海洋コアを覗いてみよう(企画番号4-2)
○ 深海底には何がある?
深い海の底にも、海岸で見られるものと同じような砂や泥がたまっています。また、プランクトンなどの小さな化石(微化石)もたまっています。下に示す図1は、陸上と海洋における物質の移動とそれらが堆積する様子を示した概念図です。海洋底には大きく分けて次の3つの成分が堆積しています。
図1.海洋の堆積物の起源を示す概念図
(1)風成塵や火山灰など大気循環によって陸から海へ運ばれて堆積した粒子。
毎年春になると中国大陸から大量の黄砂が偏西風に乗って日本列島周辺にも運ばれてきますし、火山噴火によって放出された火山灰も海底に堆積します。日本海や太平洋の海洋コア研究から、過去の黄砂の堆積量や組成が気候変動とともに変化していたことが分かってきています。また、巨大噴火によって放出された大量の火山灰が日本の周辺海域にも堆積しています。特に、九州の阿蘇カルデラや姶良カルデラ(鹿児島湾北部)、鬼界カルデラ(鬼界カルデラは鹿児島県南方の薩摩竹島と薩摩硫黄島を陸上のカルデラ縁の一部とするカルデラで、そのほとんどが海中に没している。)を作るような巨大噴火によって噴出した火山灰は、日本列島や周辺海域にも広域に堆積していることから「広域テフラ」と呼ばれています。巨大噴火の年代は詳しく調べられていることから、海洋コアから火山灰が見つかると、年代を知る手がかりの一つとなります。陸上や海底から見つかる有名な広域テフラとして、次に挙げる火山灰があります。
・鬼界アカホヤ: 約7,300年前に噴火
・姶良Tn: 約2万8千年前に噴火

写真4-2-1.四国沖(土佐海盆)のコア中に見られる火山灰の顕微鏡写真。透明で薄いガラス片のように見える粒子が、約7,300年前に鬼界カルデラを作った巨大噴火の際に噴出した火山灰(鬼界アカホヤ)である。
(2)河川によって運ばれる陸源砕屑粒子。
川から海に流れ出た泥も深海まで移動してたまります。例えば、河原にある石や砂は川の水によって下流へ運ばれていき、やがては海へ流れ出します。大きくて重い石や砂粒は、すぐに沈んで河口付近の海底に堆積してしまいますが、小さくて軽い泥は海水の流れに乗ってはるか沖合まで移動していき、徐々に海底にたまっていきます。また、大雨が降って洪水になったときには、たくさんの泥が海に流れ込みますし、より大きな粒子が沖合にまで運ばれていきます。
(3) プランクトンなどの死骸(遺骸)の硬組織の化石(微化石)。
海洋で生息している植物プランクトンや動物プランクトンの死骸は海水中を沈降していく間に大部分は分解してしまいますが、炭酸カルシウムや珪酸などの硬い組織は分解されずに海底に堆積していきます。それらが化石として堆積物に保存されます。プランクトン化石は一般的に顕微鏡などを使わないと観察できませんから、貝化石や動物の骨などとは区分して「微化石」と呼ばれます。外洋域では、陸から運ばれる粒子が少ないために、ほとんどが微化石から構成される堆積物が形成されます。
○ 微化石とは?
大きさが数ミリ以下で顕微鏡や虫メガネを使うと見える位の大きさの微少な化石です。海洋底に堆積している微化石としては、植物プランクトンの珪藻や円石藻、動物プランクトンの有孔虫や放散虫が挙げられます。また、陸上の植物の花粉も微化石として海底に堆積しています。下の写真のように、海底には多量の微化石が堆積していますから、それらの微化石の種類(群集と言います)や殻の同位体比や微量元素組成などを分析することによって、それらが生息していた時代の海の様子を知ることが出来ます。つまり、微化石は過去の地球環境や海洋環境を復元するための重要な情報源となるのです。
写真4-2-2.代表的な微化石の有孔虫の顕微鏡写真。写真の横幅が約2mm。赤道太平洋の堆積物をふるいの上で水洗いして細かい泥の粒子を取り除くと、ふるいの上には写真のような浮遊性有孔虫が残ります。
○ 堆積物からみた黒潮の特徴は?
黒潮は赤道域を起源とする暖流であり、海水中に含まれる栄養が乏しい(貧栄養)ため、沿岸の海水に比べて植物プランクトンの生産量が少ないのが特徴です。そのため、黒潮流域の堆積物は有機物量が少なくなっています。また、暖流である黒潮の影響で、九州沖や四国沖の太平洋の海底には、基本的には赤道域と同じような微化石が堆積しています。また、黒潮に特徴的に多く生息している浮遊性有孔虫の種類があり、その代表例として、Pulleniatina obliquiloqulata(写真4-2-2の中で、形が球形に近く表面につやがある個体)という種があります。<関連リンク>


