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2002年 3月
ホシヨウジ Halicampus punctatus (Kamohara)(トゲウオ目ヨウジウオ科)


 ホシヨウジはタツノオトシゴの仲間も含まれるヨウジウオ科の魚類です.本科魚類の多くでは,雄に卵を保護する”育児のう”が発達します.ヨウジウオの仲間の体は,一見,昆虫やエビのような節があるように見えます.これは,体の表面がいくつかの体輪と呼ばれる骨質の板で覆われるためです.肛門より前にある体輪を躯幹輪,後にある体輪を尾部輪と呼びます.躯幹輪と尾部輪の数は,ヨウジウオの仲間を見分けるときの形質の1つです.

 ホシヨウジは成魚で15cmほどになります.躯幹部より尾部が長く,雄の尾部腹側には育児のうが発達します.各躯幹輪の側面に暗く縁取られた銀白色の大きな点があります.このことが本種の目立った特徴です.また,(この写真からは分かりにくいですが)鮮やかに青い小さな斑点が,頭や体の側面や背面のあちらこちらにあります.種小名の punctatus (ラテン語で”斑点のある”)はこれらに由来していると考えられます.

 ホシヨウジは日本でのみ分布が確認されています.相模湾から九州,日本海では山形県と佐渡島から報告があります.土佐湾では沖合いの底引き網で採集され,水深100〜150mと,ヨウジウオの仲間にしては深いところから出現します.一方, 伊豆半島では水深15〜20mの砂泥底での生息が確認されています.しかし,本種は標本数や観察例が比較的少なく,詳しい生態はわかっていません.

参考文献
瀬能 宏.2000ヨウジウオ科.中坊徹次(編),pp. 520-536, 1509-1515,日本産魚類検索:全種の同定(第2版).東海大学出版会,東京.
渋川 浩一.2001ヨウジウオ科.岡村收,尼岡邦夫(編),pp. 174-185,日本の海水魚.山と渓谷社.

写真標本データBSKU 42994 (139 mm SL, ♀), 42995 (144 mm SL, ♂), 1986年7月9日, 土佐湾水深約150 m で採集(こたか丸).

(高田陽子)


(C) BSKU Laboratory of Marine Biology, Kochi University