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2004年 11月
ムネエソ
Sternoptyx diaphana Hermann, 1781(ワニトカゲギス目ムネエソ科)

 ムネエソは,ワニトカゲギス目ムネエソ科に属する全長5cm程の中深層性魚類です.本種は世界の熱帯から温帯水域にかけて広く分布し,水深 200 mから3,000 m に生息します.日本では北海道から沖縄にかけての太平洋岸沖に出現します.本科はキュウリエソ亜科とムネエソ亜科に分類され,日本周辺からは6属17種が報告されています.ムネエソ亜科は,眼が大きいこと,体が小判状で高く短いこと,体側下方に発光器が並ぶことで他の本目魚類との識別は容易です.本亜科の中でも,ムネエソ属 Sternoptyx は,他のテンガンムネエソ属 Argyropelecusホウネンエソ属 Polyipnus に比べると,体全体が斜め後方へ傾いたように変形し(四角形から平行四辺形に),臀鰭基底部に透明域をもちます.

 ムネエソ科魚類は,他のワニトカゲギス目やハダカイワシ目,ヒメ目などの中深層性魚類と同様に,わずかに光が届く中深層で自身の影を消すために発光器を使います.これはカウンターシェーディングと呼ばれています.背面が黒く体側が銀色の体と発光器からの弱い光(生息水深に達する光と同量)により,隠れる場所のない中深層で捕食者の眼を欺くことができます.

参考文献
Aizawa, M. 2002. 96. Sternoptychidae, marine hatchetfishes. Pages 311-317, 1475-1476 in T. Nakabo, ed. Fishes of Japan with pictorial keys to the species English edition. Tokai University Press, Tokyo.

写真個体BSKU 51870, ca. 40 mm SL,2000年8月26日,土佐湾中央部,中央水産研究所調査船こたか丸,オッタートロール,水深800m.

(遠藤広光)


(C) BSKU Laboratory of Marine Biology, Kochi University