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2002年 5月
ヒチビキ
Erythrocles microceps Miyahara et Okamura, 1998(スズキ目ハチビキ科)
ヒチビキは,およそ水深200mに生息し,日本の太平洋側では土佐湾と九州-パラオ海嶺から,日本海側では兵庫県沖から記録されています.本種は土佐湾の底引き網漁でよく漁獲されるロウソクチビキ
Emmelichthys struhsakeri に体色や体型がよく似ています.そのため,新種として記載されるまではロウソクチビキとしばしば混同され,ロウソクチビキの名前で図鑑類や研究報告に標本写真が掲載されたこともあります.しかし,ヒチビキは体高が高いこと,第一および第二背鰭間の間隔が狭いことなどで明瞭にロウソクチビキと識別できます.
ヒチビキは高知市御畳瀬魚市場で採集された14個体および本学調査船豊旗丸が行った土佐湾中央部での底引き網調査で得られた1個体の合計15個体の標本に基づき1998年に新種として記載されました.このうち,ホロタイプ1個体とパラタイプ5個体はBSKU所蔵の標本です.その他のパラタイプは,国立科学博物館(NSMT),北海道大学水産学部(HUMZ),オーストラリア博物館(AMS)の登録標本として,それぞれ3個体ずつが各研究機関に保管されています.このようにタイプ標本の保管場所を複数の研究機関へ分散させることは,分類学的研究の便宜を図るためです.第一著者の宮原一氏(北海道大学大学院
HUMZ )は,本研究室OBであり,高知大学在学中の1992年4月22日に御畳瀬魚市場で上記のタイプ標本を採集しています.
参考文献
Miyahara, H. and O. Okamura. 1998. Erythrocles
microceps, a new emmelichthyid fish from
Kochi, Japan. Ichthyol. Res., 45(1): 85-88.
写真標本データ:BSKU 87467, 2000年4月9日, 御畳瀬魚市場(大手繰)で採集.
(遠藤広光)
(C) BSKU Laboratory of Marine Biology,
Kochi University