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2017年10月の魚

バショウカジキ Istiophorus platypterus (Show, 1792) (スズキ目カジキ亜目マカジキ科)

 マカジキ科魚類は外洋表層遊泳性の大型種の5属9種からなり,水産上あるいは大型魚の釣りのターゲットとして重要なグループです(Nakamura, 1983; 下瀬,2016),日本周辺には,クロカジキ,シロカジキ,マカジキ,フウライカジキ,そしてバショウカジキの5属5種が分布しています(下瀬,2016).メカジキは腹鰭がなく,腹鰭をもつマカジキ科とは異なり,メカジキ科に分類されています.
 バショウカジキは長く尖った吻と英語名のSailfishの通り高く,広い背鰭をもつことが特徴です. 日本では新潟県と宮城県以南の日本沿岸から沖合に出現し,インド-太平洋の熱帯の外洋域を中心に広く分布します(中坊・土居内,2013;下瀬,2016).本種の遊泳速度は時速100kmを超え,長い吻で餌となる魚を叩いてから食べることが知られており,捕食行動も観察されています(下瀬,2016).
 日本で一般に使われているマカジキ科2種の学名については混乱があります.これは世界ではシロカジキの学名に Istiompax indica (Cuvier, 1832)が,クロカジキの学名に Makaira nigricans Lacepède, 1802がそれぞれ使われており(Collette et al., 2006),「日本産魚類検索第三版」に掲載された学名とは異なるためです(中坊・土居内,2013).中坊・土居内(2013)では,シロカジキはバショウカジキ属の Istiophorus indica (Cuvier, 1832)とされ ,Collette et al. (2006)以降は Istiompax (和名はシロカジキ属)を使うことが正しいという見解です(下瀬,2007, 2016).また,日本でクロカジキに使われてきた Makaira mazara (Jordan and Snyder, 1901)は,M. nigricans の新参シノニムとみなされています(Collette et al., 2006).多くの人が参照する「日本産魚類検索第三版」とは異なるので,注意が必要です.

★マカジキ科2種の正しい学名
シロカジキ Istiompax indica (Cuvier, 1832)
クロカジキ Makaira nigricans Lacepède, 1802

参考文献
Collette, B.B., J.R. McDowell and J.E. Graves. 2006. Phylogeny of recent billfishes (Xiphioidei). Bull. Mar. Sci., 79(3): 455-468.
中坊徹次・土居内龍.マカジキ科.中坊徹次(編),pp. 1633-1634, 2218. 日本産魚類検索 全種の同定.第三版.東海大学出版会,秦野.
Nakamura, I. 1983. Systematics of the billfishes (Xiphiidae and Istiophoridae). Publ. Seto Mar. Biol. Lab., 28(5/6): 255-396.
Nelson, J.S., T.C. Grande and M.V.H. Wilson. 2016. Fishes of the world. 5th ed. John Weily & Sons, Hoboken. xli+707pp.
下瀬 環.2007. カジキの分類.BIG GAME FORUM, 海と巨魚との新しい関わりを提案する News & Views. BIG GAME, 2007(4): 64-67.
下瀬 環.2016. カジキ亜目〜剣状の吻をもつ,外洋性の大型魚〜クロカジキ・シロカジキ・マカジキ・フウライカジキ・バショウカジキ・メカジキ.中坊徹次,編監.松沢陽士ほか,写真.日本の魚とはどのようなものか.小学館のWEB図鑑Z(2016年8月更新).http://bp.shogakukan.co.jp/z_sakana/vol8.html
写真標本:BSKU 123250, 336 mm SL,2017年8月1日,高知県土佐清水市以布利漁港(大敷き網)で採集.

(遠藤広光)

(C) BSKU Laboratory of Marine Biology, Kochi University