プロジェクト名
プロジェクトの紹介
目的
必要性
背景
中期目標・中期計画との関連性
実施内容
実施体制
期待される効果

プロジェクト名

環境調和型物質変換プロセスの構築によるニューマテリアルの創成

プロジェクト紹介
 
                       プロジェクトリーダー理学研究科応用理学専攻・教授      小槻日吉三

20 世紀、科学技術産業は世界的にも目覚ましい進展を遂げた。特に、石油化学産業の発達は顕著であり 、
医薬、農薬、食料、電子材料、エネルギー等の分野で数々の技術革新を生み出した。しかし、 20 世紀後半から
21 世紀にかけて、負の遺産としての地球環境汚染や石油資源の枯渇といった 今日的課題を抱えたことも事実である。
従って、将来にわたっても我が国が持続的な繁栄を続けていくためには、環境との調和に配慮した革新的物質創成
・物質変換・物質循環プロセスの確立、それを利用した画期的なファンクショナルマテリアル/バイオマテリアルの創出が
極めて重要な課題になってくるものと考えられる。このような分野展開は、科学技術創造立国を標榜する我が国の
基本施策にも通ずるところがある。
  例えば、平成 16 年度の第二期科学技術基本計画には、 将来における我が国経済社会の持続的発展に必要な
重点施策として、自然共生型の物質材料合成技術開発や循環型社会の構築が示されている。
本プロジェクトは、このような課題に対して物質科学の視点から取り組もうとするものであり、その究極の成果として、
付加価値の高い ファンクショナルマテリアル/バイオマテリアル等の 材料開発に結びつけることを最大目標としている。
幸いにも、本学には、このような先導的学術分野を創造的に推進できる強固な研究母体があり、
地域社会との連携や 民間企業との共同研究・情報交換を活発に行った実績もある。
  ところで、 本プロジェクトを推進することの教育研究上の意義は 、理学研究科・黒潮圏海洋科学研究科・
医学系研究科を中心とする研究者が有機的に連携することにより、物質変換科学、水熱化学、天然物化学、
機能材料科学、生命科学、海洋科学を核とする領域横断的ネットワークを構築することと、それを基盤とした
革新的な環境調和型物質変換プロセスの創出、その応用としての画期的なファンクショナルマテリアル/
バイオマテリアルの創成を行うことにある。 これにより、極めてユニークな “ New Materials Frontier ”となる
知的クラスターが形成され、本学における教育研究活動のより一層の活性化・個性化・高度化、
さらには国際化に寄与することができ、地域社会との学術交流にもより強力な相関関係が構築できるものと期待される。
  高知県の地理的特異性に由来する多様な自然環境に眠る有用マテリアル資源をシーズとして、
本学で培ってきた環境調和型プロセス関連領域の知見を活用し、物質を介した人類と環境との持続的共生へと
結びつけようとする本プロジェクトの展開は、 地場産業育成、新産業・ベンチャー企業創出、新規雇用促進による
地域社会の活性化にとっても極めて有益なものと確信する。

目的

物質変換科学、水熱化学、天然物化学、機能材料科学、生命科学、海洋科学等の
領域横断的研究教育ネットワークを整備し、革新的な環境調和型物質変換プロセスの構築、
その応用としての画期的なファンクショナルマテリアル/バイオマテリアルの創出を目指す。

必要性

自然との共生に配慮した環境調和型物質創成、革新的物質循環プロセスの開発、それを基盤とする
画期的な有用ファンクショナルマテリアル/バイオマテリアルの創出は、次世代型科学技術産業の
育成にとって重要かつ喫緊の課題となっている。一方、高知県の経済が一次産業に大きく依存している
現況にあって、ファンクショナルマテリアル/バイオマテリアルを主軸とする第二次産業分野での
知的クラスターの構築は、地域の活性化のためにも切望されている。 また教育面においては、
領域横断的学術分野を開拓して先導的で広い視野をもつ創造性豊かな人材育成が急務となっている。

背景

本プロジェクト遂行のための本学における学術基盤として、特に超高圧反応や水熱反応といった
環境調和型技術開発において顕著な業績がある。例えば、超高圧反応に関しては、世界的な業績が数多くある。
その他、これに関連する分野での学術論文は140編あまりを数え、30件を越える特許申請も行っている。
また、科学研究費等の競争的資金の獲得にも際立つ成果を残している。
一方、水熱反応に関しては、理学部附属水熱化学実験所を中心として180編を越える学術論文があり、
極めて独創性の高い情報発信を行っている。中でも、放射性廃棄物の固定化、ガラス瓶のリサイクル技術等は
特筆すべき成果である。これらの実績を基盤として、2000年7月に高知市で水熱反応に関する国際会議を
盛大に開催した経緯があり、文部科学省の「大学等発ベンチャー創出支援事業」にも採択されている。
さらに、分子レベルからのアプローチに基づくガン免疫療法・バクテリオファージ療法等の開発においても、
極めて独創性が高く先見性に優れた手法の開発に成功しており、環境負荷低減型療法として金字塔となっている。
これらの成果は、Cell, PNASやNatureを含む海外の極めて著名な学術誌に発表しており、
非常に高い被引用件数を誇っている他、海外の著名な学会での招待講演を数多くつとめている。
ファンクショナルマテリアル/バイオマテリアルの開発分野での業績も数多く、有機機能性材料、バイオセンサー、
生理活性天然物等の創製分野で特筆すべき成果をあげており、この領域から出願された特許件数は
最近5年間でも50 件ほどに達する

中期目標・中期計画との関連性

中期目標における「研究水準及び研究の成果等に関する目標」において、
「地域社会を振興し貢献する研究を目指すと同時に、地域の特色や研究者の個性を活かした独創的な研究を推進し、
種々の研究分野の融合を図りつつ、世界水準の成果を生み出す研究拠点の形成を目指す。」
とされており、この目標を達成するための中期計画において、
「“環境、物質、生命”に関わる研究者が協力し、“バイオマテリアル、ファンクショナルマテリア
ル”の創成を目指した研究プロジェクトを構築し、研究体制を強化する。」とされている。

取組内容

高知大学独自のアプローチとして、自然との共生に配慮した環境調和型物質創成、革新的物質循環プロセスの開発、
それを基盤とする画期的な有用ファンクショナルマテリアル/バイオマテリアルの創出が到達目標である。
これらの成果を立脚点として、高度循環型社会の構築、次世代型新産業育成、高知県の第二次産業の活性化、
産官学連携・共同研究推進、独創的高度専門職業人の育成等における応分の使命を果たす。

【平成17 年度の取組内容】
1.水熱化学法を用いる物質循環/資源再生プロセスに関して、基礎から応用までの成果集積を行い、
   新規方法論の開発を行う。
2.高圧反応・不斉反応等の環境調和型物質変換手法を利用して、生理活性物質や機能性材料等の
   合成に関して、実用化を視野に入れたプロセス改善を図る。
3.有用なバイオマテリアル創出の一環として、ガン免疫療法に有効なHLA 結合性ペプチドの探索を
   行うとともに、分子レベルからの作用機序解明を行う。
4.有用なバイオマテリアル創出の一環として、多剤耐性細菌感染症に対するファージ療法の
   より一層の改善、ウィルス特異的阻害分子の探索を行う。


実施体制

理学研究科・黒潮圏海洋科学研究科・医学系研究科に所属する研究者を有機的に連携し、
物質変換科学、水熱化学、天然物化学、生命科学等の領域横断的ネットワークを中軸として、
学内外の研究機関との連携による教育研究体制の強化を図る。


期待される効果

環境調和型物質変換プロセスに関する新規概念の構築・新規方法論の確立を行い、その応用としての
ニューマテリアル創成を実現することにより、高知大学発となる「環境調和型マテリアルサイエンス」に
関する学術基盤を確立する。
本事業の推進により、21 世紀的課題となっている地球環境汚染や石油資源の枯渇といった
今日的課題解決に対する技術革新に向けた有益な指針を提供する。このような分野展開は、
科学技術創造立国を標榜する我が国の基本施策にも通ずるものである。
併せて、本事業で創出される“バイオマテリアル、ファンクショナルマテリアル”の活用により、
高知県・広くは四国地域における第二次産業分野での新産業育成・新技術導入に対する評価獲得を目指す。