
高知には、「高知県立美術館」という素晴らしいミュージアムがあります。地域を活性化させるには、産業面だけではなく文化面も豊かにしていく必要があります。今年も、高知県立美術館の学芸員のみなさんに講師になっていただき、「高知の美術」について講義いただきます。
高知県立美術館では6名の学芸員が日々業務を行なっています。展覧会の企画実施や作品の保存管理、出前講座やワークショップなどなどその仕事内容は多岐にわたり、県民の方々の多様なニーズにお応えしています。昨年に引き続き今回の講座では、そのような美術館の取り組みと並行して行なっている調査研究の内容について、担当する学芸員から直接お話しいただき、美術の素晴らしさ、文化施設の意義(アートセンター)についてみんなで考えてみたいと思います。
どうぞ、お気軽にご聴講ください。
第1回 「マックス・ペヒシュタイン〜南洋に渡った画家」 奥野 克仁
ドイツ表現主義を代表する画家のひとり、マックス・ペヒシュタイン(1881-1955)は、同時代でもっとも成功したアーティストとして財を成し、1914年、夫人を伴って豪華客船で南洋への旅行に出発しました。機械文明から逃れるため、またゴーギャンに影響され、当時の多くの若者たちが南洋に憧れましたが、実際に旅立つことができたのは、ほんの一握りの幸運な画家だけでした。しかし彼は本当に幸運だったのでしょうか。第一次世界大戦で南洋に進出した旧日本海軍の捕虜になるなど、数奇な運命をたどった天才画家の画業を、高知県立美術館の収蔵作品を中心に紹介します。
第2回 「画家・岡崎精郎と岸田劉生」 河村 章代
岸田劉生は日本近代美術史の重要な画家のひとりであり、彼が描いたアルブレヒト・デューラー風の緻密な写実絵画は、当時の若い画家たちに大きな影響を与えました。
その劉生に師事し、劉生宅に居候をしながら画業にいそしんだ、高知県出身の若者がいました。彼の名は岡崎精郎(1898-1938)。高知に戻ってからは、農民運動の政治家として活躍したため、その画業は長く忘れられていましたが、近年、再評価が進んでいます。劉生との関係を中心に、画家としての岡崎精郎をご紹介いたします。
第3回 「幕末の絵師・河田小龍の画業」 後藤 雅子
河田小龍(かわだしょうりょう 1824-1898)は、幕末から明治にかけて幅広く活躍した高知出身の絵師です。幼い頃から絵を好み、12歳のとき島本蘭溪(しまもとらんけい)に入門、本格的に画業を歩みはじめました。15歳で岡本寧浦(おかもとねいほ)に儒学を学び、1846(弘化3)年に京坂へ赴き書を篠崎小竹(しのざきしょうちく)、南画を中林竹洞(なかばやしちくどう)に習い、さらに狩野永岳(かのうえいがく)にも師事します。その後も、長崎へ遊学した折、木下逸雲(きのしたいつうん)に清朝画を学ぶなど、様々な絵画様式・技法を会得しました。また、アメリカ漂流民のジョン万次郎(中浜万次郎)の取調べに立会い、『漂巽紀畧』(ひょうそんきりゃく)を著し、坂本龍馬へ航海通商策を教えたといわれています。
絵師として活躍しただけでなく、知識人としても名を馳せた、河田小龍の画業をご紹介します。
第4回 「戦後高知のアヴァンギャルド芸術史」 松本 教仁
本年5月、高知を舞台に様々な前衛(アヴァンギャルド)美術運動を繰り広げた画家・浜口富治氏(1921-2009)が亡くなられました。彼の率いた美術集団〈前衛土佐派〉は、現在に連なる現代アートの流れの源流に位置づけられる非常に重要な存在として、全国の美術関係者の間での評価が高まっています。本講座では前衛土佐派を出発点として、1970年代に盛んに行われた〈現代美術の実験〉展シリーズや、1980年代の立体インスタレーション作品の興隆、そして若手作家が多く活動を展開している現在の高知のアート・シーンまでを俯瞰してみたいと思います。戦後から一貫して現代アート作家を数多く生み出している高知の歴史について、わかりやすく解説いたします。
第5回 「ガラス〜スタジオ・グラス運動から」 長山 美緒
ガラスの歴史は大変古く、古代まで遡るといわれています。古くから私たちの生活に密着した素材であるにもかかわらず、意外と知られていない、遠い素材でもありました。そのような状況が一変したのは、1960年代のはじめにアメリカで起こった「スタジオ・グラス運動」でした。今回は、スタジオ・グラス運動以降に展開された動向や、素材としてのガラスの新たな表現方法や魅力を、制作の現場を交えながらご紹介いたします。
第6回 「写真家・石元泰博さんのこと」 影山 千夏
石元泰博氏は、1921年、サンフランシスコに生まれ、幼少の頃両親とともに高知に戻りました。高校卒業後は単身アメリカにわたりますが、程なく第2次世界大戦が勃発し日系人収容所に送られます。終戦後はシカゴに居を移し、本格的に写真を勉強し、早くからその実力を認められ、高く評価されました。日本に帰ってきてからも、写真家・土門拳をはじめ画家・岡本太郎、華道家・勅使河原蒼風、建築家・丹下健三他、各界の偉人たちと幅広く交流し、写真の幅を広げていき、平成8年度文化功労者に選ばれています。まるでドラマのような石元氏の足跡をみなさまと辿ってみたいと思います。
注意事項等 ※開催回数は6回です。
協力:高知県立美術館
http://www.kochi-bunkazaidan.or.jp/~museum/
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