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2011年3月の魚

ホソウケグチヒイラギ Secutor indicius Monkolprasit, 1973(スズキ目ヒイラギ科)写真2 写真3

 ヒイラギ科の魚類は主に内湾や沿岸の浅所および河口から河川汽水域の砂泥底に生息しており(木村,2007),日本では5属13種が知られています(木村ほか,2008).ホソウケグチヒイラギはウケグチヒイラギ属に属しており,日本においては本種とヤンバルウケグチヒイラギの2種が知られています.本属の特徴は口が上向きで前上方に伸びること,口は閉じた状態だとほぼ垂直になることなどで本科他属と区別することができます(木村ほか,2008).
 ホソウケグチヒイラギは鹿児島県内之浦湾で採集された標本に基づき,日本初記録として報告されました(木村ほか,2008).本種は体高が低いこと,体側にある横縞がほぼ垂直で15 – 22本あることなどで同属他種と見分けることができ,和名の「ホソ」は,この体高が低い(体が他種に比べやや細長い)という特徴に因んで付けられています(木村ほか,2008).
 ヒイラギはサビキ釣りの対象魚として知られており,高知県ではニロギと呼ばれています.数釣りが楽しめ,食味もよく人気のある魚です.写真の標本も地元の方が香南市吉川漁港にて釣りで採集されたものです.本種は高知県沿岸で発見の報告がなく初記録であり,これまで知られていた分布の北限記録です.地元の方の御協力がなければ,今後も発見はされていなかったかもしれません.もし,釣りで見慣れない魚が釣れたときは逃がしてしまうのではなく,どんな種名の魚か調べてみるのも良いかもしれません.それが新たな発見につながる可能性があります.

参考文献
木村清志・伯耆匠二・山寺守彦・本村浩之.2008.鹿児島県で採集された日本初記録のヒイラギ科魚類ホソウケグチヒイラギ(新称)Secutor indicius .魚類学雑誌,55(2): 111 – 114.
木村清志・木村良子・池島 耕・本村浩之・岩槻幸雄・吉野哲夫.2008.ヒイラギ科魚類各属の標準和名.魚類学雑誌,55(1):62 – 63.
木村清志.2007.ヒイラギ科.岡村 収・尼岡邦夫編.山溪カラー名鑑:日本の海水魚.山と渓谷社,東京,pp.327.

標本写真データ
BSKU104501,94.9 mm SL,2010年10月22日,高知県香南市吉川漁港,採集・寄贈:竹内健二,写真撮影 劔物健太.

(劔物健太)


(C) BSKU Laboratory of Marine Biology, Kochi University