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2011年1月の魚


オオミミズハゼ Luciogobius grandis Arai, 1970(ハゼ目ハゼ科)

 ミミズハゼ属は体長5 cm前後の小型のハゼ科魚類で,ロシア,中国,朝鮮,日本にかけての極東アジアのみに分布しています.現在は世界で約16種,そのうち日本では約14種が知られています.本属魚類の特徴は,ミミズのような長い円筒形の体と,背鰭が体の後半部に1つのみであり,扁平した頭部をもちます.本属は種によって多少異なりますが,純淡水から汽水,海水と幅広い生息域で見られますが,礫間を好むため,あまり人目にはつきません.
 オオミミズハゼはTomiyama (1936) によりミミズハゼ (L. guttatus Gill, 1859)の4型のうちの一つとして報告され,後にArai (1970) により新種として発表されました.体は無鱗で,眼は皮下に埋没せず,体長は本属内では最も大きく最大で約10 cmとなり,胸鰭の上方と下方に数本の遊離軟条があることから近縁種と容易に識別できます.また,本種は外海に面した海岸の転石の間隙に生息します(藍澤, 1997).
 近縁種であるイドミミズハゼ(L. pallidus Regan, 1940)とドウクツミミズハゼ(L. albus Regan, 1940)は,それぞれ絶滅危惧IB類と情報不足とされました(高知県RDB).また,本属魚類は分類上の問題点を多く含み,現在ミミズハゼとされている種の中に十数種の未記載種が含まれると予想されています(鈴木他,2004).
 本属は礫間にイカの足を垂らすと,釣り針無しでも容易に釣れるそうです.かき揚げにすると美味しく頂けるそうですが,釣りの餌として使われます.

参考文献
Arai, R., 1970. Luciogobius grandis, a new goby from Japan and Korea. Bull. Natn. Sci. Mus., Tokyo, 13(2):199-206, pl. 1.
藍澤 正宏.2004.オオミミズハゼ.p. 620 in 岡村 収・尼岡邦夫,編.日本の海水魚 第3版,山と渓谷社,東京.
高知県レッドデータブック〔動物編〕編集委員会(編).2002.高知県レッドデータブック〔動物編〕.高知県文化環境部環境保全課,高知,470pp.
鈴木寿之・渋川浩一・矢野維幾(瀬能 宏,監修).2004.決定版 日本のハゼ.536pp.

写真標本データ
BSKU 95264,54.4 mm SL 2008年7月7日,高知県香南市手結海岸,採集・写真撮影 朝田貴之

(坪井尚美)


(C) BSKU Laboratory of Marine Biology, Kochi University