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2001年9月
ウスバノドグロベラ Macropharyngodon
moyeri Shepard et Meyer,
1978(スズキ目ベラ科)
ベラ科ノドグロベラ属は10種を含み,インド-太平洋の熱帯のサンゴ礁を主な生活空間としています.ベラ科の中では体が小さなグループで,親の標準体長はせいぜい13ないし15cmしかありません.日本からは本種の他に,ノドグロベラ(M.
meleagris)とセジロノドグロベラ(M. negrosensis)の2種が知られています.
本種は1978年に三宅島産の標本をもとに新種として記載されました.その後,伊豆半島,沖縄,台湾で記録されましたが,これら以外での生息は報告されていません.沖の島はこれらのほぼ中間に位置することから,本種が南日本の太平洋岸に広く分布している可能性が考えられます.
平田他(本ホームページ「土佐の魚」を参照)は,今回の採集地である沖の島に隣接した柏島で精力的な調査を行い,多くの温・熱帯性の魚類を高知県初記録として報告しました.しかし,本種はこの報告に含まれていません.今後,正式な報告を行う予定です.
属名のMacropharyngodon は,ギリシャ語のmakros
(大きな),pharynx (のど,咽頭),odon (歯)の合成語で,本属の特徴の一つである臼歯状の咽頭歯にちなんでいます.本種の種小名の
moyeri は,命名者が三宅島で協力を受けたジャック・モイヤー博士(Dr. Jack T. Moyer)に献名したものです.献名する場合,男性一人であれば名前の最後にiを付ける決まりです.女性一人なら,aeを付けることになっていますが,aで終わる名前の場合はeしか付けません.和名のウスバノドグロベラの「ウスバ」は,両顎の前方の歯が扁平なことにちなんでいます.本属では,M.
moyeri と M. kuiteri を除き,両顎の歯はすべて円錐歯です.
参考文献
Randall, J. E.
1978. A revision of
the Indo-Pacific labrid fish genus Macropharyngodon, with
descriptions of five new species. Bull. Mar. Sci., 28(4): 742-770.
Shepard,
J. W. and K. A. Meyer. 1978. A
new species of the labrid fish genus Macropharyngodon from
southern Japan. Japan. J. Ichthyol., 25(3): 159-164.
島田和彦.2000.ベラ科.中坊徹次(編),pp. 969-1013, 1582-1587,日本産魚類検索:全種の同定(第2版).東海大学出版会,東京.
*遠藤広光・山川 武・平田智法・町田吉彦.2001.鹿児島県と高知県で採集されたベラ科の稀種ウスバノドグロベラ.Bull. Mar. Sci. Fish. Kochi
Univ., (21): 41-45.
(遠藤広光・町田吉彦)
(C) BSKU Laboratory of Marine Biology,
Kochi University