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2002年 2月
カイユウセンニンフグ Lagocephalus suezensis Clark et Gohar (フグ目フグ科)

 カイユウセンニンフグは,高知県土佐清水市以布利で行われた魚類相調査(大阪海遊館,高知大,京都大の共同調査)において日本で初めてその分布が確認され,中坊ほか(2001)「以布利・黒潮の魚 ジンベエザメからマンボウまで」の中で採集標本に基づき新標準和名が提唱された種です.日本周辺で,本種はこれまで近縁種のセンニンフグ Lagocephalus scleratus と混同されてきました.しかし,体側背面に不規則な模様をもつこと(センニンフグでは小黒点が散在)や体側の銀白色の横帯の幅が広いこと(センニンフグでは幅が狭い)などによりセンニンフグと区別できます.以布利での共同調査中に,京都大学の中坊徹次教授(日本産魚類検索図鑑の編者)が,センニンフグとしたものの中に斑紋の異なる2型が存在することに気が付きました.その後,大きさの異なる標本(幼魚や若魚)を集めて比較したところ,やはり両方の型が含まれていることが確認されました.その2型の片方は従来のセンニンフグに相当し,もう片方は文献の調査により L. suezuensis と判明しました.種小名の suezuensis は,本種のタイプ標本が紅海(おそらくスエズ近辺)で採集されたことに因んでいます.本種はインド.太平洋に広く分布し,日本では土佐清水市以布利以外での記録は明らかではありませんが,南日本の太平洋岸に出現するものと思われます.なお,これまでに記録された本種の最大個体はホロタイプの体長15.8 cm であり,この写真の標本はこれまでに知られる最大の個体ということになります.

写真標本データBSKU 87544, 2000年4月26日, 182 mm SL, 高知県土佐清水市以布利漁港で採集.

(遠藤広光)


(C) BSKU Laboratory of Marine Biology, Kochi University