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2001年10月
ヨロイウオ Centriscus scutatus Linnaeus(トゲウオ目ヘコアユ科)

 ヘコアユ科は2属4種を含み,日本にはヨロイウオのほかヘコアAeoliscus strigatus (Gunther) が分布しています.本種はインド-太平洋の熱帯域を中心に広く分布し,日本では和歌山県串本以南から知られています.高知県沿岸からの記録は稀で,写真個体は入野漁港の底曳き網の漁獲物の中から採集されました.
 この仲間は,通常頭を下にした"逆立ち"状態で定位し,枝サンゴ類やヤギ類のそばで群れをなしています.その姿勢に適したように背鰭,尾鰭,臀鰭がすべて腹側へ移動していること,また体が著しく扁平で透明な骨板で覆われていることが大きな特徴です.背鰭,尾鰭,臀鰭は,成長にともなって徐々に腹側へ移動するので,幼魚期には体の後端で普通の位置にあります(近縁の
サギフエ科のような位置関係).ヨロイウオは体の後端にある大きな背鰭棘の途中に可動部がないことで,ヘコアユと区別できます.属名の Centriscus は,強大な背鰭棘に因み,また種小名の scutatus は盾で防御したという意味です.英名の"shrimpfish" は,この鋭く尖った背鰭棘がエビ類の額角(がっかく rostrum)に似ていることに由来します.そう思ってみると,体の後部は何となくエビの頭に似ていますね.

(遠藤広光)


(C) BSKU Laboratory of Marine Biology, Kochi University