後頭骨には 孔が ないことなどが特徴です (Friedman and Johnson, 2005).  
  写真標本は2000年4月27日に高知県土佐清水市の以布利漁港で採集されました. 市場魚貝類図鑑によると,料理法として,揚げる,ムニエル,みそ汁,塩焼き,煮つけおよび刺身などがあります.機会があればぜひ食べてみてください.

参考文献

Chen, W.J., B. Celine and L. Guillaume . 2002. Repeatability of clades as a criterion of reliability: a case study for molecular phylogeny of Acanthomorpha (Teleostei) with larger number of taxa. Molecular Phylogenetics and Evolution, 26 : 263–276.

Eschmeyer, W.N., R. Fricke and R. van der Laan. 2019. Catalog of fishes: genera,species,reference: http://researcharchive.calacademy.org/research/ichthyology/
catalog/fishcatmain.asp Electronic version accessed 29 March 2019.

Friedman, M. and G. D. Johnson . 2005. A new species of Mene ( Perciformes: Menidae) from the Paleocene of south America, with notes on paleoenvironment and a brief review of menid fishes. Journal of Vertebrate Paleontology, 25 : 770–783.

中坊徹次・平嶋儀宏.2015.日本産魚類全種の学名 語源と解説.東海大学出版部, 秦野. 372pp.

Paepke, H. J. 1999. Bloch's fish collection in the Museum für Naturkunde der Humboldt Universität zu Berlin: an illustrated catalog and historical account. Sociedade Brasileira de Ictiologia, Londrina . 216pp.

瀬能宏.2013. ギンカガミ科. 中坊徹次(編),pp. 877, 1990–1991.日本産魚類検索全種の同定 第三版. 東海大学出版会, 秦野.

ギンカガミ|魚類|市場魚貝類図鑑 https://www.zukan-bouz.com/(参照 2019-03-29).

写真標本:BSKU 87581, ca. 300 mm SL, 2000年4月27日,高知県土佐清水市以布利漁港で採集.

(幸 大二郎)


2019年4月の魚

イブリカマス Sphyraena iburiensis Doiuchi and Nakabo, 2005(スズキ目カマス科)

スズキ目カマス科(Sphyraenidae)は,世界の熱帯から温帯のサンゴ礁域や沿岸域に分布する肉食性魚類です.本科は体が円筒形で細長いこと,吻が長く尖ること,口が大きく,長い犬歯状歯が上顎に2対と下顎に1本あること,背鰭が2基で互いによく離れることが特徴で,多くの種では最大で体長30cm 程度ですが,オニカマスSphyraena barracudaは1m以上に成長します.現在,カマス科はカマス属 Sphyraena の1属のみを含み,約21有効種が知られています(土居内,2018).そのうち,日本には次の9種が分布するとされています:オニカマスSphyraena barracuda,オオカマス Sphyraena putnamae,オオメカマス Sphyraena forsteri,アカカマス Sphyraena pinguis,タイワンカマス Sphyraena obtusata,イブリカマス Sphyraena iburiensis,ホソカマス Sphyraena helleri,ヤマトカマス Sphyraena japonica,そしてオオヤマトカマス Sphyraena africana(瀬能,2013).
 イブリカマスSphyraena iburiensisはDoiuchi and Nakabo (2005) によって,45標本に基づき記載されました.そのうち,ホロタイプを含む32標本は高知県土佐清水市の以布利で,残りの13標本は和歌山県串本町と静岡県伊東市の川奈で採集されました.種小名の”iburiensis”はタイプ標本が採集された以布利に因んでいます.本種はカマス科のうち,次の5形質からタイワンカマスSphyraena obtusata (Cuvier, 1829) に最も類似します:体側に2本の縦帯がある,第1鰓弓の鰓耙が2本,側線有孔鱗数(イブリカマスでは81–85 vs. タイワンカマスでは78–85),第1背鰭の鰭膜が完全に透明,尾鰭が黄色でその縁辺が黒い.しかし,イブリカマスは側線上方鱗数が多い(イブリカマスでは8.5–9.5 vs. タイワンカマスでは5–7.5),側線下方鱗数が多い(10.5–11.5 vs. 8.5–9.5),頬の鱗が多い(7–10 vs. 5–7),上顎が短い(10.7–12.8 % SL vs. 11.4–14.3 % SL),体側の2縦帯の状態(下方の縦帯が明瞭 vs. 上下とも不明瞭)などの特徴によってタイワンカマスと識別されます(Doiuchi and Nakabo, 2005).イブリカマスは記載当時には南日本の太平洋沿岸からのみ知られていましたが,現在はアンダマン海や紅海からも記録されています(Doiuchi and Nakabo, 2005;土居内,2018).
 写真個体は,2019年1月24日に本種のタイプ産地である,土佐清水市の以布利漁港(定置網)で採集されました.当日はイブリカマスの他に,クロマグロ,ウルメイワシやカタクチイワシなどが水揚げされていました.本種は,比較的最近の2005年に記載されましたが,珍しい種というわけではなく,土佐清水市のスーパーでは普通に売られている身近な魚です(中坊,2006).以布利では,本種とタイワンカマスは区別されることなく“アラガマス”と呼ばれているそうです(土居内,2001).皆さんの身近にも,よく調べてみると学名がない,新種の魚が隠れているかもしれません.

参考文献

土居内龍.2001.カマス科.中坊徹次・町田吉彦,山岡耕作・西田清徳(編),pp. 254–257. 以布利 黒潮の魚 ジンベイザメからマンボウまで.大阪 海遊館,大阪.

土居内龍.2018.カマス目.中坊徹次(編),pp. 442–443.小学館の図鑑Z 日本魚類館 精緻な写真と詳しい解説.小学館,東京.

Doiuchi, R. and T. Nakabo. 2005. The Sphyraena obtusata group (Perciformes: Sphyraenidae) with a description of a new species from southern Japan. Ichthyological Research, 52: 132–151.

中坊徹次.2006.いのちの科学プロジェクトシリーズ.テーマ:文理融合をめざして.10 新種の発見とはどういうことか 食卓に上った新種の魚.健康と環境,19 (4): 417–428.
http://www.taishitsu.or.jp/inochi-u/homemenu/web-content/NewFiles/rejime14.html(参照 2019-03-16).

瀬能 宏.2013.カマス科.中坊徹次(編),pp. 1636–1639, 2219–2221. 日本産魚類検索 全種の同定.第3版.東海大学出版会,秦野.

写真標本:BSKU 125592,201mm SL,2019年1月24日,高知県土佐清水市以布利漁港,定置網,採集:遠藤広光・水町海斗,写真撮影:水町海斗.

(水町海斗)


2019年3月の魚


カマツカPseudogobio esocinus (Temminck and Schlegel, 1846) (コイ目コイ科カマツカ属)

 コイ科 Cyprinidae は 世界では367属3006有効種が,日本では 25属64種・亜種が報告され,ユーラシア,アフリカおよび北米大陸の淡水域に分布します.本科魚類は 背鰭 が1基で,口 が 突出可能で 顎に歯がないこと,咽頭歯 が1–3列に並ぶこと,その列中の歯数 が8をこえないことなどが特徴です(Nelson et al., 2016; 馬渕,2018).
 カマツカ属(Pseudogobio)は Bleeker (1860) によって,カマツカGobio esocinus Temminck and Schlegel, 1846をタイプ種として設立されました.本属魚類は,日本,朝鮮半島,中国およびベトナムに分布し,現在31名義種中 6種が有効とされています (Eschmeyer et al., 2019).そのうち,日本からはカマツカPseudogobio esocinus (Temminck and Schlegel, 1846) の1種のみが知られています(細谷,2013).本種は 体 が細長く,吻 が長いこと,口 が下方に突出すること,1対の口髭をもつこと,口唇に乳頭突起があること,胸鰭と腹鰭 が水平に位置する ことなどが特徴です(細谷,1989; 川瀬,2018).
 本種は Temminck and Schlegel (1846) によって,11標本に基づき記載されました(原記載の図).この時 ホロタイプの指定は行われず,後にBoeseman (1947) によって,これらシンタイプスシリーズのうちRMNH 2478がレクトタイプに 指定されました.現在,レクトタイプとパラレクトタイプの10標本はオランダのライデンにあるナチュラリス多様性センターに,パラレクトタイプの1標本はドイツのベルリン自然史博物館にそれぞれ所蔵されています(Eschmeyer et al., 2019) .
 Tominaga et al. (2016) は カマツカが分布する全地域から約1200個体を採集し,ミトコンドリアDNAのcytochrome b遺伝子の部分塩基配列を解析して,日本に分布するカマツカの系統類縁関係を明らかにし ま した.その結果,日本には遺伝的に大きく異なる3系統群 が存在し,本州中部の山岳地帯を隔てた西日本にGroup A とGroup Bが,東日本にはGroup Cが分布することが 判明しました.また,富永 ・川瀬(2015) は 外部形態の比較により,3系統群間には吻長,肛門−臀鰭起点間長,口唇長,腹鰭長,そして斑紋など の差異 で識別できること を 示しました.さらに,富永ほか(2015)は文献調査 とPseudogobio esocinus のタイプ標本調査から,Group AがPseudogobio esocinus の特徴に一致し,Group BおよびGroup C がそれぞれ未記載種であると報告 しています .
 写真の標本は,2019年2月7日に,高知市宗安寺キャンプ場近くの鏡川の砂底でじっとしていたところを玉網で採集しました.Tominaga et al. (2016) は 高知県から採集された 32個体も解析に含め ており,すべ てGroup Aであることが報告されています.したがって,写真の標本はGroup Aに属し,正真正銘のカマツカPseudogobio esocinus であると思われます.

参考文献
 
Bleeker, P. 1860. Conspectus systematis Cyprinorum. Natuurkundig Tijdschrift voor Nederlandsch Indië , 20: 421–441.

Boeseman, M. 1947. Revision of the fishes collected by Burger and Von Siebold in Japan. Zoologische Mededelingen (Leiden) , 28: i–vii+1–242, pls.1–5.

Eschmeyer, W. N., R. Fricke and R. van der Laan. 2019. Catalog of fishes: genera, species, reference: http://researcharchive.calacademy.org/research/ichthyology/catalog/fishcatmain.asp. Electronic version accessed 20 Jan. 2019.

細谷和海.1989.コイ科.川那部浩哉・水野信彦(編),pp. 294–315. 山渓カラ―名鑑 日本の淡水魚. 山と渓谷社, 東京.

細谷和海.2013. コイ科. 中坊徹次 (編),pp. 308–327, 1813–1819.日本産魚類検索 全種の同定 第三版. 東海大学出版会, 秦野.

川瀬成吾.2018.カマツカ. 中坊徹次(編),p. 104.小学館の図鑑 Z 日本魚類館 精緻な写真と詳しい解説.小学館,東京.

馬渕浩司.2018.コイ科. 中坊徹次(編),pp. 88–89.小学館の図鑑 Z 日本魚類館 精緻な写真と詳しい解説.小学館,東京.

Nelson, J. S., T. C. Grande and M. V. H. Wilson. 2016. Fishes of the world. 5th ed. John Wiley and Sons, Hoboken. xil+707 pp.

Temminck, C. J. and H. Schlegel. 1846. Pisces (Part 5), P. F. Von Siebold (ed.), pp. 173–269. Fauna Japonica. Leiden . 323 pp., pls. 1–144. *原記載の図

富永浩史・川瀬成吾.2015.日本産カマツカ属の未記載種.p. 23. 2015年度日本魚類学会年会講演要旨,Advance Abstracts for the 48th Annual Meeting , 2015.日本魚類学会,東京.

Tominaga K., J. Nakajima and K. Watanabe. 2016. Cryptic divergence and phylogeography of the pike gudgeon Pseudogobio esocinus (Teleostei: Cyprinidae): a comprehensive case of freshwater phylogeography in Japan. Ichthyological Res each, 63: 79–93.

写真標本:BSKU 125644,158.5 mm SL,2019年2月7日,鏡川,採集・撮影:永江栞奈.

(永江栞奈)


2019年2月の魚



ムロトスイセイアシロ Benthocometes australiensis Nielsen, 2010 (アシロ目アシロ科)

 アシロ目(Ophidiiformes)魚類は三大洋の潮間帯から深海域に広く分布し,5科119属約531種を含みます(Nelson et al., 2016).本目は卵生のアシロ亜目(Ophidioidei)と胎生のフサイタチウオ亜目(Bythitoidei)の2亜目に分類され,アシロ科はアシロ亜目に含まれます.アシロ科は上主上顎骨をもつこと,一般的に背鰭鰭条が向かい合う臀鰭鰭条と同長か長いことで,同じアシロ亜目のカクレウオ科(Carapidae)と識別できます(Nielsen and Cohen, 1999).本科は世界では52属267種が(Fricke et al., 2018a, 2018b),日本からは27属47種が報告されています(中坊・甲斐,2013;遠藤,2019;Mizumachi and Endo, 2019) .

 スイセイアシロ属 Benthocometes は Goode and Bean (1896) によって設立され,主鰓蓋骨に2本の鋭く強い棘をもつこと,第1鰓弓の長い鰓耙が 3–12本であること,6–8本の擬鰓をもつこと,背鰭前担鰭骨数が 4–10であること,吻が丸く,眼径が吻長と同長か長いことから,アシロ科の他属と識別されます (Nielsen and Cohen, 1999; Nielsen 2010).本属魚類は Benthocometes robustus (Goode and Bean, 1886) とムロトスイセイアシロBenthocometes australiensis Nielsen, 2010の2有効種のみを含み,Benthocometes armatus (Döderlein, 1886)とBenthocometes muraenolepis (Vaillant, 1888)は前者の新参異名とされています(Bougis and Ruivo, 1954; Nielsen, 2010).ムロトスイセイアシロはNielsen (2010) によって,北西オーストラリアの水深 390–394 mで採集された1個体に基づき記載されました.本種はもう一方のB. robustusと比べて,第1鰓弓の長い鰓耙数が少ないこと(ムロトスイセイアシロでは 3 vs. B. robustusでは 9–12),背鰭前担鰭骨数が少ないこと(4 vs. 7–10),口蓋骨歯帯の形状(丸い vs. 細長い),背鰭前長が短い(体長の17.7–22.0 % vs. 26.5–31.0 %)などの9形質によって識別されます(Nielsen, 2010; Mizumachi and Endo, 2019).ムロトスイセイアシロの日本からの記録は,Mizumachi and Endo (2019) によって,2006年4月に高知県室戸岬沖の海洋深層水の取水(水深320 m)で得られた1標本に基づき報告され,スイセイアシロ属とムロトスイセイアシロの標準和名が提唱されました.和名の由来は,日本産標本が得られた地名(=室戸)と属名の一部”comet”(=彗星)に因みます.本種ではこれまで北西オーストラリア産のホロタイプ以降の採集記録がなく,日本産標本は本種の2例目の採集記録かつ北半球初記録となりました.

 写真の標本は高知県海洋深層水研究所から寄贈され,Mizumachi and Endo (2019) によって北半球および日本初記録として報告されました.高知県海洋深層水研究所では,室戸岬沖の水深320mと344mに取水口を設置し,海洋深層水を汲み上げています(高知県,2010).時には海洋深層水と共に迷入生物が汲み上げられ,これまでにチゴダラやシギウナギ,キツネソコギスなどの標本を寄贈して頂きました.また,ムロトスイセイアシロの他にも,アシロ目の日本初記録種で,世界で2例目の採集記録となる標本も得られています.そちらの方も,近いうちに報告したいと考えています.

引用文献

Bougis, P. and M. Ruivo 1954. Recherches sur le poisson de profundeur Benthocometes robustus (Goode et Bean) (=Pteridium armatum, Döederlein) (Brotulidae). Vie et Milieu, Supplement, 3: 155–209.

遠藤広光.2018.アシロ目.中坊徹次(編),pp. 164-165.小学館の図鑑Z 日本魚類館 精緻な写真と詳しい解説.小学館,東京.

遠藤広光.2019.日本産魚類の追加種リスト(更新日2019/01/24 251種):http://www.fish-isj.jp/info/list_additon.html (参照2019-01-30).

Fricke, R., W. N. Eschmeyer and R. van der Laan 2019a. Catalog of fishes: genera, species, reference: http://researcharchive.calacademy.org/research/ichthyology/catalog/fishcatmain.asp. Electronic version accessed 15 January 2019.

Fricke, R., W. N. Eschmeyer and J. D. Fong 2019b. Species by family/subfamily: http://researcharchive.calacademy.org/research/ichthyology/catalog/SpeciesByFamily.asp. Electronic version accessed 15 January 2019.

Goode, G. B. and T. H. Bean 1896. Oceanic ichthyology, a treatise on the deep-sea and pelagic fishes of the world, based chiefly upon the collections made by the steamers Blake, Albatross, and Fish Hawk in the northwestern Atlantic, with an atlas containing 417 figures. Special Bulletin United States National Museum, 2: 1–553.

高知県.2010.海洋深層水研究所:http://www.pref.kochi.lg.jp/soshiki/151407/meinyu-top.html(参照2019-01-25).

Mizumachi, K. and H. Endo 2019. New Japanese record of the rare cusk eel Benthocometes australiensis (Actinopterygii: Ophidiiformes: Ophidiidae), a first record of the species from the Northern Hemisphere. Species Diversity, 24(1): 7–10. DOI: 10.12782/specdiv.24.7

中坊徹次・甲斐嘉晃. 2013. アシロ科. 中坊徹次(編), pp. 514–524, 1877–1880. 日本産魚類検索 全種の同定. 第3版. 東海大学出版会, 秦野.

Nelson, J. S., T. C. Grande and M. V. H. Wilson. 2016. Fishes of the world. 5th ed. John Wiley and Sons, Hoboken. xli + 707pp.

Nielsen, J. G. 2010. Revision of the bathyal fish genus Benthocometes (Teleostei: Ophidiidae) with a new species from off NW Australia. Zootaxa, 2561: 59–68.

Nielsen, J. G and D. M. Cohen. 1999. Ophidiidae except for Ophidiinae. Pages 26–93 in J. G. Nielsen, D. M. Cohen, D. F. Markle and C. R. Robins, eds. FAO Species catalogue. Volume 18. Ophidiiform fishes of the world (Order Ophidiiformes). An annotated and illustrated catalogue of pearlfishes, cusk-eels, brotulas and other ophidiiform fishes known to data. FAO Fisheries Synopsis. No. 125. FAO, Rome.

写真標本:BSKU 117791,114.4 mm SL,液浸標本,2006年4月4日,室戸岬沖 水深 320m,採集:高知県海洋深層水研究所,写真撮影:水町海斗.

(水町海斗)


2019年1月の魚

ブリ Seriola quinqueradiata Temminck and Schlegel, 1845(スズキ目アジ科ブリ属)

 アジ科(Carangidae)は世界では31属148種が,日本では24属61種が報告され,三大洋の暖海域に分布します(工藤,2018).本科魚類は体が側偏し,臀鰭に2本の遊離棘条をもつこと,尾柄が短く尾鰭が二叉することなどが特徴です(木村,1997;Nelson et al., 2016;工藤,2018).アジ科は,コバンアジ亜科(Trachinotinae),イケカツオ亜科(Scomberoidinae),ブリモドキ亜科(Naucratinae),そしてアジ亜科(Caranginae)の4亜科に分類され,ブリはブリモドキ亜科のブリ属(Seriola)に含まれます(Nelson et al., 2016).ブリ属(Seriola)は,Cuvier (1816) によってCaranx dumerili Risso 1810をタイプ種として設立されました.属名のSeriolaは,地中海に分布する本属のタイプ種(S. dumerili)のイタリア語での呼称に因みます(中坊・平嶋,2015).本属魚類は三大洋に分布し,側線に稜鱗がなく,成魚に暗色の横帯や斜帯がないことが特徴です(中坊,2018).本属は11有効種(Eschmeyer et al., 2018)を含み,日本近海にはブリS. quinqueradiata Temminck and Schlegel, 1845,ヒラマサS. lalandi Valenciennes, 1833,カンパチS. dumerili (Risso, 1810),およびヒレナガカンパチS. rivoliana Valenciennes, 1833の4種が分布します(瀬能,2013;中坊,2018).ブリとヒラマサはカンパチやヒレナガカンパチに比べて遊泳型の体型をもち,より沖合に生息しています(2018).

 ブリは長崎県の出島に滞在したP. F. vonシーボルト(1796–1866)の収集標本による「Fauna Japonica(日本動物誌)」(1833–1850)の中で,Temminck and Schlegel (1845) により長崎県産の6標本に基づき記載されました.この時,ホロタイプは指定されておらず,Boeseman (1947) によって,シンタイプスシリーズのうちRMNH D2176がレクトタイプに選定されました.レクトタイプとパラレクトタイプの4標本はオランダのナチュラリス多様性センターに,レクトタイプ1標本はドイツのベルリン自然史博物館に所蔵されています(Eschmeyer et al., 2018).本種は小笠原諸島,北海道全沿岸から九州南岸までの日本海,東シナ海,太平洋沿岸,屋久島,瀬戸内海,朝鮮半島の南岸と東岸,済州島,千島列島南部の太平洋沿岸,稀に沖縄,そしてピーター大帝湾から報告されています(瀬能,2013).日本産ブリ属4種のうち,ブリはヒラマサと最も類似し,ヒラマサに比べて体が少し厚く,上顎後端上部が角張っていることから識別できます.また,生鮮時には,ヒラマサの方が体側中央の黄色帯がより顕著であることが特徴です(瀬能,2013;中坊,2018).本種の回遊範囲は年齢が高くなるほど広くなり,魚類やイカ類を食べて成長します(中坊,2018).ブリは出世魚で体長によって呼び名が変わります.東京都では体長15p未満をワカシ,40p程度をイナダ,60p程度をワラサ,90p以上をブリと呼ぶのに対して,兵庫県では9p程度をツバス,30–45pをメジロ,60p程度をニネンゴ,90p程度をサンネンゴと呼びます.また,高知県では9p程度をモジャコ,45–90pをハマチ,60p程度をブリ,75p以上になるとオオイナと呼ぶそうです(Okada, 1955).

 写真標本は,2014年5月24日に研究室OBの三澤遼さんが,高知県土佐市宇佐町の一文字沖堤防で釣り上げた個体です.高知県では,室戸市や土佐清水市の沿岸を中心に,大敷網と呼ばれる大型定置網が約50カ所設置されています(高知県,2014).特に室戸市では大敷網によるブリ漁が盛んで,佐喜浜漁港,椎名漁港,三津漁港,高岡漁港で水揚げされています.ブリが産卵を控える晩冬から春にかけての3〜5月は定置網の盛漁期で,脂ののったブリが大量に漁獲されます.そこで漁獲されたものの中でも,10kgを超えるものを“定置獲れたて室戸ブリ”と呼んでいるそうです(全国漁業協同組合連合会).脂ののったブリは刺身だけでなく,しゃぶしゃぶやブリ大根,あら炊きなど,様々な料理で美味しく頂けます.機会があれば,ぜひ室戸のブリを食べてみてください.

写真標本:BSKU 114366, 171.6 mm SL 2014年5月24日, 高知県土佐市宇佐町一文字沖堤防,釣り,採集・写真撮影:三澤遼.

参考文献

Boeseman, M. 1947. Revision of the fishes collected by Burger and Von Siebold in Japan. Zool. Meded. 28: i–vii + 1–242, pls.1–5.

Cuvier, G. 1816. Le Règne Animal distribué d'après son organisation pour servir de base à l'histoire naturelle des animaux et d'introduction à l'anatomie comparée. Les reptiles, les poissons, les mollusques et les annélides. Edition 1. Volume 2, Paris. xviii + 532 pp

Eschmeyer, W. N., R. Fricke and R. van der Laan. 2018. Catalog of fishes: genera, species, reference: http://researcharchive.calacademy.org/research/ichthyology/catalog/fishcatmain.asp. Electronic version accessed 7 Dec. 2018.

高知県.2014.大型定置網漁:http://www.pref.kochi.lg.jp/soshiki/040401/teitiami.html(参照2018-12-8).

工藤孝浩.2018.アジ科. 中坊徹次(編),pp. 258–259.小学館の図鑑Z 日本魚類館精緻な写真と詳しい解説.小学館,東京.

木村清志.1997.アジ科.岡村収・尼岡邦夫(編),pp. 312–327. 山渓カラ―名鑑 日本の海水魚. 第三版.  山と渓谷社, 東京.

中坊徹次. 2018.ブリ属. 中坊徹次(編),pp. 266–267.小学館の図鑑Z 日本魚類館精緻な写真と詳しい解説.小学館,東京.

中坊徹次・平嶋儀宏. 2015. 日本産魚類全種の学名 語源と解説.東海大学出版部, 秦野.i–xv + 372 pp.

Nelson, J. S., T. C. Grande and M. V. H. Wilson. 2016. Fishes of the world. 5th ed. John Wiley and Sons, Hoboken. xli + 707pp.

Okada Y. 1955. Fishes of Japan. Maruzen Co., Ltd., Tokyo. 1–434 + 1–28 pp.

瀬能宏. 2013. アジ科. 中坊徹次 (編),pp. 878–899, 1991–1995.日本産魚類検索全種の同定 第三版. 東海大学出版会, 秦野.

Temminck, C.J. and H. Schlegel. 1845. P.F. de Siebold's Fauna Japonica. Pisces. Parts 7–9: 113-172, pls. 1–196 + A.

全国漁業協同組合連合会.定置獲れたて室戸ブリ: http://www.pride-fish.jp/JPF/pref/detail.php?pk=1445923867(参照2018-12-8).

*椎名漁港で2017年4月20日に撮影したブリの写真

写真標本:BSKU 114366, 171.6 mm SL 2014年5月24日, 高知県土佐市宇佐町一文字沖堤防,釣り,採集・写真撮影:三澤遼.

(面平恵理子)


Copyright (C) Laboratory of Marine Biology, Faculty of Science, Kochi University (BSKU)