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2002年 6月
ハタタテガレイ Samaris cristatus Gray(カレイ目ベロガレイ科)

 ハタタテガレイは,日本では土佐湾沿岸のおよそ水深100m以浅の底引き網で稀に採集されます.また,1991年3月には伊豆半島(伊豆海洋公園付近)の水深25mで1個体が採集され,生時の水中写真も撮影されています(瀬能,1991).本種は,東シナ海や南シナ海,インド洋からも採集記録があり,インド-西部太平洋域に広く分布するようです.

 日本に分布するハタタテガレイ属はハタタテガレイのみであり,背鰭軟条の最初の10〜15本が白色で極めて長いこと,有眼側の腹鰭鰭条もやや長く伸びることで,日本産のベロガレイ科の他2属4種(ベロガレイ Plagiopsetta glossa,ツキノワガレイ Samariscus japonicus,ツマリツキノワガレイ Smariscus latus,コツキノワガレイ Samariscus xenicus)と容易に識別できます.本種の和名は,長い背鰭鰭条に因んで付けられたのでしょう.しかし,体の地味な体色に反して,広げたときには極めて目立つ白色の背鰭鰭条は,何のために使われているのでしょうか?捕食者への威嚇に使われるのか,この部分が何かに擬態しているのか,本当のところはわかりません.

参考文献
中坊徹次.2000.ベロガレイ科.中坊徹次(編),pp. 1381-1382, 1638, 日本産魚類検索:全種の同定(第2版).東海大学出版会,東京.
瀬能 宏.1991.今月の魚.ハタタテガレイ.伊豆海洋公園通信,2(9): 1.

写真標本データBSKU 58456, 2002年4月25日, 高知県幡多郡大方町入野漁港で採集.

(遠藤広光)


(C) BSKU Laboratory of Marine Biology, Kochi University